坂本怜 沈着冷静 逆転8強

終始落ち着いて逆転
坂本怜が順調に2連勝を飾った。
世界ランク180位で大会第6シードの坂本怜(19歳)が11月12日、兵庫チャレンジャー2回戦に臨み、世界296位のハイネック・バートン(21歳=チェコ)と対戦。3-6,6-3,6-4のスコアで逆転勝利した。試合時間1時間44分。
第1セットを終盤の1ブレークで落とした。第2セットも第1ゲームの自身のサービスゲームを先に落とす苦しい展開。
それでも第4、6ゲームをブレークして、このセットを逆転でモノにした。ファイナルセットは第1ゲームで相手サーブのブレークに成功。そのまま押し切った。

試合後は2試合連続の侍ポーズも披露。
終始、落ち着いたプレーで
確実に成長した姿を、日本のファンに見せて、8強入りを果たした。
2戦連続ファイナル出だしブレーク
坂本の1回戦も2時間32分に及ぶ激戦だった。
第1セットは7-6(6)で先行。だが第2セットは逆に6-7(4)で落とした。
ショックは当然あったろうが、顔色一つ変えず。ファイナルセット第1ゲームで相手サーブをラブゲームでブレークし、そのまま勝ち切る頼もしさを見せていた。
この日もファイナル第1ゲームブレークはまったく同じ。
慌てず騒がず、勝負どころで集中した姿勢を見せて、勝利を呼び込んだ。
わずか11分で第1Sダウン
相手のバートンは1回戦のナム・ジソン戦でファイナルタイブレーク3-6から5連続ポイントで大逆転。3連続マッチポイントをしのいでの劇的な勝ち上がりを見せて、この日の坂本戦を迎えていた。
序盤の勢いは凄まじく、第1セットのファースト時のポイント獲得率は83%。
慌ててもおかしくないところだが、坂本もファーストサービスインの確率73%、ファースト時のポイント獲得率は75%と同等の数字で付いていった。
いつまでもこんな相手の調子は続かない、と予測しているような落ち着きぶりだった。
| 各セット両者のサービスイン確率 | ||
| 坂本怜 | バートン | |
| 73% (16/22) | 第1S | 55%(18/33) |
| 58% (21/36) | 第2S | 46% (13/28) |
| 69% (25/36) | 第3S | 40% (12/30) |
| 66% (62/94) | マッチ | 47% (43/91) |
| 各セット両者のファーストサービス時ポイント獲得率 | ||
| 坂本怜 | バートン | |
| 75% (12/16) | 第1S | 83%(15/18) |
| 76% (16/21) | 第2S | 77% (10/13) |
| 80% (20/25) | 第3S | 100% (12/12) |
| 77%(48/62) | マッチ | 86% (37/43) |
3セットでファースト確率維持
案の定、バートンは第2、3セットとファーストインの確率が低下。
対して坂本は第2セット以降も安定感のある数字を維持し続けた。
マッチ通算ではファーストイン時のポイント獲得率は77%対86%と劣ったが、
ファーストインの確率は66%対47%と、坂本が大きく差を付けた。
セカンドサービス時のポイント獲得率は58%対59%と互角だった。
トータルポイントは95対90と、わずか5ポイント差。
エースの数は坂本8本に対してバートン13本と、5本負けたが、それでも勝った。
最終的にはファーストサーブ1本に頼りすぎない、確率の差が明暗を分けた。
10月の初戦敗退から立ち直り
9月下旬の上海マスターズで坂本は自身2度目のATP1000の予選を突破。
1回戦では世界73位のマッテオ・アルナルディ(24歳=イタリア)に敗れ、惜しくもツアー初勝利を逃した。
さらなる進化の予感を感じさせながら
その後、10月の3大会は、いずれも初戦敗退と、今ひとつ波に乗り切れなかった。
だが、2週間の休養明け、安定感ある勝利を重ねて、再び明るい兆しが見えてきた。
1ショットを丁寧に確実に
大会前のオフコート練習では地道なショットを磨いていた。
バックの単純なクロスショット。相手のボールが出た場所より、絶対に角度を付けたサイドラインに近い方に返すというパターン練習。
1球1球、まるでマッチポイントかのように真剣に取り組んだ。
唸り声をあげるようなフルパワーは一切必要ない。
ただ丁寧に丁寧に運ぶ。
1、2回戦ともそんな我慢のシーンが、何度も次の攻撃への起点となった。
11連続BPセーブの粘り呼ぶ
この日の試合、第2セットをリードした後も、何度も大事な山場はあった。
第2セットではブレークした後の第5ゲーム、最終第9ゲームと
5度の相手ブレークポイントを迎えながら、耐えしのいだ。
第3セットもブレークした後の第2ゲーム、そして第6ゲームで
6度あった相手のブレークポイントをセーブした。
第2セット第2ゲーム以降は
11度のブレークポイントすべてをセーブする素晴らしい粘りだった。
ファーストサーブを起点としながらも、従来の爆発力より忍耐のプレーを重視した。
爆発力で勝負するバートンにアップダウンがあった分、坂本の冷静沈着な試合運びが目立った。
着実な成長を実感
もともとビッグサーブ、ビッグフォア、ネットプレー、ボールタッチセンスと類稀なる「4ツール」を持っている。
あとは一貫性、確実性さえ積み重ねれば、必ず勝利は付いてくる。
普段以上に自らを鼓舞する声が大きくなったのは、派手な1本より、確実なラリーを重ねてネットポイントを奪ったシーン。
今は、大きな成功よりも着実な成長、小さな成功を喜べているように思える。
準々決勝は第1シードと
準々決勝の相手は、2回戦で元世界19位のチョン・ヒョン(29歳=韓国)を破った、
世界131位の第1シード、ツェン・チュンシン(24歳=台湾)に決まった。
2018年全仏、ウィンブルドンのジュニア覇者。台湾初のジュニア世界1位になったこともある。キャリアハイ83位ながら、グランドスラムは依然0勝7敗で未勝利。
2024年全豪ジュニアを制し、グランドスラム勝利を目指す坂本にとっては、
越えなければならない「壁」であるのは確かだろう。
「アジア対決」の勝利を、さらなる飛躍、そして自身3度目のチャレンジャー制覇への足がかりとする。




