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伊藤あおいの試合予定と結果は

小田凱人 革命的スーパーポイント4強

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全米オープンの男子車いすテニスのシングルス準々決勝が9月4日、行われ、第1シードの世界1位、小田凱人(19歳)が世界15位のセルゲイ・リソフ(21歳=イスラエル)を撃破した。スコアは6-3,6-2。試合時間1時間12分。

これで全米オープン初のベスト4入り。

19歳4カ月でのゴールデンスラム達成へ、残り2勝とした。

小田の全グランドスラム成績
全豪全仏ウィン全米
2025準V優勝優勝
2024優勝優勝SF
2023準V優勝優勝1R
2022SFQFQF
通算10勝
2敗
15勝
1敗
9勝
2敗
2勝
2敗
※2024年パリ・パラリンピック シングルス金メダル、2024年全米はパラと同年のため不開催

小田が「『こいつやべーな!』と驚かれたいです」と公言して臨む大会。

普段は当方、データコラムを謳っているつもりだが、今回はもうデータは関係ない。

「僕が一選手として車いすテニス界の変化の中心にいたいと少し前から思っています。30~40年後に振り返ったときに、2024~2025年に車いすスポーツがガラッと変わったなと思ってもらいたいです」

そんな言葉通りに、まさに車いすテニス界に「革命」を起こしているスーパーポイントを、どうしても記しておきたくて書く。

なぜもっと映像を流してくれないのか。使用権がないのが、本当に残念だ。

第1セットを6-3で先取。第2セット最初のゲームで衝撃的なシーンが起こった。

第2セット 0-0 相手サーブ 40-40

リソフがワイドへナイスサーブ

小田はバックで何とかフレームショット気味に返球

そのままネットダッシュ

リソフは狙いすましたフォアの強打

ダウン・ザ・ラインを読んだ小田はフォアのローボレー

見事なクロスボレーウィナー

見事なチェアワークで、まさに流れるようなネットプレー。

凄まじいスピード感、これほど鮮やかに決まるボレーはそうそうお目にかかれるものではない。

「フェデラー級」と言って決して大げさではない。

余韻に浸るまもなく、小田は続けざまに素晴らしいプレーを見せた。

第2セット 0-0 相手サーブ AD小田

リソフがボディー気味へナイスサーブ

小田はフォアスライスでクロスにブロックリターン

リソフはバックのスライスで見事なショートアングルへ

小田は2バウンドさせて低いフォアスラでダウン・ザ・ラインへ

リソフも2バウンドで何とか返球

ネットに詰めた小田はバックのハイボレーで見事なウィナー

2バウンドが許される車いすテニスでは通常、ワンテンポの間があるもの。だが、このポイントでは2バウンドであることを完全に忘れさせる、ハイテンポな攻防だった。

特に小田が2バウンドさせて打ったフォアスラは、クロスかクロスドロップと見せかけた後、ワンテンポ遅らせてストレートへ。さらに、弾道は低い、滑る、外に逃げるサイドスピンがかかる、の三拍子そろったもの。

両者のパワーあふれるショットに注目が集まっていたが、

リソフはスライス1本で、もはや決められるしかない状況にまで追い込まれた。

スーパープレー2本で小田は大事な第1ゲームでブレーク成功。一気に主導権を握った。

第3ゲームで迎えたブレークポイントでも魅せた。

第2セット 2-0 相手サーブ 0-40

リソフがアドサイドのワイドへナイスサーブ

小田はフォアクロスで深いナイスリターン

リソフはバックのスライスで見事なショートアングルへ

小田は2バウンドさせてアレー外からフォアのムーンボール

なんとこれがアプローチショット

バックの高い位置で取らされたリソフはうまくスライスで沈めるが

ネットに詰めた小田がなんなくフォアのハーフボレーでドロップウィナー

相手がスライスのショートアングルを放った時点で、

小田のポジションはサービスライン横のダブルスラインの外側にまで追い出されていた。

今までの車いすテニスはおろか、健常者テニスでもここからネットに出ようというのは、かなり難しいはずだ。

ショット選択としてはダウン・ザ・ラインにポール回し気味のウィナーを狙うか、一か八かのショートクロス。だが、小田はクロスコーナーに時間を稼ぐボールをあえて送り、ネットへ出た。

