宮澤紗希乃 U14欧州王者破り8強


ベスト8ただ1人の13歳
ウィンブルドンU14覇者・宮澤紗希乃(13歳)がヨーロッパ王者を破ってベスト8を決めた。
9月18日、J200ジャパン オープン ジュニア(兵庫・三木)2回戦に臨み、第8シードのミーガン・ナイト(14歳)と対戦。4-6,6-,6-1のフルセットで逆転勝利した。
15~18歳がほとんどのジュニア大会で
最年少、13歳でただ1人、準々決勝進出に駒を進めた。
相手はヨーロッパ王者
宮澤は2011年10月27日生まれ。
相手のナイトも同じ2011年2月1日生まれ。
日本の学年に直すとナイトが1学年上になるが、
こちらもすでに大きく「世代」を飛び越えた逸材だった。
2024年10月、ヨーロッパ・ジュニア・マスターズ(14歳以下)で優勝。
同大会はヨーロッパのジュニアテニスの年間ツアーで、最も成績優秀な選手だけが出場できるシーズン最終戦。いわばATPファイナルズやWTAファイナルズのジュニア版。
男子では2000年ラファエル・ナダル、2011年アレクサンダー・ズベレフ。女子では1997年キム・クライシュテルス、2009年ベリンダ・ベンチッチと、多くの優勝経験選手たちがプロで成功を収めている、ヨーロッパで最も権威があると言っていい大会。
その大舞台で13歳ながら年上をなぎ倒し、頂点に立ったイギリスの若き新星が相手だったが、
勝ったのはウィンブルドンU14覇者、日本期待の宮澤だった。
▶「TennisEurope」YouTubeより ナイトのヨーロッパJrマスターズ決勝
精度の高いドロップで逆転
身長170センチは超えようかというナイトと、162センチの宮澤の体格差は明らか。
第1セットは長い手足を活かしたナイトの強烈なサーブ、ストロークの前に4-6と落とす。
だが、第2セット以降は、宮澤の精度を増したドロップショットが面白いように決まりまくる。
ただのドロップではない。
フワリと一旦浮き上がった後、バックスピンで自陣に戻って来るような軌道。さらに相手から逃げていくように左右のサイドスピンがかかっている。
さすがに鍛え上げられたナイトは何とか追いつく。
だが、長い手足も邪魔になってか、スライス面で返す体勢にしかならない。
それほど、宮澤のショットは自由自在にコントロールされていた。
ボレーVSボレーでポイント
宮澤が3セットで繰り出したドロップの数は実に32本。
攻撃的なショットで相手を後ろに後退させた後、一気にスローダウンさせたドロップを打つ。
繰り出すタイミングが完璧なのだ。
さらに、わずかに山なりのテンポの遅いドロップが空中にとどまっている間に、キッチリと最適ポジションにまで詰めている。
その動きがまた、何とも素早い。
1本のドロップで決めようとすればネットミスも増える。
だが、取れはするが、攻撃できない絶妙なゾーンに、執拗に落とし続けた。
そして得意のボレーボレー合戦に持ち込み、ポイントを奪うのは、宮澤だった。
相手のパワーを封じ、俊敏性を活かせる自分の得意な土俵に持ち込む。
体格差を補って余りある、世界で戦っていくために考え抜かれたプレーだった。
動じないメンタル
第2セットは3-3から3ゲーム連取。
勝負どころのポイントでは、このドロップショットと積極的なネットプレーが当たり前のように絡んでいた。
第3セットも宮澤が特にフォアのクロス、逆クロスと打ち分けるドロップショットでポイントを重ね3-1リード。
第4ゲームをブレークされて落としたナイトはコート上で涙をこらえ始めた。
前後の動きばかりを強いられ気持ちよくストロークの強打を打たせてもらえない。一体どうしていいのか分からない。そんな気持ちだったのだろう。
宮澤の「沼」にどっぷりとはまり込んでいた。
ウィンブルドンU14決勝で、ソフィア・ビエリンスカ(ウクライナ)がタオルで顔を覆ったのと同じような光景だった。
そんなやりにくい空気の中でも、宮澤は自らに語りかけるように「集中!」と声を出し、迷わず勝利へと突き進んでいった。
相手が破れかぶれと思われるような強烈なリターンを繰り出しても、
低い姿勢と高い集中力でことごとく返球した。
終わってみれば6-1。
メンタル面でも上回ったのは13歳の宮澤の方だった。
前回敗戦の雪辱
宮澤はナイトと対戦経験があった。
2024年6月、レクサス・ジュニア・インターナショナルのレインズパーク2回戦(芝)で対戦。
3-6,6-3,2-6のフルセットで敗れていた。
今回見事に雪辱を果たした。
その後、ナイトはヨーロッパ・ジュニア・マスターズを制覇。
2025年4月には16歳以下のレクサス・ジュニア・ナショナル・チャンピオンシップで優勝。14歳で16歳以下のイギリス王者になった。これでウィンブルドン・ジュニア本戦へのワイルドカードを獲得。本戦1回戦で敗れたが、宮澤が出場したU14を飛び越え、14歳にしてジュニアと堂々と渡り合っていた。
2025年6月にはWTA250イーストボーンの予選にワイルドカードで出場。なんと14歳でプロの大会に挑んだ。予選1回戦の相手は当時世界75位、キャリハイ50位のアンナ・ボンダール(28歳=ハンガリー)。
14歳で14歳年上相手に挑んだ試合のスコアは4-6,2-6。
敗れはしたが、イギリスのナイトに対する、とんでもない期待の大きさがわかる。
背負っているものの重さに、試合中に涙を流すのも無理なかったかもしれない。
そんな相手にも飄々と勝ってしまうのだから、13歳の宮澤は、やはりすごい。
次戦は5歳年上
次戦、準々決勝の相手はリアナ・アラメ(18歳=オーストラリア)。2007年8月21日生まれ。
宮澤の5歳年上になる。
わかりやすく日本にあてはめれば中学2年生が高校3年生に挑む図式だ。
ベスト8に残った選手は全員16歳以上。
J30の大会では3大会を制している宮澤だが、J200以上の大会では優勝経験はない。
フォアの強打、バックのダウン・ザ・ラインとも、ウィンブルドンU14よりも力強さは確実に増していた。
ダブルスでも第1シードを破りベスト4進出。
どこまで勝ち上がってしまうのか、その成長曲線が楽しみだ。


