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伊藤あおいの試合予定と結果は

綿貫16強デュースサイドで12本エース

綿貫3回戦スコア
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綿貫陽介選手が現地8日、BNPパリバ・オープン(ATP1000、インディアンウェルズ)の3回戦で、第16シードで世界17位のT・ティアフォー(米国)を下した。6-4,7-6(6)で競り勝った。ATPマスターズ1000大会で初の16強入りを決めた。

膝故障明けの綿貫の世界ランキングは349位。ATP公式ホームページによれば、2004年、当時882位だったトミー・ハースが4回戦に進んで以来、この大会で、最もランクの低い選手によるアップセットになった。

試合序盤、ティアフォーがサービズゲームで主審にタイムバイオレーションを取られそうになると、自ら「僕の方が準備ができてなかった」と告げるスポーツマンシップを見せた。

スマッシュミスに肩をすぼめたり、ダブルフォルトの後、ボールを足でリフティングして拍手を誘ったり、ペプシコーラを飲み干したりと、アメリカのファンも存分に喜ばせ、自分の世界に引き込んでいった。

試合を盛り上げ、奪ったウイナー数は実に47本。ティアフォーの16本の約3倍を稼ぎ出した。アンフォースドエラーの数は31本と24本のティアフォーより多かったが、最後まで攻めの姿勢を崩さなかった。

何より素晴らしかったのが、ファーストサービス。ティアフォーの4本に対して、実に16本のエースを奪った。

ファーストイン時のポイント獲得率は76%(28/37)。セカンド時も65%(22/34)と得意のサービスから完全に主導権を握った。

第2セットは第5ゲームで先にブレークを許す苦しい展開だったが、第10ゲームでブレークに成功。第11ゲームでブレークバックに成功するが、第12ゲームで再ブレーク。タイブレークに持ち込んだ。この勝負どころでも2本のサービスエースが効いた。

綿貫のサービスエース16本をすべて見直した。デュースサイドは実に12本のエース。アドバンテージサイドが第1セット1本、第2セット2本だったのに対して、75%にあたるサービスエースをデュースサイドで奪っていた。

第1セット第1ゲーム、自らのサービスゲームは3連続エースでスタート。そのすべてがワイドで、ティアフォーは否が応でも、外への意識を植え付けられたはずだ。

特に序盤のデュースサイドは4連続ワイドからスタート。時折、ボディーを交ぜる以外は、完全にワイド中心の配球を貫いた。中盤以降、徐々に、Tゾーンも使い、最終的にデュースサイドへの配球割合はワイド45%、Tゾーン45%となった。うまくちらして、デュースサイドではワイド3本、Tゾーン3本のエースを奪った。

丸数字はサービスエース、数字はエースの順番

第2セットでは一転、デュースサイドはTゾーンへの配球に切り替えた。フォアのワイドサーブへの対応に苦慮していたティアフォーは、かなり面食らったはずだ。配球割合は83%にまで上昇した。

それでも綿貫は第1セット同様、エースを量産する。デュースサイドでは、すべてTゾーンで4本、アドバンテージサイドではワイド2本、Tゾーン1本の3本。7本のサービスエースでタイブレークへ突入した。

ここからの駆け引きが圧巻だった。

タイブレーク2ー2で迎えた綿貫のデュースサイドでのサービス。セットが決まるタイブレーク序盤の勝負どころで、ティアフォーは完全にセンター、Tゾーンを読んでいたはずだ。あれだけ第2セットで配球割合を切り替えられたのだから。

だが綿貫は、ここでスライス回転をかけ、少しスピードを落としたワイドサーブ。ティアフォーは1本も動けなかった。これが8本目のエース。

さらにタイブレーク4ー3リードで迎えた自らのサーブ。綿貫は果敢にサーブアンドボレーを仕掛けるが、ネット際、ティアフォーのスーパーボレーでミニブレークを許し4ー4。

続くデュースサイド、ファーストから先ほどと同じスピードを落としたワイドのスライスサーブを放つ。しかし3球目のフォアハンドをミス。この2連続失点で4-5。ティアフォーの2本のサーブでなんとか1本返すが、5ー6で相手に先にセットポイントを握られた。

アドバンテージサイドでの自らのサーブをなんとかしのぎ6-6、コートチェンジ。ここで、またデュースサイドのサーブが回ってきた。

綿貫にとって、一番効果があるとわかっているのはワイドサーブ。第1セットの序盤同様、ここに頼り、3度続けるのか?

だが綿貫は逆を選択した。Tゾーンへのフラット! エース! 続くティアフォーのセカンドサーブをバックのジャックナイフで攻めきり勝負あった。

格下が、格上に挑む戦い。通常なら序盤で効果があると分かっていたデュースサイドのワイドに頼り切ってしまうところだろう。だが綿貫は、そうならなかった。

大事なタイブレークにまで、大事な大事な、その武器を置いておく「心の余裕」があった。そして最後は、その逆をいった。

綿貫の新コーチ、ウェイン・フェレイラ(南アフリカ)は、2年前のティアフォーのコーチ。緻密な戦略と、絶対に「勝ち切ってやる」という強い意志が、相手の裏の裏をかくまでの「我慢」をもたらしたのだろう。

▶「UーNEXT」公式動画より 綿貫の3回戦突破ダイジェスト

▶「Tennis TV」動画より フリークスポールのズベレフ撃破

次戦は世界43位のT・フリークスポール(オランダ)と対戦する。今大会2回戦で第1シードA・ズベレフ(ドイツ)を6度目のマッチポイントで倒し、波乱を呼んだ男が相手だ。強烈なフォアとサーブを持つ、綿貫といわば同タイプの28歳だ。

勝てばATP1000の8強。本当の「台風の目」になるのはどっちか? アメリカのファンもこの日、きっちり「WATANUKI」の名前を認知したはずだ。勝てば準々決勝はルーネ対チチパスの勝者と当たる。もう一波乱、二波乱、起こしてほしい。

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テニスうどん
テニスうどん
駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
U-NEXT、WTAのテニス配信も利用させていただいています。
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