いわば車いす界の「スニークイン」だ。

誰も想像できない、今まで見たことのないショットメークだった。

小田のリードが広がった4-1。自らのサーブ、ここでも小田のギアは上がった。

第2セット 4-1 小田サーブ 0-0

セカンドサーブをリソフがストレートへリターン

小田のフォアはコードボールに

リソフは浅くなった球をバックでストレートへ攻撃

左利きの小田は自らのフォア側に車いすを動かしていたが

反転して戻り片手バックでクロス

凄まじいトップスピンがかかったボールはコーナーへ

リソフが全く動けないウィナーに

コードボールを攻められた時点で小田のポジションは、アドバンテージコートのバックフェンス前付近。しかも逆をつかれている。ここから車いすを反転させ、デュースコートへ動き、さらに振り向きざまにバックハンドを放ったのだ。

ベースラインまで3メートルはあろうかという最深の位置だ。

モニター画面に完全に消えた場所から通常のクロスの3~4割は長いだろう距離を撃ち抜いた。

まさか攻撃的なショットは来ないだろうと、リソフがチェアを固定しに反転した時には、

もう小田のボールは、はるか横を通り過ぎていた。

いやはや、本当にどういう威力なのだ。

「ワウリンカ級」と言って決して大げさではない。

もう完全に勝利が見えた小田最後のサービスゲームでのショットも、衝撃的だった。

第2セット 5-2 小田サーブ 30-30

小田はデュースサイド、Tゾーンへナイスサーブ

リソフのバックの逆クロスへリターンはコードボールに

小田は2バウンドさせ振り向きざまのバックのショートアングル

コート外に大きく追い出されたリソフは逆転を狙ったフォアクロス強打

小田はベースライン中に入り込んで

バックのライジングで超高速カウンター

センター付近のボールにリソフは触れずノータッチウィナーに

リソフがフォアのクロスカウンターで逆転を狙った時点、小田のポジションはベースラインより前方1メートル付近。リソフのボールはベースラインから1.5メートルほどの素晴らしい位置に、素晴らしい威力で突き刺さっていた。

それを小田は、なんと前方に出ながらライジング。

超コンパクトなフラットで、逆に相手コートに突き刺してみせた。

通常なら後退するか、せいぜいスライスで逃げるところだろう。

なんというテクニック、発想力。

もう驚きしかない。大きな拍手を送る観客も、驚がくの表情を浮かべていた。

最後に申し訳ない程度のデータを付けておこう。

マッチ通算のネットポイント確率11/16、68.8%。

特に第2セットのポイント確率9/12、75%。

これはもう車いすを使っていないテニスに匹敵する、いやそれ以上の数字である。

小田のゴールデンスラムを突き進むにふさわしいプレーは、枚挙にいとまがないほど、数々あった。

ベスト4が決まったトーナメントも、全員シード選手、世界1~4位が並ぶ、理想的な展開となった。

次戦、小田の準決勝の相手は世界3位のマーティンデ・ラ・プエンテ(26歳=スペイン)。

対戦成績は小田の13勝2敗だが、ハイレベルな応酬が見られるのは間違いない。

残り準決勝、決勝の2試合。

勝ち負けはもちろんだが、それ以上に、

同じ時代に生きながら、車いすテニス界に「革命」を起こす小田の「進化」を見逃すのは、本当にもったいない。

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ABOUT ME
テニスうどん
テニスうどん
駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
WOWOW、U-NEXT、ATP、WTAの配信も利用させていただいています。
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