伊藤あおい 躍進18歳に完敗


18歳にストレート負け
世界105位の伊藤あおい(21歳)が7月22日、WTA250プラハ・オープン1回戦に臨み、世界106位のテレザ・ヴァレントヴァ(18歳=チェコ)に2-6,0-6のストレートで敗れた。
第1セット第4ゲームまでは2ブレークされても2ブレークを返して、2-2までは競り合った。
センターコートで大きな拍手を浴びる、地元期待の新星に立ち向かったが、その後は大きな見せ場を作れず。試合時間56分で完敗した。
16ゲーム連続サービスキープ失敗
前回大会のWTA125プラハ・オープンでは坂詰姫野に1-6,1-6で敗退した。第1セットで4ゲーム、第2セットで3ゲームすべてのサービスゲームを落とした。
この日も第1セットで4ゲーム、第2セットで3ゲームすべてのサービスゲームを奪うことができなかった。
準優勝した前々大会のW50 コロイオス決勝ヴィタリア・ディアチェンコ戦では、第2セット第5ゲームでキープしたのを最後に2ブレークを許して敗退。
これで2試合連続サービスキープなし。3試合にまたがり、16ゲーム連続でサービスキープができていない。
強気リターンの前に足元から崩れ
姫野戦同様、この日も相手にリターンから強打された。
苦手のフォア側や、足元に突き刺さるような深いリターンをドンドン打ち込まれる。
少々リスクを追っても1ショット目で、伊藤を追い込むのが、相手の必勝パターンになりつつあるようだ。
伊藤は何とかライジング処理しようとするが、間に合わず、そのままひざまずいてしまうシーンが数多く見られた。
フォアスラで逃れられたとしても1度かなりディフェンシブな状況を作られてしまうと、なかなか得意のカウンターにまでは持ち込めない。連続攻撃の前に、手も足も出ないというポイントが各サービスゲームで目立った。
伊藤はいつも以上にサーブアンドボレーを試み、打開しようしたが、連続ポイントを奪うところにまでは至らない。
伊藤の坂詰姫野戦サービススタッツ | ||
1stサーブ確率 | 72.1% | 31/43 |
1stサーブPW | 29.0% | 9/31 |
2ndサーブPW | 25.0% | 3/12 |
サービスPW | 27.9% | 12/43 |
PW=ポイントウォン |
伊藤のヴァレントヴァ戦サービススタッツ | ||
1stサーブ確率 | 59.6% | 28/47 |
1stサーブPW | 39.3% | 11/28 |
2ndサーブPW | 26.3% | 5/19 |
サービスPW | 34.0% | 16/47 |
PW=ポイントウォン |
姫野戦よりポイント獲得率こそわずかに上昇したが、ファーストサービスインの確率は60%以下に低下。
サービスポイントわずか34%では、さすがに勝機は見いだせるはずもなかった。
相手は新進気鋭
相手のヴァレントヴァはチェコ国内のみならず、WTAツアーでも話題の新進気鋭の選手。
1992、96年夏季五輪出場というカヌースプリント・チェコ代表を母に持つ。
2023年全米オープンジュニアのファイナリストで2024年全仏オープンジュニアの単複ダブル覇者。
ジュニア卒業後、2024年2月から6月にかけてITFツアー出場7大会で実に5度優勝。
2024年の戦績は驚異の38勝5敗。齋藤咲良らと共に、2024年有望株に送られる「ITF Class of 2024」も受賞した。
ヴァレントヴァは今シーズンに入ると1、3月とW75の大会を2つ制覇。
6月には全仏オープンの予選3試合を勝ち抜き、1回戦のグランドスラムデビュー戦でいきなり勝利。
先週大会の優勝者
さらに全仏直後の6月、WTA125グラード大会(イタリア)で優勝。これがWTA125の初タイトル。
続くウィンブルドンでは予選決勝ではフルセット、最終セット5-1から逆転を許すショッキングな敗退。
しかし、先週のWTA125ポルト・オープン(ポルトガル)では、吹っ切れたかのように、また優勝。
そう、伊藤が1回戦で坂詰姫野に1-6,1-6で完敗した、あの大会だ。
失セットゼロで5連勝。準決勝では、伊藤が敗れた坂詰を7-6(0),6-1で振り切った。
これでWTA125出場2大会連続優勝。世界ランクは先週キャリアハイ106位をマーク。昨年末の261位から150位以上もランクアップさせた。
奇しくも世界ランク105位伊藤の1つ下という、まさに「眼下の敵」。
