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伊藤あおいの試合予定と結果は

伊藤あおい大転倒から大金星

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世界110位の伊藤あおい(21歳)が7月29日、WTA1000ナショナル・バンク・オープン2回戦(カナダ・モントリオール)に臨み、世界9位で第7シードのジャスミン・パオリーニ(29歳=イタリア)を見事撃破した。

2-6,7-5,7-6(5)。

1セットダウンから第2セットは相手マッチポイントもしのいでの逆転劇。

ファイナルはタイブレークによる勝利。試合時間は2時間27分だった。

トップ10との対決は今回が初めてだったが、世界中を驚かせる白星で飾った。

グランドスラムに次いでグレードの高いWTA1000で初勝利を挙げた1回戦に続いての2連勝で、3回戦進出、ベスト32入りを決めた。

▶「WTA公式」YouTubeより

ファイナルセットタイブレーク、6-5。初めて迎えたマッチポイント。

伊藤は明らかに狙っていた。

パオリーニのセカンドサーブを、バックのジャックナイフで叩くと、そのままリターンダッシュ。

狙い通り、抜群のタッチセンスで、バックのクロスアングルボレーを決めると、パオリーニは追いかけるのを諦めた。

その瞬間、珍しく緊張していた顔がイッキに弾けた。

「信じられない」という一瞬の表情の後、パオリーニ、そしてセンターコートのスタンド四方に向かって、普段通りペコペコと頭を下げた。

「AOI!」「AOI!」

まさかの勝利、まさかの思い切った結末に、スタンドからは「あおいコール」が巻き上がった。

「大金星」が迫ったこの土壇場で見せた、大胆なリターンダッシュによるエンディング。

WTA実況は「サプライズ!」と叫び、コートインタビュアーは興奮気味にファンの声援を促した。

伊藤のWTA1000本戦の全成績※いずれも2025年
カタール・トータルエナジー・オープン 2月10日~2月16日
回戦対戦相手Rスコア
1回戦⚫️J・オスタペンコ372-6,1-6
ドバイ・デュティーフリー選手権 2月16日~2月22日
回戦対戦相手Rスコア
1回戦⚫️B・ベンチッチ650-6,2-6
マイアミ・オープン 3月17日~3月30日
回戦対戦相手Rスコア
1回戦⚫️L・デイビス2294-6,6-3,4-6
ナショナルバンク・オープン 7月27日~8月7日
回戦対戦相手Rスコア
1回戦⚪️K・ヴォリネッツ1086-2,2-6,6-2
2回戦⚪️J・パオリーニ2-6,7-5,7-6

