伊藤あおいWTA1000はや3勝


初勝利から11日で
また勝った! 世界110位の伊藤あおい(21歳)が8月7日、WTA1000シンシナティ・オープン1回戦に臨み、世界58位のエレナ・ガブリエラ・ルーセ(27歳=ルーマニア)を破った。スコアは6-2,7-6(6)。試合時間1時間46分。
2大会連続WTA1000の初戦突破だ。
前週の現地7月27日のナショナルバンク・オープン1回戦でWTA1000初勝利を飾ってから11日目で、はや3勝目。
もう金星とは呼ばせない。
勝利の瞬間、アメリカのファンから大きな歓声と拍手を浴び、自らもまるで観客の1人であるかのように、パチパチ拍手して「あおいスマイル」でハニかんだ。
5連敗後の3勝目
ツアー本格参戦1年目の今シーズン当初から
グランドスラム、WTAの本戦では5連敗だった。
やはり力の差はあるのかと思いきや、シーズン半ばも過ぎ、経験を積むことで、しっかりとトップのパワーとスピードに対応できるようになった。
あっという間の3勝。本人の自信に満ちた顔。もう大丈夫、間違いないと言っていいだろう。
「この独特のテニスがツアーレベルで通用するのか、どうか?」という、世間の疑問の声を、結果で見事に打ち消してみせた。
WTA1000 カタール・トータルエナジー・オープン 2月10日~2月16日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚫️ | J・オスタペンコ | 37 | 2-6,1-6 |
WTA1000 ドバイ・デュティーフリー選手権 2月16日~2月22日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚫️ | B・ベンチッチ | 65 | 0-6,2-6 |
WTA1000 マイアミ・オープン 3月17日~3月30日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚫️ | L・デイビス | 229 | 4-6,6-3,4-6 |
ウィンブルドン 6月30日~7月16日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚫️ | K・ラヒモワ | 80 | 7-5,3-6,2-6 |
WTA250 プラハ・オープン 7月21日~7月28日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚫️ | T. ヴァレントヴァ | 106 | 2-6,0-6 |
WTA1000 ナショナルバンク・オープン 7月27日~8月7日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚪️ | K・ヴォリネッツ | 108 | 6-2,2-6,6-2 |
2回戦 | ⚪️ | J・パオリーニ | 9 | 2-6,7-5,7-6(5) |
3回戦 | ⚫️ | J・B・マネイロ | 51 | 6-4,5-7,3-6 |
WTA1000 シンシナティ・オープン 8月7日~8月18日 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
1回戦 | ⚪️ | E・ルーセ | 58 | 6-2,7-6(6) |
2回戦 | A・パブリュチェンコワ | 30 |
「沼」の本領
ナショナルバンクオープン2回戦で世界9位のジャスミン・パオリーニ(29歳=イタリア)を倒し、WTAツアー内でも完全に認知された伊藤。
油断することなくなった相手は、むしろ「何をしてくるか分からない、嫌らしい相手」として
妙な「恐怖心」を抱いているのか、と思えるような試合だった。
もはやお決まり?となった第1セット第1ゲームブレークされての0-2から、6ゲーム連取で第1セット奪取。
第2セット、2-5ダウンからが、伊藤の真骨頂だった。
このセット、相手のサービスゲームで3ゲーム連続1ポイントも奪えず失っていた。迎えた第8ゲーム。相手のサービングフォア・ザ・セットの40-15。誰もが1セットオールを信じて疑わなかったが、伊藤だけは違った。

相手のダブルフォルト、ミスでデュースに持ち込む。そして、これまた恒例となったオンラインにボールを送り、ギリギリ入っていることを確認すると、ビッグスマイル!
