園部八奏 強烈フォアでプロ初勝利


自分の持ち味発揮
園部八奏が無限大の可能性を見せつけた。
世界ランク263位の園部八奏(17歳)が10月21日、東レ パン パシフィック オープン テニストーナメント1回戦に臨み、世界ランク132位ニコラ・バルトゥンコワ(19歳=チェコ)に6-4,6-3のスコアで見事勝利した。
「本当にうれしいです。緊張もプレッシャーもあった中、自分のいいプレーを出して勝ち切ることができたので本当にうれしいです」。
観衆に語った喜びの言葉通り、自分の持ち味、
思い切りの良いフォアハンドストロークをコート上で存分に披露して
つかみとったプロ初勝利となった。
ウィナー32本のうちフォア22本
10月「8」日、大阪市内で会見しプロ転向を発表したばかり。
名前に入った8。横にすれば無限大の「∞」。
その可能性の大きさを見せつけるように、得意ショットを打ちまくった。
ウィナー数は32。
うちフォアストロークのウィナーは実に22本を数えた。
第1S 園部のウィナー数と内容 | |
サービスエース | 0 |
フォアウィナー | 11 |
バックウィナー | 2 |
ネット | 2 |
セット計 | 15 |
第2S 園部のウィナー数と内容 | |
サービスエース | 2 |
フォアウィナー | 11 |
バックウィナー | 2 |
ネット | 2 |
セット計 | 17 |
マッチ 園部のウィナー数と内容 | |
サービスエース | 2 |
フォアウィナー | 22 |
バックウィナー | 4 |
ネット | 4 |
マッチ通算 | 32 |
序盤の劣勢から
スコア的には完勝かと思えるが、
全19ゲーム中14ゲームがデュースという大接戦。
試合時間は第1セット67分、第2セット53分と計2時間を擁した。
相手のバルトゥンコワは2023年ウィンブルドンジュニアのファイナリスト。鋭いバック、巧みなドロップショットと、本当に19歳かと疑うほどの「ウマさ」を持った選手だった。
9月のWTA500グアダラハラ・オープンで準決勝に進出。WTA125サムスン・オープンでも決勝進出していた。
ともに今大会ワイルドカードで出場を決めた期待の若手同士の対決。
序盤は第1ゲームのサービスゲームを落とすなど、園部の完全な劣勢だった。

第1セット第7ゲームがカギ
しかし粘り強くサービスゲームを続け2-4で迎えた第7ゲーム、
園部のサービスゲームで「潮目」が変わった。
このゲームを落とせば、セットダウンほぼ確実という状況で、
園部は驚異的とも言えるアグレッシブさを見せた。
15-30から3球目フォア逆クロスウィナー。
デュースから3球目フォア逆クロスウィナー。
デュースから3球目フォアクロスウィナー。デュースから3球目フォアクロスウィナー。
相手アドバンテージから5球目フォア逆クロスウィナー。
自分のフォアを貫き通すとの「信念」をヒシヒシと感じさせるゲームは、
6度のデュースの末、園部のモノとなった。
第8ゲームも強打でブレーク
園部の恐れ知らずかと思えるほどの強打を目の当たりにした相手は
イッキに消極的になった。
続く第8ゲーム、園部の勢いは止まらない。
バックのウィナー2本を奪って迎えた園部アドバンテージのブレークポイント。
バックのスライスリターンを相手がバックのスライスで返球すると、
園部は、ここぞとばかりにフォアをぶちかます。
フォアのクロス、フォアのセンター、そして最後はフォアのストレート!
3本の連続攻撃で最後は
完全なノータッチウィナーを奪い、ブレーク成功。
続く第9ゲームはラブゲームキープ。
第10ゲームは相手がこのゲームだけで3本のダブルフォルト。
園部の強気の攻めに、恐怖すら感じたのだろう。
第2セットも園部が第2ゲームを先にブレークし3-0。
その後もデュースになるピンチは何度もあったが、常に強気のフォアが園部を救った。
「8」カ月ぶりツアー勝利
プロデビュー大会の木下グループジャパンオープンでは1回戦負けだったが、園部にとっては、これがツアー2勝目。
1勝目は2025年2月3日、WTAツアーのデビュー戦となったWTA500アビダビ・オープン1回戦で世界ランク55位のユアン・ユエ(中国)を撃破したもの。
それ以来、「8」カ月ぶりの勝利は、
プロ転向後初、しかも東京有明で、という忘れられない1勝となった。
園部八奏 過去のツアー全成績 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
2024年2/3 WTA500 アブダビ・オープン | ||||
予選1回戦 | ⚫️ | B・ペラ | 89 | 4-6,0-6 |
2025年2/1‐5 WTA500 アブダビ・オープン | ||||
予選1回戦 | ⚪️ | H・バティスト | 93 | 6-3,6-1 |
予選2回戦 | ⚪️ | C・ブクサ | 98 | 6-3,6-3 |
1回戦 | ⚪️ | ユアン・ユエ | 55 | 6-4,6-3 |
2回戦 | ⚫️ | O・ジャバー | 33 | 3-6,3-6 |
2025年3/17 WTA1000 マイアミ・オープン | ||||
1回戦 | ⚫️ | I・カメリア・ベグ | 69 | 3-6,1-6 |
2025年10/13 WTA250 木下ジャパン・オープン | ||||
1回戦 | ⚫️ | 大坂なおみ | 16 | 0-6,4-6 |
2025年10/21 WTA500 東レ パン パシフィック・オープン | ||||
1回戦 | ⚪️ | N・バルトゥンコワ | 132 | 6-4,6-3 |
2回戦 | S・ケニン | 25 |
ケニン相手にどこまで?
2回戦の相手は世界25位で第10シードのソフィア・ケニン(26歳=アメリカ)に決まった。
内島萌夏(24歳=日本)を6-1,6-3で倒しての勝ち上がり。
いわずと知れた2020年全豪オープン女王、同年全仏ファイナリストだ。
園部にとっては木下グループ ジャパンオープンでの大坂なおみに続いてのトッププレーヤーとの貴重な顔合わせとなる。
その大坂なおみは今大会を欠場し、シングルスに残る日本選手は園部だけになった。
もはや大事なのは勝ち負けではない。
ワクワクの根源となるのは、トップ相手に園部のテニスがどこまで通用するか。
グランドスラム1勝を目指す来シーズンを、そして今後を、占う大事な試金石になる。
▶「WTA」公式YouTubeより