錦織チャレンジャー予選で2026年初勝利

今季初の試合完了
錦織が2026年シーズン初勝利を挙げた。
世界282位で予選第6シードの錦織圭(36歳)が3月1日、チャレンジャー100のティオンヴィル・オープン予選1回戦に臨み、ワイルドカード(主催者推薦)で出場した世界1813位のダニエル・ジェイド(16歳=フランス)と対戦。6-2,6-3で勝利した。試合時間1時間7分。
今シーズンは1月6日、チャレンジャー125のキャンベラ国際1回戦で1試合を経験したものの、第2セット2-2の時点で腰、背中の負傷により途中棄権。
2セットだったが試合終了まで戦い抜くのは、この試合が初めて。
チャレンジャー予選、相手は1000位台ではあるものの、錦織にとってはフィジカルに明らかな支障をきたすことなく戦い切れたことに意義があった。
20歳差の16歳相手に快勝
相手のジェイドとは年齢差20歳。錦織が2008年2月、18歳の若さでATPツアー250のデルレイビーチ国際を制した翌年に生まれた選手だ。
ジュニアランクの最高は34位、現在87位。チャレンジャーに2試合出場しているが、いずれも初戦敗退。キャリア初勝利を狙うフランス期待の若手に、キッチリと力の差を見せつけた。
錦織の白星は2025年11月20日、横浜慶應チャレンジャー2回戦でシン・サンフィに6-4,6-1で勝利して以来、4カ月ぶりとなった。
懸念材料サービスも無難に
幾度となく痛みを発症している腰と背筋。
最も懸念されるのはサービスだ。
この日の力加減は5~6割程度といったところか。
トロフィーポーズのタメは少なくなり、トスも従来以上に左寄りになっているように感じた。
体に負担の少ないフォームを模索しているのか。あるいは不安部分をかばっているためなのかは定かではない。
時折フォームチェックする姿はあったが、
結果的にはリズムよくポイントを奪えていた。
ファーストサービスインの確率こそ55%(30/50)だったが、
ファースト時のポイント獲得率は83%(25/30)。
ブレークポイントは2度しか与えず、しっかりそれもキープした。

やはり隠せない天賦の才能
相手の16歳ジェイドのバックハンドストローク、リターンは、まだまだ発展途上。テンポもトップレベルとは差を感じる。
このレベルが相手だと、やはりストロークで錦織が圧倒的に優位になり、完全に主導権を握る。
アンフォーストエラーは24と多かったが、ウィナーは19本。
フォアのストレート、クロス、逆クロスと自在にポイントを奪っていった。
相手のバックを突けば次々とミスを誘発できた。
それでも錦織にしかできないと思わせる、天才的なプレーは、随所に垣間見られた。
すべては、集中しているゲームの1ポイント目で起きた。
①ノールックで一番嫌な足元へ
第1セット4-2で迎えた第7ゲーム、錦織のサービス0-0。
この日最長22本ものロングラリー。
錦織に主導権があったが、ジェイドがフォアバックへとうまく左右に走らせた。錦織はバックのスライスで返すのがやっと。
自分から大きく逃げていくボールを追って相手に完全に背中を見せた。
ジェイドは、そのままネットへとスニークイン。浮いたボールをボレーで仕留めてポイント終了と思いきや…。
錦織は相手が前に来るのが分かっていたかのような、鋭い弾道のショットを放つ。
しかも、打つ瞬間、ラケットに当てるタイミングを少し早くして。
あえてノールックにしたのは、相手をおびき出すための罠なのだろう。
あの追い込まれた状況で、にわかには信じがたいが、そうとしか思えない。
ボールは相手の一番嫌なバックの足元、サービスライン付近に落ちる高速スライス。
完全に虚を突かれたジェイドのハーフボレーは空振り寸前、力なく自らのコートでワンバウンドした。
②狙ってドロップリターン
第2セット1-0で迎えた第2ゲーム、錦織リターンの0-0。
ジェイドのファーストサービスは、センターラインをとらえる素晴らしい当たりの高速フラット。錦織は体をいっぱいに伸ばしバックでなんとかラケットに当てた。
ジェイドは当然ベースライン1m内側に入って甘いボールに備えていたが、
錦織のリターンは、ジェイドの予想をはるかに上回る浅さ。
やや浮かしたもののバックスピンがかかったボールはネット際50cmに落ちた。
ドロップリターン!
慌てて追いついたジェイドは、フォアのスライスでクロスアングルでフィニッシュに入る。
だが、これを読み切っていた錦織は猛ダッシュでフォアのランニングクロスパス。
完全に自分のポイントだと思っていたジェイドは、思わず天を仰いだ。
偶然とも見えなくはないが、リターン後すぐに前に向いた錦織の目、次への動きの俊敏さ、ポイント後の錦織の表情を見る限り、これも狙って浅い返球をしたとしか思えない。
③絶妙ショートクロスで再逆転パッシング
第2セット、4-1で迎えた錦織リターンゲーム。これもファーストポイント。
リターンで押し込み4球目のフォアの逆クロスで前に出た錦織。
ジェイドのダウンザラインのボールに飛びつくように腕を伸ばして打った6球目フォアボレーは甘くなった。
ジェイドはフォアで追いつく。
対して錦織はサイドライン中央まで飛び出し、そこから一回転してコートカバーへ戻るしかない。
オープンコートを広く作らされた錦織が完全に不利な状況。
だが、ここから最も遠い距離、逆サイド手前に落とされたジェイドのボールに錦織は、2バウンド手前ギリギリで追いつく。
通常、ストレートかセンター付近への返球がやっとのシーンだろうが、
コースを隠したバックのスライスで絶妙のショートクロス。
なすすべなく抜かれたジェイドは、その瞬間、ラケットと左手を使って大きく拍手した。
錦織にしかできないプレー
こんなプレーを、さも簡単にやってのけるプレーヤーが世界中にどれほどいるか。
年齢は関係ない。少しでも長く現役を続けたい。簡単に諦めるなんて勿体ない。
自分が持つ才能の大きさに気づいているからこそ、錦織は再びコートで戦える日を最後の最後まで模索する。
その心境は、やはり正しいと感じさせるプレーをこの日もキッチリと体現した。
試合後、ネット前で握手を求めたジェイドの姿からは、錦織をリスペクトしている様子がまざまざと伝わってきた。
2戦目も無事戦えるか
次は予選2回戦。これを勝てば本戦に進める。
世界338位のジェレ・セルス(30歳=オランダ)と世界1391位のティメオ・トルフェリ(18歳=フランス)の勝者と対戦する。
だが、錦織にとっては、相手どうこうより、自分のフィジカルがどこまで回復し、2試合目もキッチリと力を発揮できるのか。
確認したいのは、その一点だろう。
錦織の直近6大会を見ると、横浜慶應チャレンジャーで準々決勝まで3試合を戦った以外はすべて2試合までで敗れるか、途中棄権している。
| 錦織の直近6大会の成績 | ||
| 2025年4月 | フェイズ・サロフィム | 2回戦途中棄権 |
| 2025年4月 | マドリッド・オープン | 2回戦敗退 |
| 2025年5月 | ジュネーブ オープン | 2回戦途中棄権 |
| 2025年8月 | シンシナティ・オープン | 1回戦敗退 |
| 2025年11月 | 横浜慶應 | 準々決勝敗退 |
| 2026年1月 | キャンベラ国際 | 1回戦途中棄権 |
2試合目も勝利を挙げられるか、いや問題なく試合を戦い終えられるか。
現役生活を続行するうえで、次の一戦も大事な試金石になる。




