坂本怜 世界76位撃破 有明1勝


「人生で一番のプレー」
世界189位の坂本怜(19歳)がトップ100選手を完膚なきまでに叩きのめした。
9月22日、予選ワイルドカードで出場した木下グループ・ジャパン・オープンの予選1回戦に登場。世界76位で予選第6シードのアダム・ウォルトン(26歳=オーストラリア)と対戦し、6-2,6-4のストレートで見事勝利した。試合時間1時間24分。
「めちゃめちゃうれしいです。こんないいプレーができるとは自分でも思っていなくて」
「正直、人生で一番のプレーができたんじゃないかと思います!」
オンコートインタビューで喜びを素直に表現して、有明のセンターコートに詰めかけたファンを大いに沸かせた。
理想の第1セット
坂本の言葉通り、思い描いた通りの試合運び、プレーが出来た。
第1セット第1ゲーム、ウォルトンのサービスゲーム40-30。
24本のラリーの末、最後はボレーでポイント。デュースに持ち込んだ。
しつこいバックの打ち合いにしっかりと耐えて、得意のフォア、ネットで活路を見出す我慢のプレー。
試合前から想定していたという、強敵ウォルトン対策を完璧に遂行した。
ランキング下位とは思えぬドッシリとしたラリー戦で、ウォルトンは危機感を一気に高めたはずだ。
続けざま、わずかにディフェンシブになったウォルトンのスキをつくように、坂本が6ショット目をフォアで回り込みウィナー。
アドバンテージを手にしても坂本は、丁寧かつ、しつこかった。
再び10本の長いラリー。相手はたまらずドロップショットで逃れようとしたが、坂本はうまく処理して最後はスマッシュでブレーク成功。
第3ゲームもデュースの末、ブレーク。
序盤早々の2ブレークで、このセット6-2。

第2セットさらに加速
第2セットは坂本のサービスゲームの安定感がウォルトンの心を完全に折った。
セカンドセットのファーストサービスイン時のポイント獲得率は85%(11/13)、
セカンド時はなんと90%(9/10)。
ただでさえ完璧だった第1セットの86%(12/14)、56%(5/9)から、さらに数字を上げた。
マッチ通算 1stと2ndサービスポイントウォン | ||
坂本 | ウォルトン | |
85%(23/27) | 1st | 74%(25/34) |
74%(14/19) | 2nd | 35%(11/31) |
第1セット、ウォルトンがリターン時にポイント出来たのは6本だったが、
第2セットに至ってはわずか3本。
第1セット第6ゲームでデュースになった以外、ラブゲームキープ2度、6ゲームは1ポイントしか失わないサービスキープだった。
坂本サービスゲームでの失ポイント数 | |||||
第1セット | |||||
ゲーム | ② | ④ | ⑥ | ⑧ | |
ポイント | 1 | 1 | 3 | 1 | |
第2セット | |||||
ゲーム | ② | ④ | ⑥ | ⑧ | ⑩ |
ポイント | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 |
圧巻のラスト8ポイント
坂本のサービスゲームに全くスキがない。
第2セット4-4、ウォルトンサーブの40-15から
坂本が4連続ポイントでブレークしてしまうのも当然の流れだった。
- 10本目、相手の逆を突くフォアクロスウィナー
- 完璧な形で前に出たウォルトンをバックのスライス1本で逆転、ボレーウィナー
- 3球目攻撃で前に出たウォルトンのボディーを撃ち抜く強烈フォア
- バック攻めを食らうも14本目を完璧なダウン・ザ・ラインウィナー
さらにサービング・フォア・ザ・マッチの第9ゲームも、有明はどよめき続けた。
- 6本目ウォルトンバックのミス
- ウォルトン、坂本の強烈なバックへのセカンドサーブをロングアウト
- Tゾーンのセカンドサーブ、強烈に跳ねウォルトンはラケットにすら当てられず
- 角度あるワイドへのファーストでノータッチエース
強烈なフォアに、加わったバックの安定感。そして最良の角度とスピードを兼ね備えたファーストサーブに、精度と回転数を増したセカンドサーブ
この8連続ポイントは、坂本のポテンシャルの大きさを実感するには余りある衝撃だった。
過去最高位の選手撃破
過去、坂本のトップ100撃破は、2025年3月のATP1000マイアミ予選2回戦で当時世界95位だったジェームズ・ダックワース(33歳=オーストラリア)に7-5,7-6(5)で勝利して以来。
76位というのは、倒した過去最高位の選手となった。
有明での勝利はこれが初。
昨年の同大会は予選1回戦で当時世界88位のルカ・ナルディ(イタリア)に3-6,1-6でストレート負け。
先月の日本代表デビューを果たしたデビスカップのドイツ戦では、17歳のジャスティン・エンゲルに3-6,7-6(2),10-7で敗れていた。
3試合目でのメモリアル金星を飾るのが、日本のテニスの聖地、有明センターコートというのも「持ってる男」坂本らしい。
予選突破以上に上位進出
予選決勝の相手は世界93位のアレクサンダー・ヴキッチ(29歳=オーストラリア)に決まった。
こちらは予選1回戦で世界69位で第3シードのアレクサンダー・コバチェビッチ(27歳=アメリカ)を6-4,6-7(4),6-2のフルセットで倒しての勝ち上がり。
初顔合わせ、また100位内選手だが、坂本の1回戦の調子を見る限り、勝機は十分過ぎるほどある。
予選出場の日本選手は、内山靖崇(33歳)、清水悠太(26歳)、野口莉央(26歳)といずれも1回戦敗退。残すは島袋将(28歳)と2人だけになった。
「明日だけではなく、もっともっとこのコートでプレーできるように頑張りますので応援よろしくお願いします!」
初のジャパンオープン本戦では満足しない。
ATPツアー初勝利どころか、もっともっと上を狙っている心意気が、その言葉からヒシヒシと伝わってきた。