フレンド衝撃チャレンジャー1勝


世界210位にダブルベーグル
日本のフレンド・ジェイ ディラン ハラ(21歳=Jay Dylan Friend)が、
チャレンジャーで衝撃の初勝利をあげた。
8月26日、チャレンジャー75のラファ・ナダル・オープン1回戦に出場。
世界ランク210位のフェデリコ・チナ(18歳=イタリア)を
6-0,6-0のダブルベーグルで料理した。
▶「atpchallengertour」インスタグラムより
試合時間54分 「55」対「28」
全米オープン予選に出場したチナは、予選2回戦で敗退したばかり。
アメリカ、スペインの時差、長い移動もあり、本調子ではなかったかもしれない。
だが、それを差し引いても、フレンドの
トータルポイント「55」対「28」、試合時間54分の圧倒劇は見事としか言いようがない。
0-6,0-5とされたチナは、最後のサービスゲームで明らかに意地を見せようとした。
40-15からフレンドは粘りデュースに持ち込む。
チナは3度アドバンテージを手にしてキープに懸命な姿を見せた。
一方のフレンドも譲らない。
最終的に、紛れもない真っ向勝負に勝ったのは、やはりフレンドだった。
鮮やかなフォアハンド逆クロスのウィナー。バックのダウン・ザ・ラインのウィナー。そしてラストポイントはフォアのダウン・ザ・ラインのウィナー。
力強いショットを次々と決めた。
このゲーム13ポイントを争う攻防となったが、フレンドが、ここぞの地力で完全に上回った。
▶「ATP Challenger Tour」Xより
日本の将来を担う逸材
フレンドは日本ではあまり知られていないかもしれないが、
確実に将来を担う選手になる可能性を秘めた逸材だ。
現在、世界ランクは874位。キャリアハイは2024年12月30日付の831位。
チャレンジャー大会は過去2度出場して、いずれも初戦敗退。
7月、ドイツのハーゲンでは世界150位のヤニック・ハンフマン(ドイツ)に5-7,2-6。
8月、ギリシャのヘルソニソスでは世界191位のモエズ・エシャルギ(チュニジア)に6-4,2-6,4-6。
ドロー運に恵まれず強者と当たり、接戦を落とすという連敗だった。
今回「3度目の正直」で、その秘めたポテンシャルの大きさを完全解放した。
文武両道 頭脳明晰
2022年秋からアリゾナ大学に進み、1年目からチームの主力として大活躍し、現在大学4年生。
2025年6月には、同大学男子テニス史上初の「CSC Academic All-America® First Team」に選出された。
これは学業とスポーツ両方に秀でた人物にしか与えられない、全米の大学アスリートから選出される非常に名誉ある賞だ。品行方正も重要視される。
過去に同賞は、NBAで5度の優勝を誇るスーパースター、ティム・ダンカンやNFL史上最高のQBの1人、ペイトン・マニングが受賞している。
GPA(成績)は4.00満点中、3.30以上が必要とされるが、
経済学専攻のフレンドのGPAは、何と3.80!
文武両道、頭脳明晰とは、まさにこのことだ。
7月には、国際大学スポーツ連盟(FISU)が主催する「FISUワールドユニバーシティゲームズ」(クレーコート)に日本代表として出場。
男子シングルスで金メダル。これは日本では1967年以来の快挙だった。
吉本菜月(筑波大)と組んだミックスダブルス、そして男子団体と3冠を達成した。
▶teamjapanjocインスタグラムより
母は有名ジュニア選手
父はニュージーランド人、母は日本人というルーツを持つフレンド。
実は母(旧姓・原広子さん)は日本ジュニアの超トップ選手だった。
1988、89年と全豪、全米、ウィンブルドンジュニアにも出場。
大学時代の1992年はインカレ準優勝。
1988年の日本ジュニアランキングを見ると、1位伊達公子、2位沢松奈生子、3位遠藤愛、そして4位原広子。
世界トップを走り抜けた選手たちと、互角の戦いを演じていた、知る人ぞ知る有名人。
学業、テニスの両方での類まれなる努力に加え、その血を引くフレンドの「将来性」は、まさに計り知れない。
スペイン新星と対決も
チャレンジャー初勝利に続く次戦の相手は、まだ決まっていないが、
第2シードの世界138位、マーティン・ランドルース(19歳=スペイン)の可能性がある。
2024年10月、オルビアのチャレンジャーで優勝。18歳以下で同タイトルを獲得したスペイン5人目の選手。ネクストジェンATPファイナルズのレースでも9位に付けており、同国の期待を集める新星だ。
フレンドのプロでの実力を図るうえでも、実に楽しみな一戦になる。
全米大学から選出された賞でも分かるように、品行方正。
常に冷静沈着にプレーできるメンタルも魅力。
大学で多くを学んだ分、アメリカ以外の知名度は今一つのフレンドだが、次戦も勝利すれば、
一躍、日本国内はおろか、チャレンジャー内でも話題になることは間違いない。
フレンド・ジェイ ディラン ハラ(Jay Dylan Friend)
2003年12月22日、東京生まれ。21歳。
2022年秋からアリゾナ大学に進み、現在同大学の4年生でキャプテン。2024ー2025年シーズンはシングルスチーム最多の34勝。
2025年FISUワールドユニバーシティゲームズ(ドイツ/ライン・ルール) 日本代表。
大学での活躍により、2025~2026年のATP Next Gen Acceleratorプログラムへの出場権を獲得済み。大学に在籍したまま、プロのチャレンジャーに優先的に出場できる資格で、その分、ランキングアップもスムーズに運びそうだ。
父はニュージーランド出身、元テニス選手の母は日本出身。家族は世界各地に暮らしており、直近ではシンガポール、現在はバルセロナに住んでいる。
右利き、両手バック。破壊力あるサーブ、安定感と威力を兼ね備えたフォアが武器。
▶「Jay Friend-Arizona Tennis Harvard Postmatch」YouTubeより
大学での勝利インタビューを受ける 「プレッシャーを感じるのは大好き」