西岡はなぜ「自分が強い」と言ったのか

西岡デビスカップ8連勝


日本がイギリスから歴史的初勝利をあげた。1勝2敗で迎えた2日目シングルスの第4試合、シングルス1番手を担った西岡が、相手1番手ジェイコブ・ファーンリーを6-3、7-6(0)で下した。最後を決めた錦織も素晴らしかったが、この勝利こそが一番大きかったと言っていいだろう。前日に錦織を下し波に乗る世界77位を、見事に止めた。西岡は今大会シングルス2勝。これで2019年のデビスカップにジョコビッチに敗れて以来、デビスカップではシングルス7連勝、ダブルスを含めれば実に8連勝だ。
試合前練習で
試合前の公開練習で西岡がチェックしていたことをぼんやり観ていた。
まず1つ目、フォアのストローク打ち分け。基本中の基本なのだろうが、ダウンザライン、クロスだけでなく、アドサイドのサービスライン角に落ちるショートクロスを入念に確かめていた。
アウトサイド気味に曲がるストレート、相手を差し込まそうとする速いクロス、回転量を上げ外側に逃がすクロス。ここまでは通常だろう。
そんな中、最も重視しているように見えたのが、通常なら押し込まれそうな相手の速い球を、アングルに引っ掛けるようにしてしのぐ練習だ。相手が若干前に出て、アレー外付近で打たざるを得ない位置へと配球していた。
2つ目、球足の速いボレーを打ってもらい、両手バックでトップスピンロブを上げる。もっとも繊細なタッチが要求されるショットを、わざわざ何度も打っていた。
これが試合の勝敗を決する、戦術そのままに直結するとは、その時は想像していなかった。
第1セット、1st確率75%のファーンリー
第1セットのファーンリーは、錦織戦同様、とてつもなく調子が良かった。ファーストサービスイン確率75%。大事なポイントでことごとくファーストをコーナーに打ち分けた。「どこまで入るんだ」と、悲鳴を上げたくなるような展開だった。
それでも、西岡は当たり前のように、淡々と前を向き、次のポイントに気持ちを切り替えた。そして、西岡が丁寧なリターンで返球に成功しても、ファーンリーは、強烈なフォアハンドで攻め込んできた。だが、ここからが、西岡の真骨頂だった。
フォアのアングルで活路
右利き相手のクロスは、当然西岡のバックになる。この最も苦しむはずの展開で、西岡は決して引かない姿勢を見せた。
小さいテイクバックの両手バックからカウンター気味にフラットの返球。極力、リスクを犯さぬよう、速いテンポでセンター付近に返した。ファーンリーはここぞとばかりに攻め込んでくるが、テンポが速い分と角度がとれない分、1本では決定機を奪えない。西岡は2球、3球としのぎ、いつぞや、フォアで打てる状態に持ち込んだ。
そして、ここから、またも、さほどリスクを犯さず、逆転に転じた。フォアから回転量の多いアングルを付けたショットを多用。今度は左右利き手が逆である以上、当然ファーンリーのバックになる。この形から大事なポイントを、ことごとく奪い取っていった。
ファーンリーの両手バックは、薄いグリップからネットギリギリを通り、ベースラインに突き刺さるようなショットが主流。錦織戦でも、ネットの低い部分を通るセンター気味の配球ながら、威力で相手を押し込む形が冴え渡っていた。
だが、強力な分、精度は一級品と言えるほど高くない。ネットの高い所を通さざるを得ない、アングルの位置から、無理にクロスに打てば、時にベースライン、サイドラインを割るリスクが高まる。それを嫌がって、早めのストレート展開で、ネットを奪ってくる形をとれば、西岡は難しいバックのトップスピンロブで対抗した。
第2セット序盤でさらなる攻防
この一進一退の攻防が、さらに凄みを増したのが第2セット序盤だった。
西岡0-1で迎えた第2ゲームのサービスゲーム。第1ポイント、ファーンリーは、先のアングルのバックを打たされる展開で、初めてスライスのドロップショットを見せ、エースを奪った。0ー15。
西岡は嫌がる素振りを見せず、同じ「攻撃」を貫いた。
2ポイント目。同じ展開からファーンリーのクロスへのバックがサイドラインを割った。15ー15。
3ポイント目。長いラリーから、また西岡はファーンリーのバックを打たすアングル。ファーンリーは再びスライスを選択。今度は、浅く落とそうとしたショットをネットにかけた。30ー15。
4ポイント目、また同じ展開になり、ファーンリーは両手バックでストレートへ。バックアウト。西岡が大きくガッツポーズした。40ー15。
バックを3本連続でミスさせた。最後はファーンリーの強引に打ちに行ったフォアの強打が、バックアウト。西岡はサービスキープに成功した。
ゲームカウント1ー1で迎えた第3ゲーム。ここで西岡が2本のバックのトップスピンロブでエースを奪い30ー40。西岡がブレークポイントを迎えた。この次のポイントが圧巻だった。
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同じ体勢からエンドラインコーナーへスピン
ファーンリーのファーストサービスがセンターに入り、西岡がバックで返球。この試合貫いてきた、速いテンポのフラットでセンター付近へ。ファーンリーはフォアで連続攻撃を仕掛けるが、西岡はフォアで2度センター付近にニュートラルに戻すショットを打ち粘る。
そして同じセンターからの3球目。どうみてもショートクロスに打つだろう、後ろ体重気味のフォーム。だが、これがアングルではなかった。
エンドラインのコーナーギリギリいっぱいに落ちる、決して速くはないショット。アングルと読んだファーンリーは後ろに下がるのが遅れ、両手バックをネットにかけた。西岡がブレークに成功! 大きく吠えた。
次の自らのサービスゲームでは、ブレークに成功したのと同じセンター付近の深い位置から、今度はフォアのダウンザラインでエースを奪った。散々バックの前後を意識させられたファーンリーは、まったく反応できなかった。このゲームを西岡が取り3-1リード。最終的にはタイブレークになったが、ここで勝負は見えた。
多彩なショットバリエーション
この後は、ファーンリーが強引にフォアを打ちミスする展開が増えた。第2セット、ファーストサービスインの確率は50%にまで落ちた。決して最後まで調子が悪かったわけではない。それでもタイブレークは7ー0で西岡。恵まれた体格ではない西岡が、ツアーで勝ち抜いてきた「テニス脳」がまさったのだ。
相手に打ち負けない両手バックのカウンター返球に、凄まじい精度が要求されるバックのトップスピンロブ、フォアのアングル。どれが欠けていても、好調ファーンリーを、こうした展開に、はめることはできなかっただろう。そして中盤、さらに増やした「引き出し」の多さ。同じ場所からフォアのムーンボール、フォアのダウンザライン。
逆に破壊力のあるファーンリーは、フラット系の両手バックが唯一、西岡ほどのボールを自在に操る術(すべ)を持っていなかった。
あらゆる回転、あらゆる角度を使い、フォア、バック、すべてで、多彩なショットバリエーションを持つ西岡。これこそが、試合後のインタビューで第一声に発した言葉につながってくるのだろう。
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「自分の方がツアー選手としては強いだろうとずっと思っていて」。一つ一つのショットの威力だけを見れば、叶わないかもしれない。だが、チェスのようにショットをつなげるゲームメイクでは、西岡の方が一枚上だった。
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