錦織80日ぶり復帰戦飾れず


ストレートで敗れる
心機一転、ケイが真新しいシャツ、鮮やかな青いラケットを持って、コートに帰ってきた。
世界65位の錦織圭(31歳)が8月8日、ATP1000シンシナティ・オープン1回戦に臨み、世界47位のカミロ・ウーゴ・カラベッリ(26歳=アルゼンチン)に5-7,3-6で敗れた。
錦織にとって公式戦は5月20日、ATP250ジュネーブ・オープンの2回戦、カレン・ハチャノフ戦で腰痛を訴え途中棄権して以来。
80日ぶりの復帰戦を勝利で飾ることはできなかったが、何より全米オープン前に無事、コートに戻ってこれたことに意義がある。
フォアのウィナーとミス混在
試合を通じ終始、カラベッリの強烈なサーブに苦しんだ。
しかし、自らのサービスゲームも10ゲーム中7度キープとまずまずだった。
特にデュースサイドでワイドサーブをうまく使い、ベースライン内に踏み込んで、強烈な3球目攻撃を繰り出した。

最も素晴らしかったのは第1セット第10ゲーム、ラブゲームキープで5-5としたシーン。
ワイドサーブでサイドライン外側に追い出しておいて、オープンスペースの逆を突くフォアのクロスウィナー。15-0。
ワイドのフラットサーブ、完璧なノータッチエースで30-0。
続くポイントはセカンドサーブになったが、強烈なフォア2連発からのバックのクロスウィナー。ベースラインから1歩も下がらない怒涛の強打で40-0。
ATPの実況も「スペシャルケイ!」と思わず声を上げた。
最後はアドサイドのワイドサーブから、フォアのクロスウィナーで締めくくり。
このゲームを続けられればと思わせる内容だった。
しかし実際はウィナーも多いがミスも混在するテニスになった。
マッチ通算でウィナー24本奪ったが、アンフォーストエラーも22本。
どちらも相手の12本、10本のほぼ倍だった。
相変わらずの才能
とはいえ随所で、その「タレント」の凄まじさを見せつけた。
第2セット第1ゲーム。ネットに詰めた相手の返球にとっさに反応。
片手バックハンドで低速ライナー。鮮やかなクロスのパッシングを決めた。
続く第2ゲーム。今度は錦織が前に出てのバックのローボレー。もはや返球が精一杯の位置だったが、ネット下から浮き上がらせるような見事なクロスボレーウィナー。
いずれも往年のロジャー・フェデラーを彷彿させる弾道。
「美しい」としか形容のしようがない見事なショットだった。
これだから錦織のプレーを見るのはたまらない。アメリカのファンもそう感じたはずだ。
4年ぶり全米前に貴重な実戦
8月11日からのチャレンジャー、サムターにもエントリーしているが、24日からは全米オープンが控える。
長い故障明け、ぶっつけ本番で迎えるのではなく、まずは1試合、キッチリと2セットを戦えた。
ミスとナイスショットの波が激しい点については、当然、試合勘が影響しているはずで、錦織なら、残り2週間で、きっと修正してくれるだろう。
今シーズンは全豪オープンでこそ1回戦を勝利し2回戦に進んだが、全仏オープン、ウィンブルドンと連続欠場。
最後のグランドスラムにかける思いは、さぞ強いはずだ。
全米オープンは過去3年連続欠場。
2021年の3回戦でノバク・ジョコビッチに敗れたのが最後。
出場すれば実に4年ぶりとなる。
錦織のグランドスラム勝敗と獲得賞金 | |||
全豪 | 全仏 | ウィン | 全米 |
28勝 | 27勝 | 22勝 | 27勝 |
11敗 | 12敗 | 12敗 | 11敗 |
1,770,226$ | 2,231,883$ | 1,694,371$ | 4,134,125$ |
2.6億円 | 3.2億円 | 2.5億円 | 6億円 |
2014年決勝進出、2016、2018年と準決勝進出という、輝かしい成績を残してきた、思い出深い大会。勝利数こそ他のグランドスラムと大差ないが、賞金は6億円と、比較にならないほど多く獲得してきた。
もう1度、大きな拍手と大歓声を浴びる場所とするには、格好の舞台だ。もう1度「スペシャルケイ」の輝きを見せてほしい。