伊藤あおい全米デビュー1勝


グランドスラム初勝利
世界ランク82位で予選第3シードの伊藤あおい(21歳)が8月19日、全米オープン予選1回戦に臨み、世界197位のアンナ・レナ・フリードサム(31歳=ドイツ)にフルセット勝利した。スコアは6-4,5-7,6-3。試合時間2時間14分。
伊藤の過去のグランドスラム大会は2025年6月のウィンブルドンこそ、メーンドローの繰り上がりで本戦1回戦出場を果たしているが、いずれも初戦敗退。
グランドスラム4度目の挑戦。
予選とはいえ、全米オープンのデビュー戦で、うれしいグランドスラム初勝利を挙げた。
試合開始前の選手紹介から勝利の瞬間まで大声援を浴び、アメリカでも人気急上昇なところをうかがわせた。
伊藤あおい 全グランドスラム成績 | ||||
2025年1月7日 全豪オープン | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚫️ | 石井さやか | 221 | 3-6,4-6 |
2025年5月20日 全仏オープン | ||||
予選1回戦 | ⚫️ | P・マルチンコ | 209 | 5-7,2-6 |
2025年6月30日 ウィンブルドン | ||||
1回戦 | ⚫️ | K・ラヒモワ | 80 | 7-5,3-6,2-6 |
2025年8月19日 全米オープン | ||||
予選1回戦 | ⚪️ | A・フリードサム | 197 | 6-4,5-7,6-3 |
第1Sは序盤劣勢から
1回戦の相手、フリードサムはキャリアハイ45位(2016年8月15日付け)。グランドスラム通算9勝17敗、2016年の全豪オープンではベスト16進出経験もあるベテラン。
序盤は強烈なストロークとサーブに押された。
第1ゲーム自らのサービスゲーム。5度のデュースの末、何とかキープに成功。
しかし、第3ゲームで先にブレークを許す。
相手にはキープを続けられゲームカウント2-4。
ここまでトータルポイントは「21」対「25」と劣勢だった。
伊藤あおいVSフリードサム 第1Sトータルポイント経過 | ||
伊藤 | 経過 | フリードサム |
21 | 第1S 2-4まで | 25 |
16 | 第1S 6-4まで | 6 |
37 | 第1Sトータル | 31 |
上がり4ゲームのあおい
だが、相手の得意、苦手ショットの分析が終わった、セット終盤4ゲーム。
ここからが「あおい沼」の真骨頂だ。
第8ゲームの相手サーブ、30-40。
何度も逆を付かれながら必死でフォアスラで逃れ、最後はバックのカウンター。ネットに出た相手のボールをベースライン外に弾き出し、ブレークバックに成功する。
焦る相手から次々とミスを引き出し、このセット、あっという間の逆転劇。
第7ゲーム以降、4ゲーム奪取。
相手がディフェンシブになった瞬間、果敢にネットに出て攻めた。
その間ポイント「16」対「6」と、10ポイント差を付けた。
結局、第1セットのトータルポイントは「37」対「31」。
「上がり4ゲームのあおい」は、やはり健在だった。
第2セット惜しくも逆転ならず
第2セットも似たような展開だった。
第1ゲーム、自らのサービスゲーム。3度のデュースの末、先にブレークを許す。
第6ゲームをブレークするも、第7ゲームでブレークバックを許し、3-5まで追い込まれる。
伊藤あおいVSフリードサム 第2Sトータルポイント経過 | ||
伊藤 | 経過 | フリードサム |
27 | 第2S 3-5まで | 31 |
12 | 第2S 5-7まで | 13 |
39 | 第2Sトータル | 44 |
76 | 第1, 2Sトータル | 75 |
第9ゲームを何とかキープ。
第10ゲームでは2度のセットポイントを逃れブレークに成功。
最後は鮮やかなフォアスピンのパッシングショットで5-5にまで戻す粘りを見せた。
だが、第11ゲームでこのセット3度目のブレークを許し、結局5-7で落とす。
ここまで第1、2セットを合わせた両者のトータルポイントは、
伊藤から見て「76」対「75」と熾烈な争い。
第2セットだけで54分。ストレート勝利を逃し、気落ちしてもおかしくないシーンだったが、
またここから伊藤がメンタルタフネスぶりを見せつけるのだ。

ファイナルセット序盤ラッシュ
そして迎えたファイナルセット。第1ゲーム、自らのサービスゲーム。3セット連続で長い第1ゲームになったが、今度は3度のデュースの末、キープ。
続く第2ゲーム、相手のサービスゲーム。15-30でフォアのロブ、抜かれた相手は股抜きショットで返すが、伊藤は鮮やかなドロップボレー。最後は見事なフォアスピンストレートからスマッシュで決めブレーク。
第3ゲームもキープと、イッキにゲームカウント3-0。
この間の両者のポイント数「15」対「8」と伊藤の圧勝。
伊藤あおいVSフリードサム 第3Sトータルポイント経過 | ||
伊藤 | 経過 | フリードサム |
15 | 第3S 3-0まで | 8 |
15 | 第3S 6-3まで | 14 |
30 | 第3Sトータル | 22 |
106 | マッチトータル | 97 |
その後は両者すべてキープ。ポイント数は「15」対「14」とほぼ互角。
伊藤は、ほぼファイナルセット序盤3ゲームの差だけで逃げ切った。
第2セット終盤からイッキに立ち直るところ、一瞬のスキをつき、ポイントラッシュで勝負どころを制していくところ。
各セットで見せたゲーム運びのうまさは、さすがだった。
勝つ術を知る
これで7月26日のナショナルバンクオープン予選から10試合を戦い、うちフルセットが7試合。
その7試合中6試合で勝利をモノにしている。
勝率8割5分7厘は驚異的だ。
その間には世界9位のジャスミン・パオリーニ(29歳=イタリア)をファイナル、タイブレークで撃破した大金星も含まれる。
やはり伊藤は「フルセットの鬼」、勝つ術(すべ)を知っている。
この日も、6度あったブレークポイントのうち5度をブレーク(成功率83%)。
逆に14度もあったブレークポイントは4度しかブレークさせなかった(成功率29%)。
10歳年上の巧みな相手の、さらに上を行った。
予選勝率7割超え
2回戦の相手は世界192位のギオマール・マリスタニー・ズレタ・デ・レアレス(26歳=スペイン)に決まった。

ITFツアー9度の優勝を誇るが、グランドスラム本戦は未経験。2024年の全米、2025年の全豪、全仏、ウィンブルドンといずれも予選敗退している。
突破へ闘志を燃やしてくると見られるが、
WTA1000の予選6大会に出場し、5大会で本戦インの実績でも分かるように、伊藤はツアーレベルの予選に滅法強い。
2024年の木下ジャパンオープン(WTA250)から、出場11大会のうち6大会で突破。
勝てなかったのは、先のグランドスラム2大会と、シンガポール250、アブダビ500、インディアンウェルズ1000の5大会のみ。
この日の勝利でWTAツアーの予選は13勝5敗。
勝率は実に7割2分2厘だ。
相手のマリスタニーはフォア、バックともテイクバックが大きいトップスピナーなだけに、伊藤のフォアスラが、かなり効きそうな相手でもある。
真の意味でのグランドスラム初勝利といえば、やはり本戦での勝利に他ならない。
あと2勝。伊藤の挑戦は続く。
