伊藤あおい復帰戦の相手は予選上がり選手
モナスティル第1シード
腰椎疲労骨折のリハビリを終えた伊藤あおい(21歳)の復帰大会のドローが発表された。
ITF W35「マジック・ホテル・ツアーズ・バイ・FTT」(3月2~8日=チュニジア・モナスティル#10)大会の組み合わせが決まり、伊藤あおいは第1シードとして登場することが正式に決まった。
1回戦の相手は予選上がりの選手。勝てば、2回戦で、世界381位サンドラ・サミール(28歳=エジプト)と世界445位ルー・ジャージン(36歳=中国)の勝者と当たる組み合わせとなった。
ダブルスにもベク・ダヨン(28歳=韓国)と組んで出場予定。ダブルス1回戦は3月3日に組まれており、伊藤のシングルス出場は4日以降と見られる。(※チュニジアと日本の時差は8時間)
最長ブランク明け
伊藤にとっては2025年8月22日の全米オープン予選決勝以来、
6カ月ぶりの実戦。
昨シーズンは8月18日時点でキャリアハイ82位をマークする大躍進の年だった。
2026年のシーズン初戦。
そして2022年4月のプロ転向後、最長のブランク期間を経ての復帰戦となる。
伊藤をデータを中心に、いくつかシングルスの観戦ポイントをピックアップしてみよう。
勝率7割超えのグレード
伊藤がW35以下の大会に出場するのは2024年11月の浜松以来。
海外で、となると、同年5月の韓国・昌原以来。
同レベルの勝敗は80勝33敗。勝率7割を超えている。
当然、W100以下、WTA125、250、500とグレードが上がるごとに勝率がきれいに下がっているが、不思議なことに
ハイレベルなはずのWTA1000だけが、勝率7割(予選を含む)と突出している。
| 伊藤あおいのグレード別の勝敗と勝率 | ||
| グレード | 勝敗 | 勝率 |
| W35以下 | 80勝33敗 | .708 |
| W40~100 | 73勝38敗 | .658 |
| WTA125 | 5勝3敗 | .625 |
| WTA250 | 5勝5敗 | .500 |
| WTA500 | 0勝1敗 | .000 |
| WTA1000 | 14勝6敗 | .700 |
| GSM | 2勝4敗 | .333 |
| 通算 | 179勝90敗 | .665 |
| ※2026年2月末時点、すべて予選を含む、WTA1000本戦は4勝5敗、GSMは0勝1敗 | ||
自分より上位に勝率7割
伊藤は自らの試合結果について「ランキング上位の選手に勝つ確率の方が高くて、下位の選手に勝つ確率の方が低い」と不思議がるように語っている。
その言葉を、実際の2025年シーズンデータで確認してみよう。
| 2025年 伊藤あおい自分よりランク上位対下位の勝率 | ||
| ランク | 勝敗 | 勝率 |
| 自分より下位 | 18勝14敗 | .563 |
| 自分より上位 | 10勝7敗 | .700 |
| 通算 | 28勝21敗 | .571 |
| ※2026年2月末時点、すべて予選を含む、WTA1000本戦は4勝5敗、GSMは0勝1敗 | ||
自分よりランク下位に対しては18勝14敗だが、上位に対して10勝7敗。
伊藤の発言は、「下位や上位との対決にあまり差がない」という意味の例え話でもなければ、「上位の方がやりやすい」という意味で言った感覚的な部分でもなかった。
実際に自分より上位相手の試合の勝率は7割!
下位相手の5割6分3厘より、なんと1割3分7厘も上回っている。
| 2025年 伊藤のランク上位者からの勝利とランキング差 | |||
| 選手名 | 相手R | 伊藤R | 差 |
| J・パオリーニ | 9 | 110 | 101 |
| A・クルーガー | 40 | 116 | 76 |
| A・パブリュチェンコワ | 33 | 94 | 61 |
| V・グラチェヴァ | 71 | 120 | 49 |
| N・P・ディアス | 91 | 126 | 35 |
| T・タウンゼント | 82 | 116 | 34 |
| E・リス | 76 | 106 | 30 |
| E・G・ルース | 66 | 94 | 28 |
| A・ボンダール | 92 | 120 | 28 |
| K・ヴォリネッツ | 108 | 110 | 2 |
| ※ディアス戦のみWTA125、それ以外はすべてWTA1000大会 | |||
相手のランキングは上位であればあるほど、焦りを誘って「沼」にハメやすい証拠なのかもしれない。
今大会は自分が最高位
現在、伊藤の世界ランキングは200位台まで落ちているが、今大会のエントリー時点では、出場選手の中では唯一の100位台、167位でのエントリー。
2位は264位とは、100位近く離れていてる。
当然、今大会に自分よりランキングの高い選手は1人もいない。
向かってこられる立場として、長期ブランク明けの試合を戦わなければならない。
「ジャイアントキラー」「アップセットメーカー」の伊藤にとっては、この点がどう働くのか?
