綿貫柚木組敗れ日本デビスカップ敗退


ダブルスで3敗目
男子の国別対抗戦デビスカップ ファイナル予選2回戦の「日本VSドイツ」の第2日が9月13日、東京・有明コロシアムで行われた。
第3試合で綿貫陽介(27歳)、柚木武(26歳)組がケビン・クラウィーツ(33歳)、ティム・プッツ(37歳)組と対戦。3-6,6-7(4)のストレートで敗れた。
前日の第1日を0勝2敗で終えていた日本は計3敗目を喫し、ファイナル進出を逃した。
第3試合 ダブルス | ||
複世界897位 | 綿貫 陽介 | 27歳 |
複世界114位 | 柚木 武 | 26歳 |
複世界12位 | ケビン・クラウィーツ | 33歳 |
複世界13位 | ティム・プッツ | 37歳 |
柚木3ブレーク許し
前回のイギリス戦に続き、代表2戦目の柚木は、プレッシャーからか、やはり硬さが目立った。
得意のサーブ、ショットの思い切りが今ひとつ。
第1セット、自身最初のサービスゲームとなった第4ゲームを落とした。
2-4と追い込まれたリターンゲーム、第7ゲーム。
自らを必死に鼓舞し、自らのナイスプレーで3ポイントを奪いブレークに成功。
だが直後、柚木2度目のサービスゲームとなった第8ゲームも落とした。
そのままセットダウン。
第2セットも第6ゲームで先にブレークに成功した日本は4-2としたが、
またも直後の柚木のサービスゲーム、第7ゲームを落とした。
日本は綿貫の切れ味よいショットを中心に、ドイツペアのサービスを各セット1度ずつ、計2度ブレークした。
だが、柚木のサービスゲームは3ブレーク。5度中2度しかキープできなかった。

ドイツ怒とうの11ポイント
第12ゲームの日本のリターンゲームでは0-40と、セットポイント3本あった。
だが、ここからドイツペアに巻き返された。
5ポイント連取でキープ。
タイブレーク突入後も、凄まじい勝負強さを見せつけられた。
なんと6ポイント連取。
第12ゲームから11連続ポイントは、まさにあっという間の出来事だった。
日本も4ポイントを返し、諦めない姿勢を見せたが、時すでに遅し。
ブレークポイントをモノにした確率は日本22.3%(2/9)に対しドイツは100%(3/3)。
勝負どころで息のあったコンビネーションを見せる、世界のダブルススペシャリストとの差をまざまざと見せつけられた。
ドイツと対象的な日本の課題
日本の出来どうこうよりも、
やはりデビスカップ全出場国の中でも最強と称されるドイツのダブルスは強かった。
クラウィーツはデビスカップで出場したダブルス19試合中18勝。
プッツは同じく21試合中20勝。
2人でペアを組んだダブルスは16試合中15勝。
2022年11月のカナダ戦以降負けなしで、
この最強ペアの連勝は7に伸びた。
逆に、綿貫&柚木組は日本のダブルスの切り札的存在を期待され、前回のイギリス戦からペアを組んだが、これで2連敗。
ドイツのダブルスが強かった分、日本のダブルス強化の課題が余計に浮き彫りになった。
低いダブルス勝率
シングルス4本、ダブルス1本で争う団体戦では、やはり「ダブルススペシャリスト」が存在するかどうかが大きく勝敗を左右する。
歴代の日本のデビスカップでの勝率を見ると
シングルスは472勝305敗で勝率6割を超えている。
一方でダブルスは198勝208敗。
勝率は5割を切っており、やはり苦手にしていると言わざるを得ない。
日本デビスカップでの勝敗 | |||||
シングルス | ダブルス | ||||
勝 | 敗 | 勝率 | 勝 | 敗 | 勝率 |
472 | 305 | .607 | 198 | 208 | .488 |
※2025年9月ドイツ戦前まで |
シングルスとダブルス両方で日本の歴代最多勝を誇るのは鈴木貴男。
シングルス27勝、ダブルス14勝の計41勝。
だが、それ以外は圧倒的にシングルスで活躍した選手が多い。
ダブルスで10勝以上挙げた選手はわずか4人。
鈴木貴男以下、岩渕聡、渡辺康ニ、平井健一だけだ。
そのうちダブルス専門と言えるのはダブルス19試合に対してシングルス3試合にしか出ていない岩渕聡だけだ。
日本デビスカップダブルス最多勝 | |||
順 | 選手名 | 勝 | 敗 |
1 | 鈴木貴男 | 14 | 11 |
2 | 岩渕聡 | 11 | 8 |
3 | 渡辺康二 | 10 | 5 |
3 | 平井健一 | 10 | 8 |
以下参考 | |||
トーマス嶋田 | 7 | 9 | |
マクラクラン勉 | 3 | 7 | |
内山靖崇 | 3 | 13 |
21世紀に入ってトーマス嶋田、マクラクラン勉、内山靖崇らがダブルスの中心選手として日本を背負ったが、勝敗はいずれも負け越している。
国全体で考える問題
ただ、すべてをコートにいるキャプテンや選手のせいにしてはいけない。
日本でダブルススペシャリストが育ちにくい背景、要因が確かにある。
- 経済的要因 アジアからツアー転戦には莫大な遠征費がかかる&賞金も低い
- 支援的要因 スポンサー契約が難しい
- 構造的要因 ロールモデル不在&海外拠点を得る難しさ
- 文化的要因 部活動の減少&シングス重視の国内大会開催
アメリカ、ヨーロッパでは、移動距離、遠征費、パートナー探しなど、それほど労力もかけずツアーに参戦できる。
代表戦だけでなく、常にATPツアーをコンビで転戦しているドイツペアとの差は顕著だった。
またNCAAなどの米国大学テニスでは団体戦も主流。ドイツ、フランス、イギリスなどでは伝統的にダブルスも盛んで地位が確立され、ダブルス転向で成功を収めた例もたくさんある。
ダブルススペシャリスト養成急務
柚木の長身を活かしたサーブ力。綿貫の相手の予想を上回る思い切りの良いショット。どちらも世界の難敵に打ち勝っていくには、魅力的な武器を持っているのは確かだ。
くしくもデビスカップ第2日のこの日は、複世界199位の上杉海斗(30歳)、複160位の渡邉聖太(24歳)組がチャレンジャー広州で進んだ決勝の舞台に立つ日でもあった。
望月慎太郎(22歳)や坂本怜(19歳)には、シングルスもダブルスも両方強い絶対的エースへと育ってほしい。
しかし、それらすべてと並行して、中長期的なビジョンを要する、ダブルスの層を厚くするための次世代プレーヤー強化、支援は、やはり今の日本代表には急務だ。