最後はアンダーサーブを繰り出した相手を、嘲笑うかのようなバックのショートアングル。怒涛の4連続ポイントでブレークに成功。3-5。
続く自らがサーブの第9ゲーム。ここでも2度のセットポイントがあったが、しのいでキープ。最後は、鮮やかなライン際のワイドサーブでのエースだった。
第10ゲームも相手にミスを連発させて連続ブレーク。
計4度のセットポイントをしのいでタイブレークに持ち込んだ。
タイブレークでは6-4リード。見事なワイドサーブからバックのドライブボレーという必殺パターンも繰り出した。2本のマッチポイントをしのがれたが、必死に握りこぶしを作る相手とは対象的に、伊藤は全く慌てない。
相手のミス2本を引き出しタイブレーク8-6でゲームセット。
どちらがランキング上位なのか、分からない。
相手が勝手にミスする状況を作り出したのは、間違いなく、粘り強く返球し、嫌なプレッシャーをかけ続けた伊藤の「沼」効果だった。
第2セットのトータルポイントは「44」対「48」と4ポイントも負けていたが、勝ったのは伊藤だった。
日本選手キラーを一蹴
相手のルーセはツアー優勝経験もある、キャリアハイ51位の実力者。
実は「日本選手キラー」でもあった。
内島萌夏(23歳)や日比野菜緒(30歳)に、ともに2勝を始め、
2012年から13年間、13勝1敗。
過去、唯一の1敗は、2018年1月のITF大会での大坂まり相手のもの。
以降無傷の9連勝と無類の強さを誇ったが、伊藤の前には、その「神通力」も通用しなかった。
ルーセから見た対日本選手対決 | ||
2025 | 伊藤あおい | ⚫️ |
2025 | 柴原瑛菜 | ⚪️ |
2024 | 岡村恭香 | ⚪️ |
2024 | 穂積絵莉 | ⚪️ |
2024 | 日比野菜緒 | ⚪️ |
2023 | 内島萌夏 | ⚪️ |
2023 | 内島萌夏 | ⚪️ |
2021 | 奈良くるみ | ⚪️ |
2019 | 佐藤南帆 | ⚪️ |
2018 | 日比万葉 | ⚪️ |
2018 | 大坂まり | ⚫️ |
2017 | 大坂まり | ⚪️ |
2017 | 日比万葉 | ⚪️ |
2016 | 日比野菜緒 | ⚪️ |
2016 | 清水セイラ | ⚪️ |
世界ランク100位以内勝ち越し
世界9位パオリーニを倒したのに続いて、世界58位も撃破。
これで世界ランク100位以内の選手との通算対戦成績は9勝8敗と勝ち越し。
今回は、伊藤にとって①=9位パオリーニ②=40位クルーガー③=50位コッチャレットに次ぐ4番目の上位ランク者撃破となった。
100位以内との対決は、2025年以降で見れば8勝6敗。
さらに得意のハードコートに限れば8勝4敗と、互角と称するのは失礼なぐらいの勝ちっぷりだ。
伊藤あおい世界ランク100位以内との対戦勝敗 9勝8敗 | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
2023年9/6 ITF W100 安藤証券オープン | ||||
2回戦 | ⚫️ | 王希宇 | 95 | 1-6,4-6 |
2024年10/16 WTA250 木下ジャパン・オープン | ||||
2回戦 | ⚪️ | E・コッチャレット | 50 | 6-4,6-3 |
2024年10/29 WTA250 香港オープン | ||||
1回戦 | ⚫️ | K・ボルター | 29 | 4-6,4-6 |
2025年1/3 WTA125K キャンベラ国際 | ||||
準決勝 | ⚪️ | N・パリザス ディアス | 91 | 6-2,6-2 |
2025年2/1 WTA500 アブダビ・オープン | ||||
予選1回戦 | ⚫️ | S・ケニン | 75 | 6-7(4),2-6 |
2025年2/8-10 WTA1000 カタール・トータルエナジー・オープン | ||||
予選1回戦 | ⚪️ | A・ボンダール | 94 | 4-6,6-3,6-3 |
予選2回戦 | ⚪️ | V・グラチェワ | 70 | 6-2,6-4 |
1回戦 | ⚫️ | J・オスタペンコ | 37 | 2-6,1-6 |
2025年2/14-16 WTA1000 ドバイ・デュティーフリー選手権 | ||||
予選1回戦 | ⚪️ | T・タウンゼント | 83 | 6-3,6-4 |
予選2回戦 | ⚪️ | A・クルーガー | 40 | 7-5,6-2 |
1回戦 | ⚫️ | B・ベンチッチ | 65 | 0-6,2-6 |
2025年3/19 WTA1000 マイアミ・オープン | ||||
予選2回戦 | ⚪️ | E・リス | 78 | 4-6,6-4,6-2 |
2025年5/12 WTA125 クラランス・トロフィー | ||||
1回戦 | ⚫️ | S・カルタル | 56 | 2-6,6-3,3-6 |
2025年6/30 ウィンブルドン | ||||
1回戦 | ⚫️ | K・ラヒモワ | 80 | 7-5,3-6,2-6 |
2025年7/29-31 ナショナルバンク・オープン | ||||
2回戦 | ⚪️ | J・パオリーニ | 9 | 2-6,7-5,7-6(5) |
3回戦 | ⚫️ | J・B・マネイロ | 51 | 6-4,5-7,3-6 |
2025年8/7 シンシナティ・オープン | ||||
1回戦 | ⚪️ | E・ルーセ | 58 | 6-2,7-6(6) |
※クラランスはクレー、ウィンブルドンは芝、それ以外はハード |
次の相手は世界30位
2回戦の相手は、1回戦免除の第27シードで、世界30位のアナスタシア・パブリュチェンコワ(34歳)。
グランドスラム通算96勝65敗。全豪4度、全仏2度、ウィンブルドン2度、全米1度と、
グランドスラムで計9度もベスト8進出という、安定感あるベテランだ。
決して峠を過ぎた選手ではなく、今シーズンも全豪オープンとウィンブルドンで8強。ウィンブルドンではアシュリン・クルーガーや大坂なおみを倒している、文字通りの強豪だ。
▶「Wimbledon公式」YouTubeより
ただ先週のナショナルバンク・オープンでは2回戦敗退。伊藤あおいが3月にマイアミ・オープン予選2回戦で勝ったこともある、世界69位のエヴァ・リス(23歳=ドイツ)に敗れている。
今の伊藤は、もはやランキングなど関係なしに、勝敗が行き来するレベルにまで到達している。
臆する相手ではない。
どこまで食い下がれるか、いや勝ちきれるか。
全米オープン予選突破、上位進出への「予行演習」として、またしても楽しみな一戦になる。