錦織フォア光りベスト8進出

ストレート8強も
世界158位の錦織圭(35歳)が11月20日、横浜慶應チャレンジャー2回戦に臨み、世界374位のシン・サンフィ(28歳=韓国)に6-4,6-1でストレート勝利した。試合時間1時間10分。
ベスト8進出となったが、WOWOWのインタビューに答える錦織の表情に明るさはなく、その苦悩ぶりが浮かんだ。
「いいところも悪いところもありましたし1回戦よりは何となくプレーは良かったかなと思いますけど。しばらくは自分でも100%納得という試合はなかなかできないと思うので、こういうことの繰り返しで、自分の調子を取り戻していけたら嬉しいですね」。
1回戦から中1日。前日は腰の痛みのため1球もボールを打つことなくこの日を迎えたという、この後は勝ち進めば準々決勝、準決勝、決勝まで3日間の連戦となる。
プレーを本来の質まで引き上げながら、コンディションも維持するという「難題」に、来月29日に36歳を迎える「日本の至宝」は立ち向かっている。
6ブレーク奪取
世界トップに君臨した本人にしてみれば、納得いかない試合だろうが、2日前の1回戦に比べれば、格段の出来だった。
第1セットは4ゲーム連取でのスタート。その後、4ゲームを落としたが、バックのスライス、ネットプレーなど、明らかに自らのプレーの確認に専念している時間帯だった。
4-4から2ゲームをあっさり奪い、第1セットをモノにすると、第2セットもブレークスタート。全く危なげなく勝利に突き進んでいった。

自らも2ブレーク許したが、リターンゲームで格の違いを見せつけるプレーを連発。
2セットで6ブレークを奪う圧勝劇だった。
フットワーク&フォア光る
動き自体は、コンディション不良をあまり感じさせなかった。
細かい鮮やかなステップで回り込み、
持ち味の伸びのあるフォアハンドストロークの強打を繰り出した。
第1セット13本、第2セット15本の計28本のウィナー。
| 錦織の全ウィナー 丸数字はゲーム数、S=サービスゲーム、R=リターンゲーム | |||
| 第1S | 起点 | 結果 | |
| ① | R | フォア | 8球目バックボレー |
| ② | S | フォア | 5球目バックボレー |
| ② | S | サーブ | 3球目フォアストレート |
| ② | S | バック | 15球目バックドロップ |
| ② | S | フォア | 7球目フォア逆クロス |
| ③ | R | バック | 6球目フォア回り込みストレート |
| ④ | S | フォア | 5球目フォアクロス |
| ④ | S | サーブ | 3球目フォア逆クロス |
| ⑥ | S | フォア | 7球目フォアドロップ |
| ⑨ | R | フォア | 6球目フォアストレート |
| ⑩ | S | フォア | 5球目フォア逆クロス |
| ⑩ | S | フォア | 5球目フォア逆クロス |
| ⑩ | S | フォア | 5球目ネット前でフォア叩く |
| 錦織の全ウィナー 丸数字はゲーム数、S=サービスゲーム、R=リターンゲーム | |||
| 第2S | 起点 | 結果 | |
| ① | R | バック | 4球目バックストレート |
| ① | R | ー | フォアストレートリターンエース |
| ② | S | フォア | 5球目フォアクロス |
| ② | S | サーブ | 3球目フォアクロス |
| ③ | R | ー | フォアクロスリターンエース |
| ④ | S | フォア | 5球目フォアクロス |
| ④ | S | サーブ | サーブ&クロスのバックハイボレー |
| ④ | S | ー | センターへノータッチSエース |
| ④ | S | ー | ワイドへノータッチSエース |
| ⑤ | R | バック | 12球目バックストレート |
| ⑤ | R | フォア | 4球目フォア逆クロス |
| ⑤ | R | ー | フォアストレートリターンエース |
| ⑥ | S | ー | センターへノータッチSエース |
| ⑦ | R | フォア | 6球目フォアドロップ |
| ⑦ | R | フォア | 6球目フォアドロップ |
ウィナーの内訳は
サービスエース3本
リターンエース3本
ネットプレーで3本
ストロークウィナーが19本。
19本のうち16本までがフォアでのフィニッシュだった。
ウィナーに至る前、相手を追い込むことになった
「攻撃の起点」のショットも圧倒的にフォアが多かった。
1回戦より、ペースアップしたラリーの打ち合いを、臨む意図があったのだろう。
その精度、フォアの連続攻撃の威力の高さは、やはりチャレンジャーレベルでは別格だった。
3本あったフォアのドロップショットも1本前のフォアで完全に追い込み、どうとでもできる状態からのフィニッシュだった。
フィジカル不安抱えての戦い
錦織のフォアのレベルなら、このクラスのストローク勝負では1、2本の強打で簡単にウィナーを奪えてしまう。
だが、今後、錦織が本当に相手としたいのは、超トップのストローカーたち。
その「壁」を崩すには、もっともっと肉体を酷使する。5本、7本、9本と打ち続けなければならない。
軽めの2試合でフィジカルが悲鳴をあげるようでは、その舞台に戻るのは容易ではないと、誰よりも知っているのが、世界トップで戦ってきた錦織なのだろう。
8月のATP1000シンシナティ・オープンでは3カ月ぶりの復帰戦も初戦敗退。そしてすぐに故障が再発した。上昇と後退を繰り返す日々に耐えるしかない。
だからこそ、勝利にも表情は浮かない。
次戦は内田海智
しかし、2025年シーズンラストにわざわざ戻ってきた貴重な国内試合だ。
準々決勝は世界288位、第8シードの内田海智(31歳)との顔合わせになる。
「楽しみですね。海智とは昔から知ってる仲ですし、IMGのフロリダでも一緒に練習したり切磋琢磨しながら成長してきた仲間なので対戦できるのは楽しみです」。
錦織はこの時ばかりはハッキリと前を向いた。
錦織が次戦、準決勝と勝ち進めば、ボトムハーフに残るのはすべて日本選手。
サンティラン晶対楠原悠介、内山靖崇対坂本怜。
決勝は必ずこの4選手のうちの誰かと対戦する。
坂本を始め、みなが目標としてきた錦織圭を、真剣勝負の舞台で「体感」したくて、さぞウズウズしていることだろう。
観衆だけでなく、日本のトッププロたちが、錦織のプレーをまだまだ見たいと思っている。




