伊藤あおい全米予選決勝敗退


試合時間49分 ストレートで
世界ランク82位で予選第3シードの伊藤あおい(21歳)が、全米オープン本戦出場を惜しくも逃した。
8月22日、全米オープン予選3回戦に臨み、世界147位のジャニス・ティエン(23歳=インドネシア)にストレートで敗れた。スコアは1-6,2-6。試合時間49分。
伊藤あおい 全グランドスラム成績 | ||||
2025年1月7日 全豪オープン | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚫️ | 石井さやか | 221 | 3-6,4-6 |
2025年5月20日 全仏オープン | ||||
予選1回戦 | ⚫️ | P・マルチンコ | 209 | 5-7,2-6 |
2025年6月30日 ウィンブルドン | ||||
1回戦 | ⚫️ | K・ラヒモワ | 80 | 7-5,3-6,2-6 |
2025年8月19日、21、22日 全米オープン | ||||
予選1回戦 | ⚪️ | A・フリードサム | 197 | 6-4,5-7,6-3 |
予選2回戦 | ⚪️ | G・マリスタニー | 192 | 6-0,1-6,6-1 |
予選3回戦 | ⚫️ | J・ティエン | 147 | 1-6,2-6 |
強かったティエン
やはり相手ティエンは147位というランキング以上に強かった。
昨年から16カ月間の間にITFツアータイトル13勝、直近もW100レキシントン、W100ランディスビルで2週連続の準優勝で全米に乗り込んできた。

強力なサービス、スピン量の多いフォア、バックのスライス、ネットプレー。すべてが完璧だった。今後のブレーク必至と感じさせる、上質なプレーだった。
第2セット食らいつくも
逆に伊藤は、試合を通じて本来の出来にはほど遠かった。
フルセット続きの連戦で、腰の痛みはピークに達していた。
全身の筋肉のハリも相当な様子に見えた。
第1セットはわずか18分。
第1ゲームで自らのサービスゲームをダウンするところから始まった。第3ゲームで何とかキープするが、第5、7ゲームのサービスゲームではいずれもラブゲームでブレークされた。
3回あったリターンゲームでは、わずか2ポイントしか得点できなかった。
トータルポイントは8-25。
伊藤VSティエン トータルポイント | ||
伊藤 | セット | ティエン |
8 | 第1S | 25 |
21 | 第2S | 32 |
29 | 通算 | 57 |
それでも第2セットでは、伊藤が持ち前の「気合い」と「粘り」を見せた。
0-1からの第2ゲームをキープ。
鮮やかなフォアのスピンによるダウン・ザ・ライン。得意の両手バックのダウン・ザ・ライン。腰の保護ベルトを気にしながら一瞬、見せた本来の攻撃に、相手はついて来られなかった。
1-2で迎えた第3ゲーム、2-5で迎えた第7ゲーム。どちらのリターンゲームでもデュースまで持ち込んだ。
第1セットわずか2ポイントだったリターンゲームでのポイントは、10ポイントにまで増えた。
第2セットのトータルポイントは21-32。
最後まで全力を尽くすという、伊藤のせめてもの意地だった。
ティエンは、2004年全米オープンのアンジェリック・ウィジャヤ以来、21年ぶりのインドネシア選手のグランドスラム本戦出場となった。
連戦&重要な一戦 勝ち抜き
伊藤の連戦疲れは明白で、この日は完敗になった。
それでも、予選1、2回戦の厳しいフルセットをモノにしたからこそ、たどり着いた予選決勝だ。
WTAツアーレベルでのフルセットマッチ勝率は過去2年間、13勝5敗で、勝率.722。
下部のWTA125を除けば13勝3敗、勝率.813。
伊藤のフルセット勝率 | |||
年 | ITF | WTA | 通算 |
25 | 2勝4敗 (.333) | 10勝5敗 (.667) | 12勝9敗 (.571) |
24 | 13勝9敗 (.591) | 3勝0敗 (1.000) | 16勝9敗 (.640) |
23 | 11勝8敗 (.579) | ー | 11勝8敗 (.579) |
22 | 9勝7敗 (.563) | ー | 9勝7敗 (.563) |
21 | 1勝0敗 (1.000) | ー | 1勝0敗 (1.000) |
通算 | 36勝28敗 (.563) | 13勝5敗 (.722) | 49勝33敗 (.598) |
すべて3セット、ITFには最終セット、スーパータイブレーク決着を含む |
特に7月26日のナショナルバンク・オープンから27日間で、WTA1000の2大会、グランドスラム予選というハイレベルな12試合を戦い、うち8試合がフルセット。そのうち7勝。
WTA1000大会で連続3回戦進出、グランドスラムの全米予選決勝進出という結果に結びついた。
プレッシャーのかかる大事な試合を勝ちきるという、伊藤の「勝負勘」「戦略性」の高さはさすがだった。
今回の全米オープンを含め、今シーズンからWTA1000以上のグレード大会の予選に9度挑戦しているが、うち5度で突破。
伊藤のWTA1000以上の予選成績 ※すべて2025年 | ||||||
1月 | GSM 全豪オープン | 敗退 | ||||
2月 | WTA1000 カタール・トータルエナジー・オープン | 突破 | ||||
2月 | WTA1000 ドバイ・デュティーフリー選手権 | 突破 | ||||
3月 | WTA1000 BNPパリバ・オープン | 敗退 | ||||
3月 | WTA1000 マイアミ・オープン | 突破 | ||||
5月 | GSM 全仏オープン | 敗退 | ||||
7月 | WTA1000 ナショナルバンク・オープン | 突破 | ||||
8月 | WTA1000 シンシナティ・オープン | 突破 | ||||
8月 | GSM 全米オープン | 敗退 |
ツアー本格挑戦1年目にして、グランドスラム予選決勝進出までの道のりは、称えられて当然だろう。
次戦はWTA125エントリー
わずかにラッキルーザーで本戦インの可能性は残るが、
まず最優先するのは、腰の状態と疲労回復だ。
陣営も含め、本人も慎重な判断で予選決勝出場を決めたはず。
筋肉とパワーだけに頼らぬ「脱力系のテニス」だからこそ、コートに立てていたとも言える。
7月のナショナルバンクから、シンシナティ、全米の連戦を、この状況で勝ちきり、戦い抜けたことを、むしろ自信とした、ことだろう。
9月1日からはWTA125グアダラハラ・オープンにエントリーしている。メキシコのハードコートでの戦いだ。出場できるまで回復できれば「御の字」だろう。
10月には木下ジャパンオープン(13日~、大阪・靭)に参戦することも発表されている。
7、8月の大活躍で北米では「ITO MANIA」という言葉が生まれるほど、一部熱狂的なファンがコートに押し寄せた。試合後も大人気となり、次の試合が始まるまでサイン責めに合うほどだった。
多彩なショット、そして元気な姿と笑顔を、「凱旋」を待っている日本のファンにも見せてほしい。