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伊藤あおいの試合予定と結果は

錦織の神がかった1ゲーム

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デビスカップファイナル予選1回戦2日目が2月1日、ブルボンビーンズドームで行われ、錦織が5試合目で勝利した。日本対イギリス2勝2敗で迎えた最後の1戦。世界ランク129位のビリー・ハリスを6-2、6-3のストレートで下した。これにより、日本の対イギリス戦初勝利が決定するとともに、ファイナル予選2回戦進出が確定。また錦織は史上26人目、アジア勢では初となるハードコートの通算勝利数を「300」とした。

前日1日目のJ・ファーンリー戦で完敗して、迎えたハリス戦。この日も滅多に見られないフレームショットでボールをスタンドに打ち込んでしまうなど、本調子ではないように見えた。

それでも直前の試合で勝利し、錦織に最終バトンを渡した西岡が「神が降臨するので」と話した通り、凄まじい集中力でカバーした。日の丸を背負って、ファイナル8進出に掛ける思いが、「神コリ圭」を生んだのかもしれない。

1セットを6ー2で奪い、迎えた第2セット第5ゲームだった。ゲームカウント3-1の自らのサービスゲーム。ブレークバックされれば、まだまだわからない試合展開で、0ー40の大ピンチを迎えた。ここからの挽回が驚異的だった。(以下動画の1分50秒あたりから2分58秒

▶ITF公式さまの動画です

相手に3本のブレークポイントがあるところ、しかも厳しいセカンドサーブ。バックにスピンサーブを入れて、慎重に5本連続相手にバックハンドを打たせる安全、かつ確実に自らの展開に持ち込んだ後、ライジング気味のバックでダンザラインへ。

ボールが落ちた先は、サイドライン、ベースラインとも2メートルずつ内側といった、リスクの低い場所だったが、一気に錦織に有利な状況をつくる。バックに釘付けにされた分、フォア側の反応が遅れたハリスは、なんとか半身の態勢で返球し、必死にセンターに戻ろうとする。

それを見透かした錦織は、自らのセンター付近に返球されたボールを、わざわざバックでとる。逆クロス気味のストレート。今度はサイドラインいっぱい。完璧なウィナー。

通常なら、なるべくショートポイントでピンチを逃れたくなる精神状態になるであろう場面。①相手の足を止める②タイミングで相手の時間を奪う③より厳しいテンポ、配球で精度の高いウィナー。

3段階を踏んで、より確実に大事な1ポイントを奪った。

15ー40。次も厳しいセカンドサーブ。ハリスはバックのリターンからストレート。サイドラインギリギリを攻め込む。これを錦織はきっちり精度の高いバックでクロス展開。3本連続してバックで取らせた後、4本目は再びバックへスライスで配球。

ハリスはバックのスライスでストレートへ流し応戦しようとする。決して悪いボールではなかったが、狙いすました錦織は、すかさずポジションを前にとり、フォアのダウンザライン1本でウイナー。ハリスにとっては狭い方のサイドだったが、逆をつき、サイドラインいっぱいに落ちるすさまじい精度。①自分の攻撃しやすい形に誘い込む②相手配球を読み切って素早くポジションアップ②タイミングと精度でウィナー

これまた、さきほどとは違うパターンの3段階を踏んで、大事な2ポイント目を手にした。

30ー40。フォア側へファーストサーブイン。2本バックを打たせた後、スライスで3本目もバックへ。ハリスは今度は先ほどの策にはハマらず、きっちり両手バックでクロスへ。錦織のニュートラルゾーンへのクロスを、ハリスは勝負をかけたバックでのダウンザライン。一気にハリス有利の展開。

錦織はオープンコートへのフォアのクロスカウンターをあえて狙わず、フォアのスライスでストレートへ。ハリスに5球連続バックを打たせる。

ハリスは当然、大きく空いた錦織のバック側へ、クロスを放ち、ウィナーを狙う。錦織はまたもスライスで浅めのクロスへ。ハリスにとっては6連続のバック。より角度をつけたクロスショットで、今度こそは、と仕留めにかかる。

アレーを完全に飛び越す位置で打たされた錦織。万事休すと思いきや、オープン気味に飛びついて放った両手バックはポールを巻くように、コーナーいっぱいに落ちる、錦織ならではのスーパーカウンター。驚くべき3連続ウィナー!!!

このゲームのポイントスコア、この3本目のブレークポイントの展開とも、すべて錦織が追い込まれていた。何度も自ら一発逆転を狙って、結果ポイントを失うような、シチュエーションになっていた。それでも、一番確実に自分にポイントが入りやすい状況になる、最後の最後まで錦織は我慢した。そして狙っていた。

相手の一刻も早く最後の1ポイントを取りたい気持ちを逆手に取った。バックの打ち合いなら1本でウィーナーを奪われるリスクは少ないと、錦織は考えていたはずだ。

ラストショットだけを見れば、両手バックのテクニックだけの素晴らしさと勘違いされるだろう。しかし、そこに至らせるまでの戦略、配球術、メンタル管理こそが、錦織の真骨頂だった。

この3ポイント間のショットラリー数、13、11、15本。うちハリスがバックを打たされた回数5、5、6。フォアはわずか1、0、1本。長いラリーに持ち込み、相手に決定力が高くないバックを打たせる。作戦は明確だった。

この驚異的な挽回から怒涛の5連続ポイント。デュースの末、サービスキープに成功した錦織は、一直線へ勝利へと突き進んでいった。

実は完勝に見えた試合だが、第2セット自らのサービスゲームは第1ゲームを除く、4度のゲームすべてで、一旦はハリス先行の状況となっていた。それを、ことごとく連続ポイントなどで巻き返していった。

日本のイギリス戦初勝利、錦織のハードコート300勝、いずれも歴史的だったが、この第2セット第5ゲームで見せた3ポイントは、日本のテニス界にとって、歴史に残るシーンだった。

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テニスうどん
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駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
U-NEXT、WTAのテニス配信も利用させていただいています。
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