坂本怜 雄叫び3度目チャレンジャー制覇

3戦連続日本対決制す
坂本怜が見事な見事なチャレンジャー3度目の優勝を決めた。
世界ランク176位で大会第2シードの坂本怜(19歳)が11月23日、横浜慶應チャレンジャー決勝に臨み、世界ランク288位で第8シードの内田海智(31歳)と対戦。4-6,7-6(4),6-4で逆転勝利した。試合時間2時間15分。
最後までどちらか勝つか分からない、両者死力を尽くした熱戦を制したのは、坂本。
勝利の瞬間、コートに大の字になり
「よくガンバッタゾー」と腹の底から絞り出すような雄叫びを挙げた。
準々決勝で内山靖崇(33歳)を、準決勝でサンティラン晶(28歳)を、そして決勝で内田を、
日本の先輩3人をすべてフルセットで振り切っての、価値ある優勝だった。
ネット前、内田と肩を寄せ合い健闘を称え合った。
力を引き出してくれた先輩にも感謝。
坂本自身が自分を心の底から褒めることができる、素晴らしい感動的な優勝だった。

第2セット窮地5度しのぎ
手に汗握る熱戦。
とはいえ第2セットまでは完全に内田ペースだった。
両者キープが続いたが、内田は被ブレークポイント0に対して、坂本は5度。
第7ゲーム15-40、第11ゲーム15-40、そしてアドバンテージ内田と、厳しい場面を完璧なサーブ、3球目攻撃などで、すべて耐えた。
坂本のブレークポイントセーブ率は100%(5/5)。
内田はここまで今大会オールサービスキープ。第1セットを落とし、ブレークされれば終わる。そんなマッチポイントに等しい、第2セット終盤を乗り切った精神力は、称賛に値するものだった。
タイブレークは坂本が3-4から4ポイント連取。最後は見事なバックハンドのダウンザラインでセットオールとした。

