伊藤あおい「うざい対決」制しV王手


6度目優勝へあと1勝
伊藤あおい(21歳)が7月13日、世界108位の第1シードとして臨んだW50コロイオス・セイシャル準決勝で、世界210位の第3シード、マノン・レナード(24歳=フランス)を、3-6,6-2,6-2のスコアで倒した。1時間41分に及ぶ逆転劇だった。
今シーズン初戦、1月のWTA125キャンベラ国際以来、半年ぶりの決勝進出。
準々決勝、準決勝とランキング200位台前半の選手を連続撃破。
ITF、WTAツアー自身6度目の優勝に王手をかけた。
伊藤あおいの決勝までの勝ち上がり | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚪️ | M・D・C・パレイラ | 1427 | 6-1,6-1 |
2回戦 | ⚪️ | T・マルティンコバ | 480 | 6-2,7-6(4) |
準々決勝 | ⚪️ | L・クリモビコワ | 220 | 6-2,6-2 |
準決勝 | ⚪️ | M・レナード | 210 | 3-6,6-2,6-2 |
決勝 | V・ディアチェンコ | 585 |
「うざい」テニスVS「うざい」テニス
伊藤は6月のウィンブルドン前のインタビューで、自分の持ち味を「うざい」テニスと称していた。
伊藤の言葉を借りれば、相手のレナードもかなり「うざい」テニスだった。
明らかにスライスサーブと分かる緩いワイドサーブ。伊藤と同じくフォアスライスを多用した。サーブ&ボレーも頻繁に織り交ぜた。
2度大きくサーブのトスを失敗して見せた直後、肩口から軟式のカットサーブのようなスライスも打った。
これは伊藤が難なくリターン&ネットしてポイントを奪ったが、意図的だとすれば、かなりの曲者だ。
とにかく変則的なスタイルだったが、伊藤は、それを上回る「うざさ」で逆転した。
第3セット第1ゲームがカギ
試合の分岐点は、間違いなく第3セットの第1ゲーム、レナードのサービスゲームだった。
6度のデュースの末、18ポイント、11分間を要して伊藤が奪い取った。
クロスのフォアスラクロス3連発から、突如フォアスピンのダウンザラインでウィナー。
フォアのサイドスピンスライスでアプローチして、バックのアングルドロップボレー。
フォアスラでアプローチしてきた相手に、バックのハイボレー、スマッシュを早いタイミングで強いて、ベースラインに戻らせた直後にバックの深いクロスカウンター。
自分のフォアスラと相手のバックのストレートラリーを10本続け、しびれを切らした相手が11本目をクロスに強打してミス。
最後のブレークポイントは、センターに気のないフォアスラ2本を続けた後、目の覚めるようなバックのライジング逆クロスウィナーでゲットした。
とにかく相手をイラつかせる頭脳プレーのオンパレードだった。
続く第2ゲームはラブゲームキープ。第3ゲームもデュースの末、ブレークして3-0。相手は奇声をあげプッツン状態、完全に集中力ダウンした。
試合を通じて、ネットを取る相手には、ほぼスライス対応で確実にハーフボレーを触らせた。フォアのスライスパスも何本も繰り出した。
「ローボレー地獄」の後はスライスの「ロブ地獄」。
どこまでも「あおい沼」の真骨頂だった。
どうなる11度目の決勝
伊藤のITF、WTAツアーの決勝進出は過去10度あり今回が11度目。得意のハードが圧倒的に多い9度で、5勝5敗と五分の成績だが、1つ不思議なデータがある。
決勝まで失セット0で勝ち上がった大会は、4度すべてで、そのまま優勝。
しかも、決勝もストレート勝ちの「完全優勝」だ。
だが、今回は準決勝で1セットダウンとなった。
過去は落としたセット数が多いほど決勝で敗れる傾向が見られる。
伊藤あおい過去の決勝進出 決勝の( )は伊藤の獲得セット数 | |||
決勝 勝敗 | 試合数 | 準決まで 失セット | 決勝 失セット |
2023年3月 W15 亜細亜大学国際オープン ハード | |||
⚫️ | 5 | 2 | 2(0) |
2023年6月 W15 柏 大東建託オープン ハード | |||
⚪️ | 5 | 0 | 0(2) |
2024年2月 W60 バーニー ハード | |||
⚫️ | 5 | 1 | 2(1) |
2024年3月 W15 亜細亜大学国際オープン ハード | |||
⚫️ | 5 | 1 | 2(0) |
2024年5月 W50 NH農協銀行国際 ハード | |||
⚫️ | 5 | 3 | 2(0) |
2024年6月 W15 グリーンカップ埼玉国際 ハード | |||
⚪️ | 5 | 0 | 0(2) |
2024年9月 W50 能登和倉国際オープン オムニ | |||
⚪️ | 5 | 1 | 0(2) |
2024年11月 W35 浜松ウイメンズオープン オムニ | |||
⚫️ | 5 | 2 | 0(1)棄権 |
2024年11月 W100 高崎国際オープン ハード | |||
⚪️ | 5 | 0 | 0(2) |
2025年1月 WTA125 キャンベラ国際 ハード | |||
⚪️ | 5 | 0 | 0(2) |
2025年7月 W50 コロイオス・セイシャル ハード | |||
? | 5 | 1 | ? |
決勝まで失セット「1」で優勝できたのは2024年9月の能登和倉国際オープン1度だけ。2回戦でタイブレークを1つ落としたが、それ以外4試合は5ゲーム以上を失わないスンナリとした勝利だった。
フルセットの、もつれる試合を戦っていると、体力面が削られ「マイナス要素」として働くのか、それとも、ただの偶然かは分からない。
だが、今大会も能登和倉国際と同じく、比較的、楽なスコアでの勝ち上がり。疲れもなさそうなだけに、期待して良さそうだ。
全米オープンに弾みを
決勝の相手は世界585位ながら、キャリアハイ71位のヴィタリア・ディアチェンコ(34歳=ロシア)に決まった。2018年ウィンブルドン3回戦進出を始めグランドスラム本戦15度、ITFタイトル24個を誇るベテラン。両者、初の顔合わせだ。
伊藤は2回戦で、続いていたタイブレーク連敗を6で止めた。そして、この日の準決勝ではフルセットにもつれれば勝利を取りこぼす連敗も6で止めた。好データは揃った。
この決勝進出で、来週発表の世界ランクでは
5月5日付けでマークしたキャリアハイ100位の、わずか後ろにまで近づくと見られる。
グランドスラム大会の本戦ストレートインの目安は世界ランク100位前後。
来月に控える全米オープン。予選は8月18日、本戦は24日から始まる。
ウィンブルドンの時のように繰り上がりで本戦ストレートインがないとも言えない位置だ。
1つでもランキングを上げるためにも、全米オープンに弾みを付けるためにも、ここは確実に勝っておきたい。