渡邉栞太 世界スーパーJr 立派な準V


疲労明らかも好プレーで沸かす
日本の渡邉栞太(16歳)が9月28日、大阪・靭で行われている世界スーパージュニア男子シングルス決勝に臨み、第11シードのエゴール・プレシフツェフ(18歳)に2-6,2-6のストレートで敗れた。
渡邉は第2セット開始前にメディカルタイムアウトを取るなど、勝ち上がり5戦の激闘によるフィジカル面での疲労は明らか。
しかも、第1セット、第2セットとも最初のサービスゲームをブレークされる厳しい展開。

それでも、リターンゲームで再三、見せた渡邉の粘り、好プレーは靭センターコートに詰めかけた観衆を大いに沸かせた。
各セット両者のトータルポイント | ||
渡邉栞太 | プレシフツェフ | |
23 | 第1S | 33 |
27 | 第2S | 36 |
50 | マッチ | 69 |
トータルポイントは第1セットは10ポイント、第2セットは9ポイントと大差がついた。
だが、ブレークスタートではなく、相手にプレッシャーをかけられる展開になっていれば、もっと競った試合になったことだろう。
▶「superjunior_tennis」インスタグラムより
光ったリターンゲーム
渡邉は2009年生まれでITFジュニア世界ランクは263位。
相手のプレシフツェフは2007年生まれで同ランクは25位。
すでにジュニアを飛び越え一般のITF大会に出場している2世代上の選手。
渡邉より頭1つ分以上大きい長身から、時速190キロは超えているだろう高速サーブ。さらには強烈な回転量を持ち、渡邉の肩口以上に跳ねるスピンサーブを繰り出した。
渡邉の体格的不利は明らかだったが、それをモノともしない粘りのリターンを見せた。
各セット両者のサービスイン確率 | ||
渡邉栞太 | プレシフツェフ | |
54% (14/26) | 第1S | 50% (15/30) |
60% (15/25) | 第2S | 58% (21/36) |
57% (29/51) | マッチ | 55% (36/66) |
第1セットは相手のファーストイン15本のうち3本のサービスエースを許した。
だが、残り12本のファーストサーブのうち返球ミスはわずか1本。
バックのスライスリターンがわずかにロングしただけだった。
セカンドサーブも15本のうちエースはダブルファーストだった1本。
残り14本のうち肩口より高く跳ねた両手バックのリターンを2度ミスしただけだった。
第1セットのリターンでのアンフォーストエラーはゼロ。
第1セット第6ゲームでのブレーク成功。このゲームを含め以降の
相手サービスゲーム6度中5度までがデュースにもつれ込む、最大の要因になった。
第2セットはファースト確率を58%にまで上げられ、返球できなかったリターンは6本に増えたものの、完全なエースは1本だけ。
素晴らしい反応、動きとラケットワークで正確なリターンに徹し続けた。
多彩な攻撃で沸かす
ディフェンス面だけでなく、攻撃面でも実に多彩だった。
奪ったストロークとネットでのウィナーの鮮やかなショットの数々を書き出してみると
第1セットは10本
- 3球目フォアストレートウィナー=2連続
- 7球目バックストレートウィナー
- 3球目フォア逆クロスウィナー
- 8球目フォアドロップウィナー
- 回り込みフォアリターンエース
- 10球目バッククロスウィナー
- 13球目フォアストレートウィナー
- 6球目フォアトップスピンウィナー
- 8球目フォアストレートウィナー
第2セットは3本
- リターン&ネット4球目フォアボレーウィナー
- ナイスアプローチ8球目フォアボレーウィナー
- 14球目フォア逆クロスウィナー
13本のウィナーのうち8本までが自らのリターンゲームで繰り出したものだった。
きちんと質の高いショットを重ねて展開を作り、最終的に完璧なポイントを奪っていることが分かる。
