坂本 大逆転グランドスラム1勝


グランドスラム初勝利
世界ランク200位の坂本怜(19歳)が奇跡的な大逆転勝利だ。
8月19日、全米オープン予選1回戦に臨み、ワイルドカード(主催者推薦)で出場した地元の世界328位タイラー・ジンク(24歳=アメリカ)を4-6,7-5,7-6で退けた。
坂本のグランドスラム出場は、ワイルドカードで出た今シーズン1月の全豪オープンに続いて2度目。前回は予選1回戦で敗れた。
今回はランキングを上げて初の自力出場。
予選とはいえ見事、激戦を制し、格別な価値があるグランドスラム初勝利を手に入れた。
坂本のグランドスラム全戦績 | ||||
1月7日 全豪オープン | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚫️ | T・ボイヤー | 136 | 0-6,2-6 |
8月19日 全米オープン | ||||
回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
予選1回戦 | ⚪️ | T・ジンク | 322 | 4-6,7-5,7-6(8) |
セットダウン 第2セットも絶体絶命
第1セット、1ブレークされ4-6で落とす。
第2セットも先に2ブレークを許し1-5。
第7ゲームをキープして2-5としたものの、
続く第8ゲーム、相手のサービスゲームは40-0。
相手有利のサーブで絶体絶命のトリプルマッチポイント。
アッサリ敗退と誰もが予想したが、坂本はここから驚異的な粘りを見せた。

マッチポイント6度逃れ
なんと3本を返してデュースに持ち込む。
相手アドバンテージでこのゲーム4度目のマッチポイントを握られるが、これもセーブ。
11ポイントの攻防の末、ブレーク成功。3-5と食らいつく。
続く第9ゲームをキープして4-5。相手サーブの第10ゲーム。これも18ポイントを争う長いゲームになったが、再びブレーク。ここでも40-30、相手アドバンテージと、2度のマッチポイントをしのいだ。
これで5-5。
続く第11ゲームはラブゲームキープで6-5と、ついに逆転。
相手サーブの第12ゲームは、さらに長いゲームになった。22ポイントを争い、このゲーム3度目のブレークポイントを活かして7-5で第2セットを奪取。
すべて相手のサービスゲーム、自分のリターンで6度のマッチポイントをしのいだ。
男子の圧倒的なサーブに対峙して、これがいかにすごいことか。
このセットだけで1時間11分に及ぶ大激戦、土俵際からの6ゲーム連取。
文字通りアンビリーバブルな「死の淵」からの生還劇だった。
ファイナル タイブレ決着
それでもファイナルセットは簡単には行かなかった。両者意地と意地のぶつかり合い。キープ合戦のままタイブレークに突入する。
坂本9-6のマッチポイントから自らのサービスを2本落とし9-8、相手サーブとされる。
だが、最後もリターンからだった。声を必死に出しながら30本のロングラリー。最後はスマッシュを決めた。10-8。
坂本が雄叫びをあげ、コートに転がり喜びを表現した。
この日の最終マッチとなった2時間51分に及ぶ死闘がついに幕を閉じた。
2度の侍ポーズを繰り出した日本の若武者を、アメリカのファンも大声援で称えた。
坂本怜VSジンク トータルポイント | ||
坂本 | セット | ジンク |
33 | 第1S | 37 |
52 | 第2S | 48 |
41 | 第3S | 39 |
126 | 通算 | 124 |
両者のトータルポイントは「126」対「124」。
250ポイントを争い、その差わずかに2。
どちらが勝ってもおかしくない大激戦を制したのは、
最後まで貪欲に勝利を追い続けた坂本だった。
2回戦はブセ戦
2回戦の相手は世界136位で第29シードのI・ブセ(21歳=ペルー)に決まった。
2025年6月、ドイツのネッカーカップでチャレンジャー初優勝を遂げた、ペルーのNo.1選手だ。坂本とは初の顔合わせとなる。
▶「Australian Open TV」YouTubeより

3回戦は因縁ブロックスか
ここも勝てば、予選3回戦では、第11シードで世界116位のアレクサンダー・ブロックス(20歳=ベルギー)と、世界194位のキマー・コッペジャンス(31歳=ベルギー)の同胞対決の勝者と当たる。
ブロックスは2023年の全豪オープンジュニアの覇者で、元ジュニア世界1位。
一方の坂本も2024年全豪オープンジュニアの覇者で、元ジュニア世界1位。
坂本 | 項目 | ブロックス |
291位 | 世界ランク | 141位 |
2006.6.24 | 生年月日 | 2005.4.8 |
19歳 | 年齢 | 20歳 |
193cm | 身長 | 193cm |
80kg | 体重 | 83kg |
右利き | 利き手 | 右利き |
両手打ち | バック | 両手打ち |
2024年全豪Jr | Jrタイトル | 2023年全豪Jr |
2 | CHタイトル | 2 |
0勝1敗 | ツアー戦績 | 1勝8敗 |
11位 | NextGen争い | 5位 |
※ツアー戦績は予選を除く |
7月11日のウィニペグで行われたチャレンジャー75の2回戦で対戦。2-6,5-7で坂本がストレートで敗れている、因縁の相手だ。
グランドスラム初本戦懸け
2回戦はチリと日本の期待を背負う若手同士の戦い。3回戦はベルギーの新星として注目されている選手と戦う可能性がある。
勢いのある、19歳坂本、20歳ブロックス、21歳ブセ。
ブセは過去グランドスラム予選に3度挑戦し、いずれも1回戦で敗退。ブロックスも過去4度のグランドスラム挑戦はいずれも予選敗退。
3者の誰もが、グランドスラム初本戦を懸けた、さらに熱い熱い戦いが待っている。
グランドスラムで予選とはいえ1つ勝つことの難しさ、尊さを学んだ坂本は、確実に大きな勢いを手に入れた。