伊藤あおい決めた4度目WTA1000本戦


嫌な連敗から脱出
世界105位、予選第11シードの伊藤あおい(21歳)が7月26日、カナダ・モントリオールで行われているナショナル・バンク・オープン予選に臨み、世界125位のアリャクサンドラ・サスノビッチ(31歳)に6-4,5-7,6-0の1時間57分で勝利。
1度勝てば本戦に進める状況で、見事自身4度目となる、WTA1000大会のメーンドロー入りを決めた。
これで準優勝した前々大会のW50コロイオス・セイシャルの準決勝以来の勝利。いずれもストレート負けで3連敗、特に直近2試合は、いずれも2ゲームしか取れず。少々、気になる内容だったが、好転の兆しをハッキリと見せた。
伊藤の直近5試合スコア | |
7/12 準決勝 W50 Corroios | M・レナード ⚪️3-6,6-2,6-2 |
7/13 決勝 W50 Corroios | V・ディアチェンコ ⚫️2-6,3-6 |
7/15 1回戦 125 Porto Open | 坂詰 姫野 ⚫️1-6,1-6 |
7/22 1回戦 500 Prague Open | T・ヴァレントヴァ ⚫️2-6 0-6 |
7/26 予選 1000 National Bank | A・サスノビッチ ⚪️6-4,5-7,6-0 |
第1セット10連続ポイント締め
第1セット第1ゲームいきなりブレークを許す苦しい展開だった。これで3戦前から17ゲーム連続サービスキープ失敗。それでも、伊藤はサービスゲームが苦しければ、リターンゲームを奪うとばかりに、巻き返した。
0-2からの第3ゲームでデュースの末、久々のサービスキープに成功。続く第4ゲームもキープを許し1-3となったが、第5ゲームはラブゲームキープ。その勢いで第6ゲームのブレークにつなげ3-3に追いつく。第7ゲームで2度目のブレークを許すが、第8ゲームでブレークバックし4-4。
ここからが圧巻だった。第9ゲームを鮮やかにラブゲームキープし、第10ゲームもラブゲームブレーク。
第8ゲームのラスト、2連続ポイントから合わせて、怒涛の10連続ポイント。3ゲーム連取でセットを締めくくった。
最終セット猛ラッシュ

第2セットもブレーク合戦になった。
両者3ブレークずつで迎えた5-4、伊藤リードの第10ゲーム。リターンゲームで伊藤はデュースに持ち込むが、キープされ5-5。第9、11ゲームはいずれも1ポイントも奪えずラブゲームでブレークされた。
第1セットとは真逆の4ゲーム連取を許し5-7で、ワンセットオールとされた。
だが動じない。
最終セットは今までのサービスゲームに苦しんだのがウソのようにポイントを重ねた。
3ゲームすべてをキープし、3ブレーク。
サービスゲームで失ったポイントはわずか2本という完璧な内容だった。
このセットわずか25分。6-0でアッサリと勝負を決めた。
1度勝った元世界29位に
直近2度の完敗の相手、坂詰は2022年全日本テニス覇者で、伊藤対策をキッチリと練っていた。ヴァレントヴァはWTA125ポルト・オープンを制して、W500プラハ・オープンでもツアー初の4強入り。この間、8連勝失セットゼロという、勢いに乗る18歳の快進撃下でぶつかった。
そして今回のサスノビッチとの顔合わせ。2018年ウィンブルドン16強、2022年全仏オープン16強など、4大大会通算30勝を誇る、キャリアハイ29位の実力者。
不運続きのドローに思われたが、見事突破した。
サスノビッチとは、今シーズン初戦12月31日、キャンベラ国際2回戦で1度対戦。今回同様、7ゲームがデュースにもつれ込む接戦だったが、伊藤はサービスゲーム8ゲームをすべてキープ。8度のブレークポイントすべてを、セーブした。そして第1、2セットとも2ブレークずつ。
試合時間1時間23分。試合途中にメディカルタイムアウトを取るなど、本調子ではなかったサスノビッチだったが、スコア的には伊藤が6-1,6-2で圧勝していた。
2~3月以来となるWTA1000シリーズ、再参戦の初戦。
「現在地」を確認する上でも大切だった約7カ月後の再戦で、キッチリと対戦2連勝を決めた。
サービスPWが良化
WTA1000の本戦が懸かった一戦で勝つのもさすがだが、内容にも大きな前進があった。ファイナルセット3ゲームキープに成功したことに象徴される、サービススタッツの良化だ。
完敗した直近2戦のサービススタッツと比較してみる。
2戦平均でファーストサービスポイントウォンは、わずか33.9%(20/59)%。セカンドサービスポイントウォンに至っては25.8%(8/31)しかなかった。
この日はファーストイン時62.3%(33/53)、セカンド時37.5%(9/24)。
セカンド時はまだ低いが、それでも第3セットは、少ないデータながら4度中4度ポイントの100%。ファースト時は10度中8度の80%。
