小田凱人 ジャパンオープン3連覇


荒井大輔に1ゲームも与えず
生涯ゴールデンスラムを達成した小田凱人が凱旋試合で見事大会3連覇を果たした。
世界1位で大会第1シードの小田凱人(19歳)が9月30日、木下グループジャパンオープン車いす決勝に臨み、第2シードの荒井大輔(37歳)と対戦。
6-0,6-0と1ゲームも与えないダブルベーグルで勝利した。
「予想を超える試合したい」
大会前の宣言通り、勝ち上がり3試合で失ったゲームは1ゲームだけ。
まさに予想をはるかに超える強さ。
絶対王者らしい強烈なサーブ、リターン、巧みかつ力強いショットの数々で
日本のファンを魅了した。
車いすテニスってカッコいい!
感動を呼ぶ優勝スピーチだった。
「足を運んでくれたみなさんありがとうございます」。
平日にも関わらず、たくさんの観衆で埋まったスタンドに感謝を示した後、周囲を見回して、こう問いかけた。
「どうですか? 車いすテニス?」
「マジでオレ、一番カッコいいスポーツだと思うんですけど」
「カッコいいですよね! 車いすテニス!」
傍らで敗れた荒井大輔がにこやかに、その姿を見守った。
小田のプレーに素直に驚いた観衆たち。そして小田の車いすテニスにかける熱い思いを汲み取った人々は、ひときわ大きな拍手で応えていた。
開始から13ポイント連取
荒井と小田が初めて出会ったのは、まだ小田が車いすテニスを始めたばかりの小学生の頃、岐阜のテニスコートだったという。
19歳と37歳。ほぼ倍の年齢が離れた先輩と、あの時の丸刈りの少年が、まさか聖地有明のセンターコートで決勝を戦う日が来ようとは。
スタートから1ポイントも与えず13ポイント連取。
小田も兄貴分相手に当然、遠慮の気持ちもあっただろう。
それでも車いすテニスの「カッコよさ」を示すため、思う存分、コート上で暴れる道を選んだ。
第1セットのファーストイン確率は85%。
第3ゲームから7ゲームまで10連続でファーストを入れた。
ファースト時のポイント獲得率は91%。
まったく攻撃の手を緩めない、凄まじい集中力だった。
各セット両者のトータルポイント | ||
小田凱人 | 荒井大輔 | |
25 | 第1S | 6 |
31 | 第2S | 21 |
56 | マッチ | 27 |
第2セットでは小田のサービスゲーム3度中2度がデュースになるなど、荒井も意地を見せた。
それでも12ゲーム連取でゲームセット。トータルポイントは56対27と小田の圧勝だった。
通算勝利数で荒井抜く
小田の荒井との対戦成績は2021年5月の初対戦から6連勝となった。
車いすテニス界の神様は、またも不思議な縁を感じさせる数字を用意してくれていた。
小田の通算勝利数は243勝(38敗)、
一方の荒井は242勝(145敗)。
くしくも今回の直接対決でキャリア9年の荒井の通算勝利数を上回った。
シーズン勝率.968
小田の今シーズンの勝利数は30勝に到達。
敗戦は、1月25日の全豪オープン決勝でアルフィー・ヒューエット(イギリス)に敗れた1敗だけ。
8カ月間以上負け知らずで23連勝中。
勝率は驚異の.968。
まだフューチャーズやITF3シリーズの出場が多かった2021年の.965を上回った。
今シーズン残す大会は11月のマスターズ(パリ)のみと見られ、シーズン通して最高勝率を残す可能性も極めて高くなった。
小田凱人の年度別勝敗 | |||
年 | 勝 | 敗 | 勝率 |
2025 | 30 | 1 | .968 |
2024 | 45 | 3 | .938 |
2023 | 51 | 7 | .879 |
2022 | 27 | 13 | .675 |
2021 | 55 | 2 | .965 |
2020 | 4 | 1 | .800 |
2019 | 27 | 6 | .818 |
2018 | 4 | 5 | .444 |
日本国内で敗れたのも2022年まだ楽天ジャパンオープン時代の今大会決勝で国枝慎吾に3-6,6-2,6-7(3)で敗れたのが最後。
丸3年間、国内大会、負け知らずで27連勝。
どの数字を見ても、恐ろしいまでの強さだ。
もっと強くなります!
再び小田は観衆に訴えかけた。
「まだまだキャリアは始まったばかり。もっと強くなります。そこは絶対信じてください!」。
もはや自身のプレーにとどまらない。
車いすテニス界全体のレベルを引き上げ、もっともっと発展させていく。
荒井に育ててもらい、自分が大きく羽ばたいたように。
次代のプレーヤーが自分を追いかけてくるまで頂点に君臨し続けるという、
強い強い意志を感じさせる、決意表明だった。