第1セットは第6ゲームで初めてサービスキープに成功したものの、アッサリ2-6で失った。

第2セットも先に1ブレークを許し1-4。その後3ゲームを返し4-4に追いつくが、第9ゲームをキープされ、後がなくなった。

「カモン!」のパオリーニの雄叫びが聞こえた。相手の粘りはここまで。

次の第10ゲームをブレークして終了と、2024年全仏、ウィンブルドンの連続ファイナリストは、間違いなく確信していただろう。

第2セット4-5の第10ゲーム。伊藤のサービスゲーム。ドライブボレーウィナーとダブルフォルトで0-30。

普段通りの伊藤の「何で!」の嘆き声が出た。スタンドも伊藤の敗戦を感じ取った。

ところが、だ。伊藤はこの大逆境から大まくりする。

この試合、再三決まっていたバックのダウンザラインウィナー! 15-30。

続くポイントはロングラリー。フォア側に走らされ必死に食らいついた際、

臀部をコートにしこたま打ち付ける大転倒。

フワリと浮き上がったボールはベースラインにポトリと落ちる。

パオリーニは一旦落とし、フォアで決めにかかる。絶体絶命の伊藤。しかし何とかラリーを続けるとパオリーニがフィニッシュのはずのバックを、まさかのミス。30-30。

「お尻痛い」とばかり照れ笑いでピョンピョン跳ねた後、

息つくまもなく、次のポイントを自らミスして30-40。

相手のマッチポイント。しかもセカンドサーブ。

伊藤は開き直ったかのように深いフラットサーブを相手ボディー付近に打ち込む。

「あっ、ダブルフォルト」

伊藤の顔はそう言っているように見えた。

だが、実際はオンライン。棒立ちのまま3球目を返球すると、またも相手がフィニッシュのフォア逆クロスをわずかにサイドアウト。40-40。

2度「命拾い」した伊藤はフォアスラを続け、またもパオリーニのミスを引き出し、最後もリターンミス。3連続ポイントでキープに成功。5-5。

何度もゲームセットを迎えたと思ったパオリーニは、ここからものの見事に「あおい沼」にハマることになる。

パオリーニは続く第11ゲーム、ダブルフォルト、フォアのミスなど重ねラブゲームでブレークを許す。逆に伊藤は第12ゲームをあっさりキープ。

伊藤は7-5で1セットオールに追いついた。

トータルポイントは第2セット第10ゲームまで「32」対「35」と伊藤の劣勢だったが、3ゲーム連取。ラスト3ゲームは「13」対「4」という土俵際の大逆転だった。

パオリーニは何度もこんなはずはないと思っただろう。ファイナルセット、果敢にネットに出てウィナー数を増やしたが、逆にアンフォーストエラーも増加。

最終的に伊藤「38」に対して「67」と倍近いミスを重ねた。

両者の各セットトータルポイント
伊藤パオリーニ
20第1S31
45第2S39
43第3S40
108通算110
両者の各セットウィナー数
伊藤パオリーニ
6第1S6
5第2S9
9第3S17
20通算32
両者の各セットアンフォーストエラー数
伊藤パオリーニ
14第1S10
12第2S32
12第3S25
38通算67

ダブルスも世界6位のプライドにかけ、ネットに詰めたが、

伊藤は最後までムーンボールでバックのハイボレーを打たせるなど、勝ち気に急ぐことなく普段通りのプレーを続けた。

横に曲がる、滑る、微妙なフォアスライスの回転の変化、交えるフォアのスピン、バックのフラット気味のカウンターに、パオリーニは最後までミスの多さを修正できなかった。

そしてもつれたタイブレーク、伊藤の最後の一刺しにやられた。

キャリアハイ4位。2024年6月以降、1年間以上トップ10以内を維持しているパオリーニにとって、アンフォーストエラー「67」は今シーズンのツアーで最も多い数字だという。

だが勘違いしてはいけない。パオリーニは途中まで素晴らしいテニスをしていた。世界9位の「自滅」を呼んだのは、紛れもない伊藤の「いやらしさ」だった。

パオリーニの強打のコースがまるで事前に分かっているかのように、鋭い観察眼で「読み」を当て続けた。

淡々と貫いた「伊藤らしいテニス」はトップ10に確かに通用するどころか、番狂わせを呼ぶレベルだったのだ。

3回戦の相手は世界51位、ジェシカ・ボウザス・マネイロ(22歳=スペイン)に決まった。

初対決だが、勝機は十分あると言っていいだろう。

映像中継カメラは、ラケットバッグについた伊藤のペンギンマスコットを大映しにしたり、ボールボーイに笑顔で会釈してボールを受け取る姿、小躍りする笑顔のシーンを何度も繰り返しとらえた。

アナウンサーと解説者はパワー全盛のテニス界にあって「非常に珍しい」と感嘆の声を挙げた。

▶WTA公式ホームページより

WTA公式ページは伊藤の勝利のシーンを「ロジャー・フェデラーを彷彿とさせるSABR、リターンからの大胆なネットへの突進、そして決めるボレーだ」「最も勇敢な方法だった」と称えた。

日本期待の伊藤の「らしさ」は、もうハッキリと世界に認識された。

来週にはキャリアハイ更新は、ほぼ確定。自身最高の100位より上の97位前後に浮上すると見られている。いよいよグランドスラム本戦ダイレクトイン圏内へ。

伊藤がもう一波乱起こせば、さらなる注目を浴びるのは間違いない。もう金星と呼ぶのは失礼なときが来たのかもしれない。

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テニスうどん
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駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
WOWOW、U-NEXT、ATP、WTAの配信も利用させていただいています。
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