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伊藤あおいの試合予定と結果は
データで深堀り

園部八奏 元女王ケニンを追い詰めた

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「大金星」まであと一歩だった。

世界ランク263位の園部八奏(17歳)が10月23日、東レ パン パシフィック オープン テニストーナメント2回戦に臨み、世界ランク25位で第10シードのソフィア・ケニン(26歳=アメリカ)と互角の勝負を演じた。

試合時間2時間18分の激闘の末、6-3,1-6,6-7(2)のスコアで敗れたが、

2020年全豪オープン覇者で、昨年の今大会準優勝者を最後の最後まで苦しめた。

試合後ケニンは「本当にタフな相手だった。本当に素晴らしい今台頭してきている選手なのでベストを尽くさなければならなかった。若い素晴らしい選手、本当に苦しめられました」と、園部の実力を確かに認めた。

できることなら勝利が欲しかった。

だが、園部はガムシャラに戦い、ただ善戦したのとは違う。

本当に最後まで本気で勝利を狙いにいった。

試合後の笑顔のない表情に、満足感など微塵もなかった。

悔しそうにファンから求められたサインに応じる姿は、逆に頼もしさを感じさせ、

ファイナルタイブレークのスコア以上に今後の期待を大きくしてくれた。

試合後の会見では「勝ちたかったの一言です」と涙まで流したという。

タイブレークは百戦錬磨のケニンの術中にハマった。

勝負どころで、得意の思い切り良いフォアに力みも出た。

その差は確かにあった。

だが、ファイナル6-6まで、もつれたのは、決してケニンの調子が悪かった訳ではない。

まぎれもなく園部のスケールの大きいテニスが、グランドスラム覇者を追い込んだ。

第1セットのファーストサービスイン時の園部のポイント獲得率は73.3%。セカンドサービス時のポイント獲得率は66.2%。

ケニンの66.7%、46.2%を大きく上回った。

第2セット以降、ファーストの確率を上げたケニンはさすがだったが、

最終セットは園部も譲らず。

ファーストサーブの確率こそ水を開けられたが、ファーストイン時のポイント獲得率、セカンド時のポイント獲得率ともほぼ互角。

いかに園部の思い切りの良いセカンドサーブと3、5球目攻撃がケニンを苦しめたかが分かる。

第1S両者のサービスイン確率とポイント獲得率
園部第1Sケニン
48.4%
(15/31)
1st
確率
58.1%
(18/31)
73.3%
(11/15)
1st
P獲得率
66.7%
(12/18)
62.5%
(10/16)
2nd
P獲得率
46.2%
(6/13)
第2S両者のサービスイン確率とポイント獲得率
園部第2Sケニン
47.6%
(10/21)
1st
確率
87.5%
(14/16)
50%
(5/10)
1st
P獲得率
78.6%
(11/14)
27.3%
(3/11)
2nd
P獲得率
46.2%
(6/13)
第3S両者のサービスイン確率とポイント獲得率
園部第3Sケニン
59.1%
(26/44)
1st
確率
73.2%
(30/41)
69.2%
(18/26)
1st
P獲得率
70%
(21/30)
55.6%
(10/18)
2nd
P獲得率
63.6%
(7/11)

最も象徴的だったゲームがファイナルセット第2ゲーム。

園部は第2セット第2ゲームから7ゲーム連続で失う劣勢でのサービスゲームだったが、

本来の強気の姿勢を崩さなかった。

30-40でのセカンドサーブ。5球目を回り込んでダウンザラインへフォアウィナー。

さらに相手アドバンテージでのセカンドサーブ。

ワイドギリギリに落ちる、振り切ったサーブで相手のリターンミスを誘う。

最後は自らのアドバンテージ。またもセカンドサーブから5球目をフォアで逆クロスウィナー。

ここを落とせば完敗という状況、

相手のブレークポイントでも果敢に攻めきれるメンタルには驚かされた。

これこそが園部のテニス。ファーストもセカンドも振り切り、フォアも振り切る。どんな時でも迷いはない。

続く第4ゲームのサービスゲームも見事だった。

相手アドバンテージでファーストは、本来より40キロ遅い133キロワイドサーブ。

見事にタイミングを外し3球目のフォアでクロスウィナー。

普通の17歳なら170キロ台の最速サーブで押してくる場面であえて緩いサーブを使う巧妙さ。

その後2ポイントのファーストは175キロのワイド、175キロのセンターの真っ向勝負。

ほんのわずかに外れ、いずれもセカンドになったが、この緩急に戸惑ったケニンは、珍しく連続でリターンミスした。

4-5の第10ゲーム、相手マッチポイント30-40では175キロファーストから3球目フォアストレートウィナー。2度目のマッチポイント相手アドバンテージでは175キロセンターへエース。