キッチリとコースを付いたファーストの確率が上がるとともに、獲得率も上昇の兆しだ。
伊藤の直近3戦のサービススタッツ | |||
S=サービス、PW=ポイントウォン | |||
1st S確率 | 1st SPW | 2nd SPW | |
7/15 坂詰姫野戦 | 72.1% 31/43 | 29.0% 9/31 | 25.0% 3/12 |
7/22 ヴァレントヴァ戦 | 59.6% 28/47 | 39.3% 11/28 | 26.3% 5/19 |
7/26 サスノビッチ戦 | 68.8% 53/77 | 62.3% 33/53 | 37.5% 9/24 |
サスノビッチ戦 セット別 | |||
第1S | 71.9% 23/32 | 65.2% 15/23 | 44.4% 4/9 |
第2S | 64.5% 20/31 | 50% 10/20 | 9.1% 1/11 |
第3S | 71.4% 10/14 | 80% 8/10 | 100% 4/4 |
参考数値 | |||
キャンベラ国際5戦 | 69.3% | 64.0% | 49.5% |
WTA本戦4戦 | 67.0% | 53.7% | 39.6% |
オスタペンコ戦 | 67.3% | 48.6% | 23.5% |
ベンチッチ戦 | 66.7% | 47.1% | 35.3% |
連敗中は、リターンから攻められ、ベースライン上からライジング気味に、相手の時間を奪う精度で勝負する「3球目攻撃」を封じられていたが、その持ち味が戻りつつあると言えそうだ。
さあWTA1000での1勝へ
これでWTA1000の予選から5度挑戦して4度予選突破。ここぞの勝負強さ、立て直しのうまさは見事と言うしかない。
WTA1000 カタール・トータルエナジー・オープン 2月10日~2月16日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | A・ボンダール[16] | 94 | 4-6,6-3,6-3 |
予選2回戦 | ⚪️ | V・グラチェワ[8] | 70 | 6-2,6-4 |
1回戦 | ⚫️ | J・オスタペンコ | 37 | 2-6,1-6 |
WTA1000 ドバイ・デュティーフリー選手権 2月16日~2月22日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | T・タウンゼント[15] | 83 | 6-3,6-4 |
予選2回戦 | ⚪️ | A・クルーガー[1] | 40 | 7-5,6-2 |
1回戦 | ⚫️ | B・ベンチッチ | 65 | 0-6,2-6 |
WTA1000 BNPパリバ・オープン 3月3日~3月16日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | D・スニガー | 127 | 6-4,1-6,4-6 |
予選2回戦 | ⚫️ | M・イングリス | 134 | 6-7(4),5-7 |
WTA1000 マイアミ・オープン 3月17日~3月30日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | K・エフレモア | 743 | 6-2,6-3 |
予選2回戦 | ⚪️ | E・リス[5] | 78 | 4-6,6-4,6-2 |
1回戦 | ⚫️ | L・デイビス | 229 | 4-6,6-3,4-6 |
WTA1000 ナショナルバンク・オープン 7月27日~8月7日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選 | ⚪️ | A・サスノビッチ | 125 | 6-4,5-7,6-0 |
1回戦 | K・ヴォリネッツ | 108 |
1回戦の相手は同じく予選勝者の世界108位のケイティ・ヴォリネッツ(23歳=アメリカ)に決まった。
2023年全豪オープン3回戦進出など、グランドスラム本戦16度出場を誇る。キャリアハイは2024年7月29日付けの世界56位。
一撃必殺のショットというより、俊敏なフットワーク、配球で勝負するオールラウンダー。
両者初対決だが、今のランキング、噛み合い度を考えれば、伊藤にも十分勝利のチャンスはある。
▶「Australian Open TV」YouTubeより
勝てば2回戦は1回戦免除の第7シード、世界9位のジャスミン・パオリーニ(29歳=イタリア)。初めてトップ10選手と戦う、またとないチャンス。この上ない、経験になるのは間違いない。
まだつかんでいないWTA1000の本戦1勝へ。「4度目の正直」に挑む。