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伊藤あおいの試合予定と結果は

小田凱人 驚異の進化 全仏3連覇

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男子車いすテニスの世界ランク1位、小田凱人(19歳)が全仏オープンでシングルス3連覇の偉業を果たした。6月7 日、パリで行われた同2位の宿敵、A・ヒューエット(27歳)との決勝戦に挑み、試合時間1時間39分、6-4,7-6(6)のストレートで倒した。

全仏での3連覇は2007年から2010年にかけて4連覇した国枝慎吾以来、15年ぶり2人目の快挙となった。

全仏オープン車いす男子シングルス2連覇以上
4連覇国枝 慎吾日本2007~2010
3連覇小田 凱人日本2023~2025
2連覇ステファン・ウデフランス2012~2013
国枝 慎吾日本2014~2015
A・ヒューエットイギリス2020~2021

簡単な試合ではなかった。

第1セット4-2リードから2ブレークを許し4-4。そこから第9ゲーム、ヒューエットのサービスゲームをラブゲームでブレーク。続く第10ゲームをキープして6-4でモノにした。

第2セットも先に1ブレークアップで5-4。自らのサービス第10ゲームでマッチポイントを迎えたが、しのがれてブレークを許す。しかし、5-5で迎えた第11ゲームのリターンでも4連続リターンウィナーでブレーク。

続く第12ゲームもブレークされて、タイブレークにもつれ込んだが、2本のリターンウィナーを決めて8-6で奪い、ストレートで勝負を決めた。

全仏決勝両者のポイント内訳
小田 凱人ヒューエット
83トータルポイント68
41ウィナー26
31アンフォースドエラー13
11フォースドエラー29

ウィナー数はヒューエット26本に対して41本。

自ら攻め込んだアンフォースドエラーの数では13対31と劣ったが、相手から攻撃された際のフォースドエラーは11対29と圧倒した。

それだけ小田がゲームを支配し続けた証拠だった。

小田の勝因となったのは、間違いなくリターン力の差だ。

41本のウィナーのうち、リターンウィナーは実に19本を占めた。

うちバックが12本。うち10本が相手のファーストサーブに対してのモノだった。

第1セット 小田のリターンウィナー10本
GカウントS球速FBコース
0-01st134kmバッククロス
30-152nd119kmバックストレート
50-01st138kmフォアストレート
0-152nd121kmバックストレート
0-301st144kmバッククロス
70-152nd122kmバックストレート
0-301st137kmバッククロス
90-02nd118kmフォアストレート
0-151st130kmバックストレート
0-301st106kmバッククロス

第2セット 小田のリターンウィナー9本
GカウントS球速FBコース
15-151st141kmバッククロス
530-152nd106kmフォアストレート
940-402nd111kmフォアストレート
110-02nd125kmバックストレート
0-151st128kmバックストレート
0-302nd130kmフォアストレート
0-402nd119kmバック逆クロス
TB2-11st127kmフォアクロス
4-31st129kmフォアストレート

怒涛の連続攻撃で、ヒューエットにプレッシャーをかけ続けた。

第1セット第5ゲーム、同7、9ゲーム。第2セット第11ゲームと、いずれも大事な場面でリターンエースを集中。

ストレートリターンでポイントを奪った後、最後は相手を嘲笑うかのように決定的な一打をクロス、逆クロスに決めきった。

あの元王者ヒューエットが全く動けず、あるいは逆方向に車椅子を動かし始めた後、諦めの表情でボールを見送った。

そのたびに、会心のショットを放った小田が大きな雄叫びをあげた。

ヒューエットは決してサービス力の弱い選手ではない。1回戦で7本、準々決勝で5本、小田との決勝でも6本のサービスエースを奪っている。

過去小田が3連覇した決勝の相手と小田のサービス球速を見てみる。

2023年と今年がヒューエットとの対戦。2年前のヒューエットはセカンドサーブのアベレージが113kmだったが、今年は120kmと7kmもアップさせている。

しかし、小田は、といえばどうだ。

2023年のセカンドアベレージ118kmから129kmと11kmもアップ。

セカンドサーブの最速も131kmから143kmと12kmも上げている。

全仏オープン車いす男子シングルス決勝 相手のサービス球速
年度選手名1st
Max
2nd
Max
2nd
Ave
2023A・ヒューエット136km127km113km
2024G・フェルナンデス139km120km105km
2025A・ヒューエット145km133km120km

