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伊藤あおいの試合予定と結果は
データで深堀り

伊藤あおい世界6位キーズに敗れる

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世界94位の伊藤あおい(21歳)が8月11日、WTA1000シンシナティ・オープン3回戦に臨み、世界6位で大会第6シードのマディソン・キーズ(30歳=アメリカ)に4-6,0-6で敗れた。試合時間1時間2分。

相手のキーズは今シーズンの全豪オープン覇者で、グランドスラム準決勝5度、準々決勝5度を誇るバリバリのトップ10。

第2セットはベーグルをつけられた。スコア的には完敗だろう。

だが第1セットは2-5から相手サーブをブレークするなど2ゲーム連取。計2ブレークに成功するなど、確実に競り合った。

スコアだけで分からない、可能性、手応えは確かに、そこにあった。

第1セットで伊藤が、「輝き」を放ったシーンをいくつか振り返る。

伊藤S第3ゲーム30-15。直前のポイントでボディーサーブで相手のバックのリターンミスを誘っていた直後。アドバンテージサイドでサイドラインいっぱいを突くワイドのフラットサーブを繰り出す。キーズはまったく触れずノータッチエース。

第3ゲーム相手アドバンテージ。セカンドサーブで Tゾーンを突くスライスサーブ。そのまま前に入り、相手の浅くなったリターンを得意のバックのダウン・ザ・ラインでウィナー。世界6位相手に積極果敢、完璧な3球目攻撃成功。

第3ゲーム自分アドバンテージ。相手に完璧なアプローチを許すが、狭いバック側に留まる。フォアサイドのオープンコートを完全に捨てると、相手のボールは読み通りにバック側へ。角度のない位置からバックでストレートへのパッシング。相手ボレーのミスを誘いポイント、ゲームを奪う。

相手S第4ゲーム0‐15。両手バックであえて振り遅れさせたような逆クロスでアプローチ。相手はフォアスラでクロスに返してくるが、フォアのドロップボレーで完璧に料理。

伊藤S第5ゲーム0‐40。従来以上に空中を高く跳ぶバックのジャックナイフでダウン・ザ・ライン。相手はフォアをミスしポイント。

相手S第8ゲーム15‐30。浅いフォアスラ、バックでの深いボールを、相手へ交互に送った後、相手の浅くなったボールに入り込み、バックの逆クロスウィナー。

伊藤S第7ゲーム15‐15。相手はフォアスピンのクロスでアプローチ。伊藤はセンター付近やや左からフォアのスライスを逆クロスへ。いなすような弾道で、サービスボックスの角に落ちる見事なパッシングショットに。

第2セットではスコア差もあって伊藤は、

思い切りの良いフォアのスピンショットを、まるで「腕試し」と言わんばかりに試した。

相手S第4ゲーム15‐0。セカンドサーブの高い打点をスライスではなくフォアスピンで返球。次にフォアのムーンボールを送った後、高い打点のフォアでクロスに強打。反応の遅れた相手は返球ミス。

相手S第6ゲーム30‐0。デュースサイドのセカンドサーブに対して、フォアスピンでストレートへリターン。相手は反応が遅れる。すかさずバックでアプローチ。相手はバックのパッシングをミス。

