錦織クレーシーズン快勝発進

完璧な４ブレーク

第８シードで世界ランク66位の錦織圭が４月１日、フェイズ・サロフィム＆Co.米男子クレーコート選手権（ATP250、ヒューストン）１回戦に臨み、144位のM・クルーガーに6-4,6-2で勝利した。

第1セットは第1ゲームからブレークに成功し終始リード。第8ゲームでこの日唯一のブレークを許し4-4とされたが、続く第９ゲームでブレークバックする理想的なゲーム運びで、セットを奪う。

続く第２セットも第３、７ゲームでブレーク。終始リードを保ち、このセット34分。トータル1時間14分、圧巻の４ブレークでであっさり初戦の勝利をもぎ取った。

４球目攻撃

通常テニスでは、サービスゲームで、サーブを打った後の３球目で主導権を奪う「３球目攻撃」が主流になる。

しかし、クレーコートシーズン初戦から、錦織は、持ち前のリターン力を存分に発揮した。

完全にコントロールされた高精度なリターンで、五分以上の展開をつくり、返ってきた４球目で見事に攻撃していた。

ブレークに成功した４ゲームで錦織が奪取した16ポイントのうち、相手ダブルフォルトを除く全15ポイントを列挙してみる。

バック狙いうち

最終結果は錦織のリターンエース１本を含む８ウイナー。15ポイントのうち実に53％がウイナー決着だった。

大半を５～６本以内のショット数で終わらせた。クルーガーが５球目に追い込まれてミスしたフォースドエラーを加えると11本になる。73％が錦織の手中にあった計算だ。

リターンは足元か相手の弱点と言えるバックに、ほぼ完全にコントロールされていた。

さらに追い打ちをかける４球目。ウイナーを取りに行った２本のフォアのダウンザライン以外、すべて相手のバックに配球。そのほとんどが２球目のリターンより、はるかに厳しいライン際だった。

高いファーストサービスイン率

逆に、自らのサービスゲームは、ブレークされたゲーム以外、危なげなかった。ファーストサービスイン率は77％と高く、ファーストサーブイン時のポイント獲得率も77％と文句のない数字だった。

第２セット第６ゲームで0-40とされるピンチがあったが、すべてファーストサーブを、サービスボックスのコーナーいっぱいに入れた。クルーガーとは逆で、３球目でしっかり主導権を握り、３本のブレークポイントを逃れることに成功した。

セカンドサーブ時のポイント獲得率は38％と低かったことは気がかりだが、クレーコートらしい戦い方で、まずはクレーシーズン初戦を飾った。

▶「Tennis TV」動画より　Tweener気味な背面バックショットは必見

楽しみなクレーシーズン

エアーKも、股抜き気味の背面バックショットも出た。カメラに向けたファンサービスでは「にしこり」とひらがなで記す、お茶目なところも見せた。すべては順調な証拠だろう。

2回戦の相手は、1回戦で世界82位のR・ヒジカタ（オーストラリア）を倒した世界117位のC・ユーバンクスに決まった。言わずと知れた2023年ウィンブルドン８強入りした身長201センチのビッグサーバーだ。

一方で錦織は2011年の同大会のファイナリスト。その際はライアン・スウィーティングに決勝で4-6,6-7(3)で敗れている。

錦織のキャリア成績を見てもハードコートの勝率.666（301勝151敗、優勝10回）を上回る、勝率.680（104勝49敗、優勝２回）の数字を残すクレーコートでの戦い。

ビッグサーバー相手でも持ち前のリターン力を見せられるか、15年越しのリベンジを果たす舞台になるのか、次戦も目が離せない。

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スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西１部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り！時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、ＷTAの公式データを参考にさせていただいています。
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