全仏オープン車いす男子シングルス決勝 小田のサービス球速
年度選手名1st
Max
2nd
Max
2nd
Ave
2023小田 凱人151km131km118km
2024小田 凱人166km144km125km
2025小田 凱人158km143km129km

サービスの進化も追いつけず、リターンの差も開く。

ヒューエットにしてみれば、自分がサーブ&リターンを磨いても磨いても、小田がその上を行くという心境だろう。

小田は19本のリターンウィナーに加えて、ヒューエットの3本目のフォースドエラー16本を引き出している。

リターンから合計35本ポイントを奪った。

対してヒューエットはリターンウィナー9本と小田のフォースドエラー8本の計17本だけ。

両者のポイント差は実に18本。

この差が両者のトータルポイント15本の差に、そのまま反映されている形だ。

小田が目標に掲げた赤土仕様の「超攻撃型テニス」は、まさに異次元の領域に突入している。

パリでの連勝は17にまで伸びた。2022年6月、16歳で初めて出たグランドスラム、全仏準決勝で国枝慎吾に敗れて以来、パリ・パラリンピックを含めて丸3年、負けていない。

2022年全仏オープン 小田の車いす男子シングルス成績
回戦対戦相手スコア
1回戦⚪️N・ペイファー6-1,6-3
準々決勝⚪️G・リード6-1,6-4
準決勝⚫️国枝 慎吾2-6,1-6
2023年全仏オープン 小田の車いす男子シングルス成績
回戦対戦相手スコア
1回戦⚪️荒井 大輔6-1,6-4
準々決勝⚪️R・スパールハレン6-2,2-6,6-4
準決勝⚪️M・デ ラ プエンテ6-2,7-6(6)
決勝⚪️A・ヒューエット6-1,6-4
2024年全仏オープン 小田の車いす男子シングルス成績
回戦対戦相手スコア
1回戦⚪️R・スパールハレン7-6(7),6-2
準々決勝⚪️T・エフベリンク6-1,6-4
準決勝⚪️三木 拓也6-1,6-1
決勝⚪️G・フェルナンデス7-5,6-3
2024年パリ・パラリンピック 小田の車いす男子シングルス成績
回戦対戦相手スコア
2回戦⚪️B・バートラム6-2,7-6(4)
3回戦⚪️D・ロドリゲス6-0,6-1
準々決勝⚪️T・エフベリンク6-4,6-1
準決勝⚪️G・フェルナンデス6-2,7-5
決勝⚪️A・ヒューエット6-2,4-6,7-5
2025年全仏オープン 小田の車いす男子シングルス成績
回戦対戦相手スコア
1回戦⚪️S・ウデ6-3,7-5
準々決勝⚪️D・カベルサスチ6-2,5-7,6-0
準決勝⚪️M・デ ラ プエンテ6-4,6-4
決勝⚪️A・ヒューエット6-4,7-6(6)

▶rolandgarros公式インスタグラムより

勝利の瞬間、小田の代名詞となったギターリストポーズで喜びを表した後、優勝スピーチでは「この大会で10連覇を目指して頑張ります」との言葉で締めくくった。

7年後、まだまだ油の乗った26歳。連勝は45にまで伸びている計算だ。

ただの勝ち負けの問題ではない。緩やかなペースに見えた、車いすテニスの「常識」が刻々と変わっていく。

その時、小田が、どんな領域にまで、世界トップのスタンダードを引き上げているのか、本当に楽しみでならない。

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テニスうどん
テニスうどん
駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
U-NEXT、WTAのテニス配信も利用させていただいています。
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