得意のバックのダウン・ザ・ライン、逆クロス気味のショットは、世界6位相手でも確実に、その効果を発揮した。

ワイドサーブは、ほぼ100%読み切って、先にリターンポジションを取っているなど、

随所に相手のフォームからコースを読み切る観察力は、超トップ相手でも変わらなかった。

アグレッシブなサーブが決まった時に関しては、相手にリターンで完全に崩されるほどは追い込まれなかった。

セカンドサービス、フォアの強打など、課題の部分はキッチリと意識して積極的にプレーしている様子がうかがえた。

第2セット、伊藤はセカンドサーブでの8ポイントすべてを失った。

伊藤のサーブが把握され始めた第1セット第9ゲームの最後からゲームセットまで

セカンドサーブになった際、1ポイントも取れなかった。

9ポイント連続失点である。

ファーストサーブでなくなれば、リターンから完全に主導権を握られ、歯が立たなかった。

逆に相手のファーストサーブだと、第1セット第10ゲームから13ポイント連続で失点。

第2セットは10回のファースト時に1度もポイントできなかった。

第1セット同様、第2セットも伊藤のファーストサーブ確率が70%近くあれば、もう少しポイントは竸ったかもしれない。

またキーズのマッチ通算ファースト・イン確率は76.7%と高かった。もう少しスコア的に競ってプレッシャーをかけられれば、また違った展開になったかもしれない。

第1セット 主なスタッツ
PW=ポイントウォン
伊藤サービススタッツキーズ
エース
ダブルフォルト
65.9%
(27/41)
1stサーブ82.1%
(23/28)
48.1%
(13/27)
1stサーブPW56.5%(13/23)
42.9%
(6/14)
2ndサーブPW80%
(4/5)
伊藤トータルスタッツキーズ
46.3%
(19/41)
トータルサービスPW60.7%
(17/28)
39.3%
(19/41)
トータルリターンPW53.7%
(17/28)
43.5%
(30/69)
トータルPW56.5%
(39/69)

第2セット 主なスタッツ
PW=ポイントウォン
伊藤サービススタッツキーズ
エース
ダブルフォルト
42.9%
(6/14)
1stサーブ66.7%
(10/15)
33.3%
(2/6)
1stサーブPW100%
(10/10)
0%
(0/8)
2ndサーブPW40%
(2/5)
伊藤トータルスタッツキーズ
14.3%
(19/41)
トータルサービスPW80%
(12/15)
20%
(2/14)
トータルリターンPW85.7%
(12/15)
17.2%
(5/29)
トータルPW82.8%
(24/29)

第2セットのトータルポイントは「5」対「24」。力の差は確かにあった。特にサービス&リターン力の差を見せつけられた。

ファーストサービスが70%ほど入る安定感を手に入れ、セカンドサーブの強化、セカンドサーブ時のポイントウォンの向上。

言葉で言えば簡単だが、シーズン中のサーブ改良は、なかなかもって難しい。もちろん予選から5試合を戦ってきた疲労もあった。

今シーズン2月のカタール・トータルエナジー・オープンで、2017年全仏覇者で、世界37位のエレナ・オスタペンコ(当時27歳=ラトビア)に完敗した時と、似ていた。

リターン力が超トップクラスの相手と対峙する時の課題は、誰よりも本人、陣営が分かっているだろう。

ただ、それ以外の部分でWTAツアー内、正真正銘のトップランカーと、互角に対峙できることを実証してみせた。

過去のデータを振り返っても、トップ50との勝敗は互角以上、4勝3敗と勝ち越している。

過去の世界ランク50以内との対戦
2025年8月11日 WTA1000 シンシナティ・オープン
世界6位M・キーズ⚫️
3回戦第6シード2-6,3-6
2025年7月29日 WTA1000 ナショナルバンク・オープン
世界9位J・パオリーニ⚪️
2回戦第7シード2-6,7-5,7-6(5)
2024年10月29日 WTA250 香港オープン
世界29位K・ボルター⚫️
1回戦第2シード4-6,4-6
2025年8月9日 WTA1000 シンシナティ・オープン
世界33位A・パブリュチェンコワ⚪️
2回戦第27シード6-1,4-6,6-4
2025年2月10日 WTA1000 カタール・トータルエナジー・オープン
世界37位J・オスタペンコ⚫️
1回戦2-6,1-6
2025年2月15日 WTA1000 ドバイ・デュティーフリー選手権
世界40位A・クルーガー⚪️
予選2回戦予選第1シード7-5,6-2
2024年10月16日 WTA250 木下ジャパン・オープン
世界50位E・コッチャレット⚪️
2回戦第8シード6-4,6-3
※世界ランクは対戦当時

WTA公式は、この日の一戦をこう評した。

「第6シードのキーズはパワープレーを抑制し、最後の13ゲーム中11ゲームを連取して、『非伝統的なスタイル』の伊藤あおいを破った。『トリッキーな』伊藤を軽々と操った」