ライジング気味にベースライン内側に入り込んで打つスピン量の豊富なフォア。下げられても懐が深く伸びのあるバック。そしてネット前での流れるような動き。
16歳とは思えぬショットバリエーションの豊富さは、大きな将来性を感じさせた。
上位シード次々と撃破
決勝こそフィジカルで劣ったが、その勝ち上がりは全試合とも、見事だった。
回戦 | 対戦相手 | スコア | |
1回戦 | ⚪️ | Y・イブライミ | 2-6,7-6(5),6-3 |
2回戦 | ⚪️ | D・タザベコフ | 6-3,6-2 |
3回戦 | ⚪️ | T・デレパスコ | 7-6(5),7-6(6) |
準々決勝 | ⚪️ | A・アイウハノフ | 6-4,6-2 |
準決勝 | ⚪️ | S・リブキン | 6-2,3-6,7-5 |
決勝 | ⚫️ | E・プレシフツェフ | 2-6,2-6 |
1回戦は259位のイメラリ・イブライミ(16歳=オーストラリア)をフルセットで辛勝。第1セット2-6の劣勢から第2セットのタイブレークを制して見事に蘇った。
2回戦は114位で第14シードのダニエル・タザベコフ(17歳=カザフスタン)をストレート撃破。
3回戦は17位の第2シードのティモフェイ・デレパスコ(18歳)をタイブレーク2連勝でストレート突破。ポイントを奪うたび声を張り上げた気迫あふれるプレーで、2025年の全豪オープンジュニア、全米オープンジュニアで、ともにベスト8という強豪を倒す大金星だった。
準々決勝は221位のアラン・アイウハノフ(16歳)をストレート撃破。
準決勝は45位で第7シードのサヴァ・リブキン(16歳)にフルセット勝利。同じ2009年世代で前週のジャパンオープンジュニア2回戦で6-1,5-7,6-4で敗れていた相手に雪辱した。
すべて自身よりランク上位者に5連勝。
シード選手も3人をなぎ倒す快進撃だった。
ルード フリッツ級快挙
渡邉より年長の2007年世代、第9シード逸崎獅王(18歳)は2回戦敗退。2008年世代、第1シード田畑遼(17歳)、第15シード川西飛生(16歳)は3回戦敗退。
過去10年、男子16歳以下での決勝進出者を振り返ってみると以下の3人。
- 2021年 14歳=富田悠太(準優勝)
- 2015年 16歳=キャスパー・ルード(優勝)
- 2014年 16歳=ティラー・フリッツ(優勝)
現在世界トップランカーのルード、フリッツは大会直後に17歳の誕生日を迎えており、渡邉の年齢と比較すると1歳上の世代だったことになる。
ルード、フリッツと聞くと、渡邉のその進撃の凄さが明確になるとともに、
将来への期待がますます膨らむ。
デ杯ジュニアファイナルへ
今大会は年長の格上相手に大きな成長を見せた。
11月3日から9日までチリで行われるデビスカップジュニアファイナル16歳以下では、同世代の戦い。
渡邉は日本代表のエースとして出場することが決まっている。
日本は2019年以来、6年ぶり3度目の優勝を狙っている。
その際のエースは望月慎太郎。
渡邉も世界スーパージュニア準優勝をきっかけに、
日本を代表とするプレーヤーにぜひとも成長していってもらいたい。
渡邉栞太(Kanta Watanabe)
2009年生まれ、広島県出身。広島Tension所属。精華学園宮島高校2年生。
2022年、RSK全国選抜ジュニア優勝。
2023年ワールドジュニア日本代表。
2024年U15全国選抜ジュニア優勝。
2025年3月J100キャンベラ ジュニア国際優勝。
2005年4月MUFGジュニア優勝。
2025年デビスカップジュニア(16歳以下男子)代表。5月のアジア・オセアニア最終予選での日本3連覇に貢献。
2025年全日本ジュニア(16歳以下)単複2冠。
9月22日付け最新のITFジュニアランキング263位。
▶「mainichi_live」インスタグラムより
▶「seikamiyajima.tennis」インスタグラムより