そのポルトの決勝からまだ2日というハードスケジュールで、母国開催のトーナメントに凱旋出場した18歳の勢いの前に、完全に屈する形となった。
10代対決2勝4敗
伊藤は今シーズン、各国の期待の若手と、大会初戦でぶつかることが多い。
昨シーズンは現在88位までランクを上げたカナダの新星、ビクトリア・ムボコ(18歳)に2連勝したイメージが強い。
だが、今季は年下10代選手との対決は2勝4敗と、やや分が悪い。
伊藤と今シーズンの10代との対決 | ||||
7/22 WTA250 プラハ・オープン1回戦 2-6,0-6 | ||||
18歳 | T. ヴァレントヴァ | チェコ | 106位 | ⚫️ |
7/8 W50 コロイオス1回戦 6-1,6-1 | ||||
18歳 | M・D・C・パレイラ | ポルトガル | 1427位 | ⚪️ |
6/9 WTA125 BBVAオープン予選1回戦 6-7(2),6-3,2-6 | ||||
19歳 | A・ギーリングス | スペイン | 379位 | ⚫️ |
5/20 グランドスラム 全仏オープン予選1回戦 5-7,2-6 | ||||
19歳 | P・マルチンコ | クロアチア | 209位 | ⚫️ |
3/17 WTA1000 マイアミ・オープン予選1回戦 6-2,6-3 | ||||
15歳 | K・エフレモア | フランス | 743位 | ⚪️ |
1/7 グランドスラム 全豪オープン予選1回戦 3-6,4-6 | ||||
19歳 | 石井さやか | 日本 | 221位 | ⚫️ |
※年齢と世界ランクは対戦時 |
ランキングを上げて行くため必死に立ち向かってくる後輩を蹴落とさないと、自分も上位には行けない厳しい世界。
本人もその点は重々、承知だろう。
次はWTA1000シリーズ
伊藤の次戦は今シーズンの2~3月以来となるWTA1000シリーズ。
来週はナショナル・バンク・オープン(カナダ・モントリオール)、その翌週はシンシナティ・オープン(アメリカ)。そしてグランドスラムの全米オープンへと臨むスケジュール。伊藤は、いずれも予選からの出場になると見られる。
勢いある若手もさることながら、さらにワンランク上の強者が集う大会に挑む。
何とか、ここでは、懸案のサービスゲームの立て直しを図りたいところだ。
グランドスラムに匹敵する強豪ぞろいのWTA1000大会。
前回は4大会に出場して7勝4敗、3大会で予選突破と健闘。
上位シード、上位ランカーを次々となぎ倒す快進撃を見せた。
WTA1000 カタール・トータルエナジー・オープン 2月10日~2月16日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | A・ボンダール[16] | 94 | 4-6,6-3,6-3 |
予選2回戦 | ⚪️ | V・グラチェワ[8] | 70 | 6-2,6-4 |
1回戦 | ⚫️ | J・オスタペンコ | 37 | 2-6,1-6 |
WTA1000 ドバイ・デュティーフリー選手権 2月16日~2月22日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | T・タウンゼント[15] | 83 | 6-3,6-4 |
予選2回戦 | ⚪️ | A・クルーガー[1] | 40 | 7-5,6-2 |
1回戦 | ⚫️ | B・ベンチッチ | 65 | 0-6,2-6 |
WTA1000 BNPパリバ・オープン 3月3日~3月16日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | D・スニガー | 127 | 6-4,1-6,4-6 |
予選2回戦 | ⚫️ | M・イングリス | 134 | 6-7(4),5-7 |
WTA1000 マイアミ・オープン 3月17日~3月30日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | K・エフレモア | 743 | 6-2,6-3 |
予選2回戦 | ⚪️ | E・リス[5] | 78 | 4-6,6-4,6-2 |
1回戦 | ⚫️ | L・デイビス | 229 | 4-6,6-3,4-6 |
はたして、今回も前回同様の活躍を見せられるか。100位以内の選手になれるかどうかを試される、伊藤にとって、1つの正念場を迎えた、と言ってよさそうだ。