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錦織サービスゲームに「時短」を見たの巻

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 5セッター錦織が本領を発揮して6年ぶりに全豪オープン初戦を突破した。心配した通り、Tモンテイロの爆発力のすごさは序盤2セットに現れた。それでも、錦織は4時間6分をかけ、2度の相手マッチポイントをしのいで完全攻略した。

 これでフルセットとなればキャリア29勝8敗。全豪では8勝1敗と驚異の数字。時間を経るごとに相手サーブのコース、球種、クセを見抜き、リターン精度を上げていった。錦織から見たレシーブポイントウォン。24%→②23%→③30%→④42%→⑤42%。機会を重ねるごとに上昇。世界屈指のリターナーらしい戦いぶりだった。この本領ぶりを、より助けたのは自らのサービスゲームの「時短」ではなかったか。

 通常よりもサービスゲームを楽に戦えた分、よりリターンに集中できた。2回戦に臨むうえで、スコア以上の消耗も避けられたと感じた。気になったので錦織のサービスゲームとモンテイロのサービスゲームで要した時間を、計測し直してみた。通常テニスにない指標だろうが、サービスモーションに入ってからからゲームが決まるまでの時間を手動で測ってみた。

▶錦織モンテイロ戦 自らのサービスゲームで要したポイント数とその時間

錦織モンテイロ
サービスG
ポイント数
要した時間1Gあたり
平均時間
サービスG
ポイント数
要した時間1Gあたり
平均時間
26(5G)12分04秒2分24秒第1S29(5G)16分47秒3分21秒
31(6G)13分44秒2分17秒第2S33(6G)20分42秒3分27秒
35(6G)14分28秒2分24秒第3S44(6G)27分12秒4分32秒
21(4G)7分55秒1分58秒第4S31(4G)20分17秒5分04秒
22(4G)9分46秒2分26秒第5S26(5G))18分45秒3分45秒
14057分57秒2分18秒通算1691時間43分38秒3分58秒

※第2Sタイブレークはポイントも時間も除いて計算

 1ゲームあたり平均2分18秒の錦織に対して、モンテイロは3分58秒。トータルでは錦織55分に対して、モンテイロ1時間43分45分以上、錦織のサービスゲームの時間の方が短かった。それにしても大きな差だ。

 ビッグサーバーのモンテイロのサービスエース21本に対して、実は錦織も17本を奪っていた。ラブゲームキープは、モンテイロと同じ7度もあった。サーブの威力では到底叶わないが、巧みな配球に加え、時折見せるサーブアンドボレーなどでフリーポイント、ショートポイントを重ね、終始、自らのサービスゲームを優位に進めた。モンテイロの淡白さもあったろうが、5セット通じて、自分がブレークポイントを与えたのはわずか7度だけだった。

▶両者の1stサービスインの確率と同ポイント獲得率のセット推移

モンテイロ錦織
1stイン
確率
1st
ポイント
獲得率
1stイン
確率
1st
ポイント
獲得率
76%82%第1S69%78%
56%82%第2S72%77%
68%77%第3S71%84%
48%73%第4S76%94%
73%53%第5S73%75%
64%74%通算72%81%

 第1セット、モンテイロの1stインの確率は76%。うち82%でポイントを奪われた。第2セットもイン確率こそ56%下がったが、ポイント獲得率は82%を堅持された。錦織にとっては「諦めかけた」ほど、手の施しようがないほどの、相手の好調ぶりだった。

 だが第3セットの第1ゲーム。モンテイロのサービスゲームで20ポイント分、約15分間のロングゲームを戦い、プレッシャーを与えた。錦織はその直後の第2ゲームをわずか1分14秒で時短キープ。なかなかブレークできない厳しい状況にも、均衡を保ち続けた。

 その後、モンテイロのサービスゲームは4ゲーム連続ラブゲームキープというさらに厳しい展開。それでも錦織サーブの第10ゲームは2度のマッチポイントを握られながら危機を乗り越えた。そして迎えた第11ゲーム、この日12度目のブレークポイントでついに初ブレークに成功。

 第4セットもモンテイロのサービスゲームで10分44秒プレーさせ、直後の自分のサービスゲームは1分45秒であっさりキープ。自らのサーブは短く。逆にリターンでは粘り強く。じわりじわりとかけ続けた重圧が、モンテイロには、ボディーブローのように効いていったことだろう。

 第4セット、モンテイロの1stイン確率は48%まで落ち、獲得率も下がって73%に。最終セットはイン確率73%と再び上げてきたが、獲得率は53%にまで下がった。モンテイロが19度入れたファーストのうち、錦織は10ポイントしか与えなかった。ファーストを入れれば8割方ポイントを奪えていたものが、半分にまで落ちれば、モンテイロのサービスキープは格段に苦しくなる。

 第3セットまで、12分の1だったブレークポイントウォン。結局、第4、5セットでは計7度ブレークポイントをつかみ4度奪った。一方、リターンでより集中を可能にした自らのサーブ。5セットを通じて1stイン確率ほぼ70%前後、ポイント獲得率も平均81%と終始安定。序盤のモンテイロの圧倒的な破壊力ばかりに目が行ったが、実は最終的には錦織の方が、サービスのスタッツは上だった。

 

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テニスうどん
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駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
U-NEXT、WTAのテニス配信も利用させていただいています。
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