13歳宮澤紗希乃 8強逃すも見事な攻め


ストレートで敗れる
ウィンブルドンU14覇者・宮澤紗希乃(13歳)が9月25日、大阪・靭で行われている世界スーパージュニア3回戦に臨み、第11シードのアンナ・プシュカリエワ(16歳)に2-6,5-7でストレートで敗れた。
宮澤の最新のITFランクは237位。1回戦から17歳60位、17歳214位と4歳年上の格上選手を倒してきたが、16歳95位の選手には及ばなかった。
162センチの宮澤に対して、身長差は10センチ以上あろう長身パワーヒッター。アベレージのサーブ、フォアとも球速差は10キロ以上あっただろう。
いかんともしがたいほど、体格差は歴然だった。
圧倒されそうな展開から
プシュカリエワは、宮澤と同じ2011年生まれの世代No.1でITF144位のミーガン・ナイト(14歳=イギリス)と1回戦で対戦。6-1,6-2で圧倒して勝ち上がってきていた。
第1セットは、宮澤が2ブレークを許して、1-5。
サーブとリターン力のパワーの差は絶対的で、ナイトと同じようなスコアで押し切られる可能性が濃厚だった。
だが、宮澤は一味違った。
次の第7ゲーム、自らのサービスゲームから、明らかに戦い方を変える。
サーブ&ボレー、そして3球目、5球目、7球目とラリーの勢いを加速していく「超攻撃的テニス」に転じたのだ。
見事なワイドサーブでのポイントを皮切りに、9球目をスマッシュ、サーブ&バックのハイボレーでウィナー。さらには3球目のフォアストレートで前へ出て、5球目をバックのドライブボレーでウィナー。
宮澤の「よっしゃ、カモン!」の声がサブセンターコートに響き渡った。
鮮やかなポイントラッシュで意地のキープ。
続く第8ゲームでサービスキープされ、第1セットは1-6。トータルポイント「16」対「27」と大きく差を付けられたが、ここから潮目は一気に変わった。
各セット両者のトータルポイント | ||
宮澤 | プシュカリエワ | |
16 | 第1S | 27 |
34 | 第2S | 49 |
50 | マッチ | 76 |
互角の第2セット序盤
第2セットに入っても宮澤の「魂のサービスキープ」は続いた。
第1ゲーム、3度のデュースの末、モノにする。
小さな体をいっぱいに使いフルスイングのラリー。サービスもいつも以上のフルパワーで打ち込み、何度もサービス&ボレーを繰り出した。
勝負どころのこのゲーム、12本中11本のファーストサーブを入れる見事な集中力だった。
第3ゲームもとにかく前へ。またもデュースに持つれ込むが、鮮やかなバックボレーウィナーと5球目のフォアのダウン・ザ・ラインウィナーで土俵際のキープ。

第4ゲームも怒涛の攻撃で先にブレークに成功。
だが、ここからプシュカリワが実力通り押し返す。
4ゲーム連取され、3-5。完全に後がなくなった。
再び執念で5-5へ
5ゲーム中4ゲームがデュースにもつれ込み、必死に食らいついての2キープ。
対して相手は楽々とキープを続けていく。
通常ならブレークされて3-6でゲームセットだろう。
だがそんな逆境でも宮澤は、諦めない。
第9ゲーム、サーブアンドボレーから5本目をスマッシュ、7本目をフォアボレーウィナー、ナイスボレーから11本目をスマッシュと3度のネットポイントを奪ってサービスキープ。
もう1本もミスが許されないド緊張の場面で、
ソフトタッチなファーストボレーを次々と決める姿は、もはや驚きでしかない。
続く第10ゲームのリターンゲームでも14本目をスマッシュ、8本目をスマッシュ。
2本の鮮やかなネットポイントでブレーク成功。5-5。
その瞬間、圧倒的有利なはずのプシュカリエワが、ボールを叩きつけて怒りをあらわにした。
主審からは警告を取られた。
この時点で第2セットのトータルポイントは宮澤から「34」対「41」。
7ポイントも負けているのに、スコアは5-5のタイ。
それほど、宮澤の勝負どころでの攻め方、ポイントの取り方が見事だった。
プシュカリエワが苛立つのも無理ない。
ラスト8連続ポイント許す
結局、宮澤の果敢な攻めが成功したのは、ここまでだった。
第11ゲーム、ボレーが白帯に阻まれるなど不運もあってラブゲームで落とす。
第12ゲームもリターンミスが重なり、ラブゲームでゲームセット。
8連続失点で、執念の追い上げは幕を閉じた。
だが第12ゲームの大事な1ポイント目。宮澤のバックのリターンはボール半分ロングのジャストアウト。
主審の判定に相手は、大きく息を吐き、助かったという表情を見せた。
この1ポイント目が宮澤に入っていたら、まだまだ試合は分からなかったことだろう。
大器ぶり十分示した
圧倒的なビハインドで、これだけ自らの攻撃の持ち手を鮮やかに集中して繰り出せるのは、よほどの鍛錬なしには、あり得ない。
スコア、トータルポイント的には完敗かもしれない。
だが幾度となくネットギリギリをすり抜けた宮澤のフルショット、カウンター、そしてファーストボレーは
その大器ぶりを周囲に感じさせるのには十分だった。
2011年世代唯一の3回戦進出
今大会、同世代のミーガン・ナイトは1回戦負け、イェリ・ホン(14歳=韓国)は2回戦負け。
単純な成績もさることながら、最後まで攻め手を繰り出せた宮澤との違いは明らかだ。
忘れてはいけないが、宮澤の年齢はまだ13歳11カ月だ。
過去の世界スーパージュニアでの女子優勝で見ると、
2021年の木下晴結が当時14歳11カ月。
2022年の齋藤咲良が15歳11カ月。
2023年のエマーソン・ジョーンズ(オーストラリア)は15歳3カ月。
これは同国出身の元世界1位アシュリー・バーティが2011年にウィンブルドンジュニアを制した15歳2カ月とほぼ変わらないJ500レベルの優勝で、オーストラリアでは大々的に騒がれた。
2011年10月27日生まれの宮澤は、もし来年この大会で優勝すれば14歳11カ月。
まだまだ確実に階段を登っていく時間はたっぷりある。