勝敗より調整の確認が大事
とはいえ、腰の疲労骨折からの復帰戦。
最優先すべきは自らのコンディション調整だ。
勝敗はあくまで度外視しなければならない。
ここからはフィジカル的に気になる部分を見ていこう。
注意点①故障箇所の回復具合
やはり最注目点は、どこまで患部そのものの状態が回復しているか。
長期療養という決断をする前の数試合は、腰にベルトを巻き、ポイント間やコートチェンジの際に、痛む部分を押さえる姿が目立った。
特にサーブ時、そしてフォア、両手バック、フットワークでの切り返し時。ほとんどのプレーに影響が出る箇所だ。
患部を固定し、動かさないことが最も優先される治療法で、完治は症状によって一般的に3~12カ月と言われる。
当然ドクターの許可を得ての復帰だが、
実戦で従来通りの動きができるかどうか、
いざ真剣勝負で激しくプレーした際に、恐怖感は出ないのか。
きっちりと確認しながらのプレーが必要となる。
無理して再発だけは避けなければならない。
注意点②実戦的スタミナ
自ら「筋トレ嫌い」を公言するほど、そもそもフィジカルには自信を見せない伊藤。
当然、患部にそれほど影響の出ないトレーニングから積んできているだろうが、スタミナ面はどうか。
どんなプロ選手でも長期リハビリ明けは、トレーニング時には出なかった疲労感や筋肉痛が発生すると言われる。
試合でしか、なかなか積み上げられない部分が
どこまで回復できているのか。
本人も陣営も、しっかりと判断しなければならないだろう。
注意点③勝負師としての感覚
どのトップ選手もそうだが、その中でも特に伊藤は
広い周辺視野で、相手とボールの両方を見て戦術を決めることができるプレーヤー。
「結構、細かいことをやっている」と本人が言うように、フォアスラや、バックのカウンター、スニークインなど、
武器のほとんどが、相手の反応を見て瞬時に判断するプレーだ。
『タイミングが命』というスタイル。
大事なポイントで最高のショットを放ったり、勝負どころを察知してギアチェンジできるか。
いわゆる「試合勘」「勝負勘」と言われる、この要素もまた、同レベルのプレーヤーと対峙してこそ、確認できる部分だ。
フィジカルだけでなく、いわばメンタル面の「スタミナ」も、どこまで回復できているか?
麻雀、オセロなど相手があっての勝負事が大好きな伊藤のこと。
もしかしたら休息中に、新たな「沼パターン」を思いついているかもしれない、という期待感も抱かせてくれる。
翌週も同大会にエントリー
伊藤は今回の復帰戦の後、
翌週も3月9日から始まる同じモナスティル大会にエントリーしている。
こちらは大会第2シードとなる予定。
今回は連戦後の体の反応を見る意味で、両大会とも1回戦負けはできれば避けたい。
それぞれ数試合ずつは経験したいところだろう。
第1、2シードだと多い初戦負け
ちなみに2025年、伊藤がメーンドローの第1シード、もしくは第2シードだった大会は6大会。
うち2大会で準優勝しているが、4大会は初戦負け。
これも不思議なほど、両極端な結果だった。
復帰戦の今回はどうか。
| 2025年 伊藤の第1,2シードでの出場大会と結果 | ||||
| S | 月 | グレード | 大会名 | 結果 |
| ① | 7月 | W125 | ポルト | 1回戦負け |
| ① | 7月 | W50 | コロイオス・セイシャル | 準優勝 |
| ② | 6月 | W75 | ザグレブ | 1回戦負け |
| ① | 4月 | W100 | 岐阜カンガルー | 1回戦負け |
| ① | 4月 | W100 | 安藤証券 | 準優勝 |
| ① | 3月 | W50 | サントドミンゴ | 初戦負け |
| ※S=シード順、サントドミンゴは1回戦不戦勝で2回戦負け | ||||
チュニジア遠征後は株塾甲府国際オープンテニスにエントリーしている。
| 株塾甲府国際オープンテニス日程 | |
| 予選 | 2026年3月15日(日)〜16日(月) |
| 本戦 | 2026年3月17日(火)〜22日(日) |
| 場所 | 山梨学院 横根テニス場 |
その後のスケジュールに関しては、テクニカルとフィジカルの両面、今後のランキング状況、スペシャルランキングの使い方などを鑑み、総合的に判断することになるのだろう。
少しでも早くWTAツアー、グランドスラムで、ランキング上位の強打をいなすプレーを見てみたいのは山々だが、まずは静かに。
自称「へにょへにょテニス」の今に、注目しよう。