こちらは腕を振り切るのが難しいシチュエーションを、正当法でしのぎきった。

ダブルフォルトも7本したが、気にする素振りは一切ない。代わりにエースも7本。

ダブルファーストと思えるサーブも何度も試みた。

こんなに思い切りよく、ファースト、セカンドともに攻めきれる17歳が、かつて日本女子に、いただろうか。

身長174センチのサウスポー。

まったく変わらぬ姿で淡々と打ち込む姿は、目指している高みのすごさ、スケールの大きさを感じずにはいられない。

マッチ通算のウィナー数は38本。ケニンの19本の2倍を数えた。

第1セットではトータル34ポイントのうち10本のフォアウィナー。

最終セットではトータル41ポイントのうち12本のフォアウィナー。

マッチ通算のアンフォーストエラーはウィナー数38本より少ない35本。

どれも園部のポテンシャルの高さを示す数字にほかならない。

第1S 両者のウィナー数と内容
園部内容ケニン
4サービスエース
10フォアウィナー5
2バックウィナー2
1ネット0
17セット計7
7UE12
第2S 両者のウィナー数と内容
園部内容ケニン
0サービスエース0
2フォアウィナー1
1バックウィナー3
0ネット0
3セット計4
10UE4
第3S 両者のウィナー数と内容
3サービスエース0
12フォアウィナー3
2バックウィナー4
1ネット1
18セット計8
18UE7
マッチ通算 両者のウィナー数と内容
園部内容ケニン
7サービスエース0
24フォアウィナー9
5バックウィナー9
2ネット1
38マッチ通算19
35UE23
※UE=アンフォーストエラー

ワイルドカードを生かしての今大会の2回戦進出で

園部の世界ランクは大幅にキャリアハイを更新する。

次回発表では223位前後に浮上し、9月15日付けでマークした262位を40位ほどステップアップする見込みだ。

この220位前後のラインはグランドスラム1勝を目指す上で大きな一歩となる。

2025年全豪オープンジュニア覇者である園部には、そもそも予選ワイルドカードが付与される可能性が極めて高い。

だが、あくまで慣例的なもので明文化されているものではない。

2025年の全豪オープン予選にエントリーできた最下位ランク者は225位の岡村恭香。

2024年のカットオフは224位のドミニカ・サルコバ(チェコ)だった。(いずれもワイルドカードなどを除く)

自力ランキングで予選インできる位置に入るに越したことはない。

何より全仏、ウィンブルドン、全米、以降のグランドスラム出場へのチャンスが大きく広がっていく。

日本選手の上から数えて大坂なおみ(28歳)、内島萌夏(24歳)、伊藤あおい(21歳)、日比野菜緒(30歳)、柴原瑛菜(27歳)に次ぐ6番目。

18歳以下に限定した世界ランクで見ると、5番目に位置する見込みだ。

日本のトップに、年齢別に見れば世界トップに躍り出た17歳のシャイニングスターの今後に、ますます目が離せなくなる。

園部八奏 過去のツアー全成績
回戦対戦相手Rスコア
2024年2/3 WTA500 アブダビ・オープン
予選1回戦⚫️B・ペラ894-6,0-6
2025年2/1‐5 WTA500 アブダビ・オープン
予選1回戦⚪️H・バティスト936-3,6-1
予選2回戦⚪️C・ブクサ986-3,6-3
1回戦⚪️ユアン・ユエ556-4,6-3
2回戦⚫️O・ジャバー333-6,3-6
2025年3/17 WTA1000 マイアミ・オープン
1回戦⚫️I・カメリア・ベグ693-6,1-6
2025年10/13 WTA250 木下ジャパン・オープン
1回戦⚫️大坂なおみ160-6,4-6
2025年10/21 WTA500 東レ パン パシフィック・オープン
1回戦⚪️N・バルトゥンコワ1326-4,6-3
2回戦⚫️S・ケニン256-3,1-6,6-7(2)
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テニスうどん
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駆け出しブロガー
スポーツ紙勤務30年で退職した元野球記者、データコラムニスト
大学時代は関西1部リーグ庭球部所属もボーラー、ベンチコーチの方が多かった
数字でテニスを深堀り!時々ただの観戦記。わかりやすくテニスの魅力が伝わればと
ATP、WTAの公式データを参考にさせていただいています。
WOWOW、U-NEXT、ATP、WTAの配信も利用させていただいています。
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