坂本怜 第1シード撃破4強


7カ月ぶり4強
世界ランク291位の坂本怜(19歳)が第1シードを破った。7月4日、チャンレジャー75大会ケーリーテニスクラッシック準々決勝で、世界104位のトリスタン・スクールケイト(24歳=オーストラリア)と対戦。1時間58分、7-6(2),6-4で見事ストレート勝利した。
坂本はこれで7カ月ぶりのベスト4に進出。
チャレンジャーでの4強は、昨年11月に四日市で初優勝、続く12月のバンコクオープン(タイ・ノンタブリー)で準決勝進出を果たして以来となった。
3月、ATP1000マイアミの予選2回戦で、世界95位だったジェームズ・ダックワース(33歳=オーストラリア)を破ったのに次ぐ、上位ランカー撃破ともなった。
会心の勝利に、試合後には、久々に侍ポーズも飛び出した。
坂本の魅力が凝縮
「和製ニック・キリオス」と呼ばれるにふさわしい
坂本の魅力が凝縮された試合だった。
従来のファーストサーブの良さだけではない。
セカンドサーブがスピン量、深さ、クォリティーとも素晴らしかった。
相手は、ファーストよりセカンドの方が、嫌がっているのではないかと感じるほどだった。
両者のサービススタッツを見ていただきたい。男子プロの場合、通常ファーストサーブのポイントウォンが70%、サーブ力の高い選手で75%前後、セカンドサーブのポイントウォンが50%程度になる。
テニス通の方なら坂本のセカンドサーブポイントウォン63%が、いかに特殊な数字かお分かりいただけるだろう。
マッチ通算 両者のサービススタッツ | ||
坂本 | スクールケイト | |
7 | エース | 10 |
2 | ダブルフォルト | 5 |
59%(50/85) | 1stイン確率 | 56%(37/66) |
68%(34/50) | 1stサーブPW | 78%(29/37) |
63%(22/35) | 2ndサーブPW | 45%(13/29) |
PW=ポイントウォン |
ロングゲーム耐え
セットごとに分けると、坂本の残した数字が、異色だったことが、さらによく分かる。
第1セット、坂本のファーストサービス確率は70%。
かなり好調に見えた。だが、それ以上にスクールケイトの落ち着いた深いリターンは素晴らしかった。坂本はなかなかエースが取れず、ポイント獲得率が上がらない。2回戦では89%だったファーストサーブポイントウォンは63%にとどまった。
勝敗を分けるカギとなったのは第1セット第10ゲーム。先に許していたブレークを返して迎えた4-5、自らのサービスゲームだった。
10度のデュース26ポイントを争う15分40秒に及ぶロングゲーム。
4度のセットポイントを奪われながら、坂本は集中力マックスで耐えに耐えた。
このゲームでのファーストインは26ポイント中21本。確率81%。
この長い時間帯としては、異例の高確率だった。
素晴らしいサーブを素晴らしいリターンで返されても、丁寧にストローク戦に挑み、ポイントを重ねた。それはセカンドサーブになっても同じだった。
大きい大きい、このゲームのキープが、タイブレークをモノにすることにつながった。
第1S 両者のサービススタッツ | ||
坂本 | スクールケイト | |
4 | エース | 7 |
0 | ダブルフォルト | 3 |
70%(43/61) | 1stイン確率 | 49%(17/35) |
63%(27/43) | 1stサーブPW | 88%(15/17) |
61%(11/18) | 2ndサーブPW | 50%(9/18) |
ファースト確率29%
第2セットに入ると、セットを奪った優位性もあってか、坂本はファーストサーブのギアをさらに上げた。
相手のリターンが良すぎることを見越して、確率重視を完全に捨てた。
エースもしくは相手を完全に崩すだけの、威力プラス、厳しいコースしか狙わない。
ショートポイントだけを積極果敢に奪いに行った。
第2セット序盤、坂本のサービスゲーム3ゲームは16本打ってファーストインはわずか1本。
確率6%。
12本連続ファーストフォルトという「離れ業」も演じた。
だがイライラは一切ない。すべては計算づくだったのだろう。
結局このセット、1ブレークこそ許したが、ファーストイン確率29%で4ゲームをキープ。
第5ゲームはオールセカンドでラブゲームキープ。ここでの締めくくりは、相手を嘲笑うかのように、ダブルファーストでノータッチエースだった。
第7ゲームもラブゲーム、第9ゲームも1本落としただけと、完全にリズムをつかんだ。
狙い通りファーストが入ればポイント獲得率は100%。
セカンドサーブポイントウォンは第1セットよりさらに上げ65%。
全く危なげなかった。
第2S 両者のサービススタッツ | ||
坂本 | スクールケイト | |
3 | エース | 3 |
2 | ダブルフォルト | 2 |
29%(7/24) | 1stイン確率 | 65%(20/31) |
100%(7/7) | 1stサーブPW | 70%(14/20) |
65%(11/17) | 2ndサーブPW | 36%(4/11) |
ファーストイン確率は60%以上を最低ラインに置くべきという「テニス界の常識」を、完全に覆すパフォーマンスだった。
リターンゲームでプレッシャーをかけられ続けたスクールケイトが、最後の第10ゲームを坂本にブレークされるのも、必然の流れだった。
リベンジマッチに勝利
相手のスクールケイトとは今年4月21日の光州チャレンジャー1回戦でぶつかり、6-7(4),5-7で敗れていた。
第1セットは互いに1ブレークずつで、坂本がタイブレークを落とした。第2セットはキープが続き、5-5で迎えた第11ゲーム坂本のサービス。デュースで微妙なライン判定を受けた後、ダブルフォルトでブレークを許すという、あまりに悔しい展開だった。
2度の警告を受けるほど、坂本が感情をあらわにした、一戦だった。
スクールケイトは、昨年の全米オープン1回戦でダニエル太郎を破りグランドスラム初勝利。今年の全豪オープンでも1回戦でダニエル太郎を倒し、続く2回戦でも、あの世界1位ヤニック・シナーから第1セットを奪い話題になった。6月の芝、イルクリーオープンでも、チャレンジャー今季2勝目を挙げた、上り調子の選手。
この日も、サービスの確率が低かった以外は、本当に素晴らしいプレーを見せていた。
104位という現在のランク以上の実力者なのは、間違いなかった。
通常通りのプレーでは勝機は見いだせないと、坂本は考えていたかも知れない。
「我慢」と「驚異的なセカンドサーブ」そして「相手の想像を超えたファースト、セカンドのコンビネーション」を見せつけて、因縁の相手にリベンジして見せた。
キャリアハイ更新へ
チャレンジャー2勝目まであと2つ。準決勝の相手は第8シード、世界240位のパトリック・キプソン(25歳=アメリカ)だ。
今回のポイント獲得で、これまでのキャリアハイ2025年3月31日付の279位を更新する可能性も高くなった。
6月24日に誕生日を迎えたばかりの19歳の若武者は、ハードコートシーズンを、まだまだ熱くしてくれるはずだ。
敬意を込めて言う。
こんなハチャメチャなテニスをできる選手が、今まで日本にいただろうか。
やっぱり坂本怜の試合は面白い。
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