ファイナルも一進一退
ファイナルセットは第1ゲームで坂本がラブゲームブレーク。
兵庫チャレンジャーから2大会で4度目となるファイナル第1ゲームブレークで、勝利に大きく近づいたと思いきや、内田もさすがの粘りを見せる。
第2ゲームで坂本はブレークバックされ、再びキープ合戦に突入。
中盤以降は、またも内田に押される時間帯になる。
2-3の第6ゲーム0-15で内田のバックの鋭いクロスリターンはサイドライン上。目の前で見送った坂本はアウトと判断したが、判定はイン。
「ノー」と大声で叫ぶが、コールは覆らない。
0-30。昨シーズンまでの坂本なら集中力を切らしてもおかしくない場面。
だが、2本のノータッチエースなど4連続ポイントで危機脱出。
内田スーパープレーにも耐え
続く3-4の第8ゲーム30-30。
完璧なTゾーンへのサーブから内田のリターンはなんとか返っただけ。
坂本はバックのストレートで前に出るが、
逆を突かれた内田は背面ロブ。
これが絶妙な位置に落ち、まさかの攻守逆転。
抜かれた坂本を嘲笑うかのように、内田は完璧なフォアドロップボレーを決め、観客からの拍手を煽った。
30-40のブレークポイントになる。完全に優勝を手繰り寄せたかに見えた内田のスーパープレーだったが、またも坂本は諦めない。
素晴らしいサーブを続け、最後はワイド、センター2本のエースでデュースを取りきった。
スーパーリターン返し
これでようやく耐え抜いた坂本に波が来た。
続く第9ゲームのリターンゲーム。15-40でのブレークポイント。
デュースサイド、内田の完璧なワイドサーブを
ポールの外側から大きく回すフォアのスーパーリターン。
まさかの軌道から、ほぼオンラインの「イン」判定に、内田は黙って従いコートチェンジに向かった。
続く第10ゲームを坂本がキープして、ようやく素晴らしい戦いの勝負が決した。
決勝進出3大会すべて優勝
優勝は、いずれも決勝日が2024年12月1日だった四日市チャレンジャー、2025年7月7日のケーリー・テニス・クラシック以来、自身3度目。
決勝に進出した3大会すべてで優勝という勝負強さだ。
| 坂本の過去のチャレンジャー決勝進出 | ||
| 年月 | 大会名 | 最終結果 |
| 2024年12月 | 四日市 | 優勝 |
| 2025年7月 | ケーリー | 優勝 |
| 2025年11月 | 横浜慶應 | 優勝 |
日本選手最年少で3度目V
日本選手で3回以上チャレンジャーを制したのは、今回の坂本で13人目。
坂本の19歳4カ月での達成は最年少記録となった。
錦織圭の20歳4カ月を丸1年更新した。(18歳でのATPデルレイビーチ優勝は除く)
| 日本選手チャレンジャー3度目優勝の年少記録 | ||||
| 順 | 選手名 | 大会名 | 年齢 | 優勝回 |
| ① | 坂本 怜 | 横浜慶應 | 19歳4カ月 | 3 |
| ② | 錦織 圭 | サラソタ | 20歳4カ月 | 8 |
| ③ | 西岡良仁 | ウィネトカ | 20歳9カ月 | 7 |
| ④ | 鈴木貴男 | グランビー | 21歳8カ月 | 16 |
| ⑤ | ダニエル太郎 | 横浜 | 22歳9カ月 | 9 |
フルセット勝率は2022ー2024年のシニア大会成績(ITF、チャレンジャー、ATP)の.550から、2025年は.652に伸びた。
この2大会8試合で6度が最終セットまでもつれ込む熱戦。うち5度で勝ち、4度が1セットダウンからの逆転。今大会は準々決勝以降、3試合すべてが、その逆転パターンという粘り強さだった。
| 坂本のフルセット勝率 | |
| 2024年以前 | 2025年 |
| .550(11勝9敗) | .652(15勝8敗) |
日本選手5番手に
坂本は今大会準決勝進出で393ポイントを獲得し、11月24日付けの世界ランクは159位となった。今年10月13日付けの174位を超えるキャリアハイ更新だ。
| 坂本の年度ごと最終ATP世界ランク推移 | |||
| 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
| 1167位 | 939位 | 412位 | 159位 |
すぐに昨年四日市チャレンジャー優勝分のポイント失効があるが、
日本選手の世界ランク上位から見ると、綿貫陽介(27歳)を超え、上から5番手に浮上した。
157位の錦織圭とのポイント差はわずか4にまで迫った。
| ATP世界ランク日本選手上位 | ||
| 順位 | 選手名 | 年齢 |
| 93位 | 望月慎太郎 | 22歳 |
| 111位 | 西岡 良仁 | 30歳 |
| 146位 | 島袋 将 | 28歳 |
| 157位 | 錦織 圭 | 35歳 |
| 159位 | 坂本 怜 | 19歳 |
| 160位 | 綿貫 陽介 | 27歳 |
20歳以下トップ5入り
2005年以降生まれが出場有資格者となる「Next Gen ATPファイナルズ」(12月17~21日=サウジアラビア)の8枠をかけた争い、「レース・トゥ・ジェッダ」では10位に浮上した。
9月のデビスカップで対戦したジャスティン・エンゲル(ドイツ)をわずかの差で上回った。
前年覇者のジョアン・フォンセカの欠場はすでに決まっているとはいえ、他に欠場者が出なければ、1枠及ばないと見られる。
それでも、カルロス・アルカラスやヤニック・シナーも出場した世界トップの「登竜門」に、ここまで肉薄したことには意味がある。
現在の年齢で区切った20歳以下の世界ランク上位者(11月24日付け)を見ると、坂本はベスト5入り。
ツアー2勝のフォンセカ、1勝のティエンは別格として、各国の次代を背負うホープの中であっても、チャレンジャーの複数回優勝は立派。
「ジュニアで勝てても、その後が厳しい」と言われる、これまでの日本選手と違って
順調に成長の階段を登っていることが分かる。
| ATP世界ランク20歳以下上位と2025年優勝回数(11月24日付け) | ||||
| 順位 | 選手名 | 国名 | 優勝 | |
| ① | 24位 | ジョアン・フォンセカ | ブラジル | 4(2) |
| ② | 28位 | ラーナー・ティエン | 米国 | 1(1) |
| ③ | 133位 | ニコライ・ブドコフ・ケアー | ノルウェー | 4 |
| ④ | 135位 | マルティン・ランダルーセ | スペイン | 1 |
| ⑤ | 159位 | 坂本 怜 | 日本 | 2 |
| ⑥ | 167位 | ラファエル・ホダル | スペイン | 3 |
| ⑦ | 182位 | ジャスティン・エンゲル | ドイツ | 1 |
| ⑧ | 234位 | フェデリコ・チナ | イタリア | 0 |
| 優勝回数はチャレンジャー以上、うち( )内はATPツアー優勝回数 | ||||
内田先輩からの褒め言葉
準優勝スピーチでは内田から直接、最高の「褒め言葉」をもらった。
「あんまり褒めたくないけど、怜は強かったです。セカンドでこれを取ったら優勝できるというブレークポイントが何本もあったんですけど、それをことごとくしのがれて、まだ若いのに大事な場面でいいプレーができるのはなかなか出来ないと思いますし」。
そして続けた。
「怜は今後、もっと上に行く存在だと思います」
照れくさくなったのか? 最後は内田らしく冗談めかした。
試合前の坂本がした「ガキに負けるのにはプレッシャーがあると思うので」という発言になぞらえて「ガキんちょですけど、僕は尊敬している部分も多いので」と笑ったが、「もっと上に行く」という感想は、偽りのないエールだったろう。
今シーズンのラストを、自身も納得できる最高の形で締めくくった。
坂本は優勝スピーチで、内田に負けずと笑いを取った。
「去年、年内最後に四日市で、今年も年内最後に優勝して」
「課題とかは最終日に仕上げるタイプです!」
2026年全豪オープンの予選は年明け1月12日から始まる。
休息の時間は短いが、来シーズンは「最後」と言わず、序盤からグランドスラム初勝利へと突き進んでもらおう。