キーズは第1セット「あおい沼」に足を一歩踏み入れかけた。

それでも確率重視のサーブと、パワーを抑え気味にしたストロークで確実に左右に散らし、伊藤を引き離した。

さすが世界6位という試合運びだった。

試合後のオンコートでは、インタビュアーが「彼女はいっぱいフォアスラを打ってきたね」と伊藤イジりした。

キーズも膝を曲げスピンを打つポーズを、茶目っ気いっぱいの笑顔で返した。

2回戦でエヴァ・リス(23歳=ドイツ)に敗れかけた際に「気を失った」と発言し話題になったことに引っ掛けてか、第1セット終盤「流れを見失った」と話し、笑いを誘いもした。

「非伝統的」「トリッキー」と称され、伊藤と言えばフォアスラ、「スライスの悪魔」との代名詞がつき、キーズらにコメントが求められるほどのインパクトをWTAツアー内に残した。

この十分過ぎる「結果」「内容」こそを、称賛すべきだろう。

WTA1000 ナショナルバンク・オープン 7月27日~8月7日
回戦対戦相手Rスコア
予選⚪️A・サスノビッチ1256-4,5-7,6-0
1回戦⚪️K・ヴォリネッツ1086-2,2-6,6-2
2回戦⚪️J・パオリーニ92-6,7-5,7-6(5)
3回戦⚫️J・B・マネイロ516-4,5-7,3-6
WTA1000 シンシナティ・オープン 8月7日~8月18日
回戦対戦相手Rスコア
予選1回戦⚪️A・クルニッチ3544-6,6-4,6-2
予選2回戦⚪️D・ガルフィ1026-3,6-4
1回戦⚪️E・ルーセ586-2,7-6(6)
2回戦⚪️A・パブリュチェンコワ336-1,4-6,6-4
3回戦⚫️M・キーズ4-6,0-6

さあ、次は、いよいよ全米オープンだ。

予選は8月18日から、本戦は24日から始まる。

WTA1000の2大会連続3回戦進出という快挙で、伊藤の最新の世界ランクは80位台前半に躍り出ると見られる。しかし、すでに全米オープンのメインドローの選出対象となるランクは7月14日付で締め切り済み。伊藤の場合は同日の103位が採用される。

7月15日の最初の発表で待機5番手だった伊藤だが、ここまで3人の欠場者が出て、現在待機2番手。このまま欠場者がでなければ予選からのスタートになる。

全米オープン女子出場辞退選手
R選手名国名日付
6位鄭欽文中国7/21
10位D・コビニッチモンテネグロ8/8
95位P・バドサスペイン7/22
全米オープン女子繰り上がり選手
R選手名国名日付
100位L・ジャンジャンフランス7/21
101位N・P・ディアススペイン7/22
102位J・タイヒマンスイス8/8
全米オープン女子 待機順上位
R選手名国名
102位A・コルネフランス
103位伊藤あおい日本
104位J・フランチェスカイギリス

予選からの場合は、男女128人がそれぞれ参加し、本戦出場は16人。つまり3試合に勝つ必要がある。ただ予選のシード順には最新ランクが採用される。

現状のライブランキングでは伊藤が第1シードになる可能性が高い。

突破への期待は高まる一方だ。

いずれにしろ世界ランクのキャリアハイは大幅に更新される。この順位を維持すれば、来シーズンはグランドスラムでも確実に本戦ダイレクトインできる。

グランドスラムに次ぐグレードのWTA1000で2大会連続3回戦に進出した4勝。

初のトップ10との対決になった7月29日のナショナルバンク・オープンで、世界9位のジャスミン・パオリーニ(29歳=イタリア)からの「大金星」。キーズをも苦しめた第1セット終盤の粘り。

確固たる自信を手に、最高の形で、今シーズン最後のグランドスラムに向かう。

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テニスうどん
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駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
WOWOW、U-NEXT、ATP、WTAの配信も利用させていただいています。
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