伊藤あおいウィンブルドン1勝へ
相手は昨年ガウフを破った世界66位
世界ランク228位、日本女子テニス界期待の22歳、伊藤あおいがグランドスラム初勝利を懸けて、2026年のウィンブルドン1回戦に臨む。
6月27日、組み合わせドローが発表され、
相手は世界ランク66位のダヤナ・ヤストレムスカ(26歳=ウクライナ)に決まった。
両者は初の顔合わせ。
ウィンブルドンで2年連続ベスト32
ヤストレムスカは、ウィンブルドンでは2024、2025年と2年連続してベスト32に進んでおり、2019年にはベスト16入り。なかなかの芝巧者だ。
特に2025年は1回戦で
当時世界2位で第2シードだったココ・ガウフ(22歳=アメリカ)を7-6(3),6-1で撃破した。
今年は5月のWTA125のパルマ・レディース・オープン(クレ-)で優勝。
その直後の全仏オープンでは1回戦では、伊藤が昨年金星を挙げた相手、ジャスミン・ パオリーニ (30歳=イタリア)に5-7,3-6で敗れている。
▶「ウィンブルドン公式」動画より
強烈なサーブからフォアバックも強打。積極的なネットプレーも。世界2位相手にアップセットできるだけの実力の持ち主
グランドスラム初勝利へ
間違いなく強敵だが、
伊藤にとっては、ウィンブルドンはもちろん、グランドスラム1勝を目指す戦いになる。
過去のグランドスラム予選出場は2025年シーズンの全豪、全仏オープン、全米オープンの3回。全豪、全仏は1回戦で敗れた。
全米では初勝利後、予選決勝まで進んだが、連戦の疲労、腰部の痛みもあり、当時世界147位のJ・ティエン(インドネシア)に完敗した。
のちに患部は腰椎疲労骨折と判明し、半年間の戦線離脱を強いられた。
| 伊藤あおい 全グランドスラム成績 | ||||
| 2025年1月7日 全豪オープン | ||||
| 回戦 | 対戦相手 | R | スコア | |
| 予選1回戦 | ⚫️ | 石井さやか | 221 | 3-6,4-6 |
| 2025年5月20日 全仏オープン | ||||
| 予選1回戦 | ⚫️ | P・マルチンコ | 209 | 5-7,2-6 |
| 2025年6月30日 ウィンブルドン | ||||
| 1回戦 | ⚫️ | K・ラヒモワ | 80 | 7-5,3-6,2-6 |
| 2025年8月19日、21、22日 全米オープン | ||||
| 予選1回戦 | ⚪️ | A・フリードサム | 197 | 6-4,5-7,6-3 |
| 予選2回戦 | ⚪️ | G・マリスタニー | 192 | 6-0,1-6,6-1 |
| 予選3回戦 | ⚫️ | J・ティエン | 147 | 1-6,2-6 |
伊藤にとって唯一のグランドスラム本戦出場は、昨年2025年のウィンブルドン。
待機からの繰り上がりで本戦インしたが、1回戦では当時世界ランク80位のK・ラヒモワ(ロシア)に敗れた。第1セットを取ったものの、フルセットの末、敗れた。
好調もケガで途絶えた昨年の全米予選決勝、グランドスラム初勝利に最も近づいた昨年のウィンブルドン1回戦。
今回はその2つの悔しさを晴らす戦いにもなる。

芝前哨戦4大会で万全の準備
今年は芝コート対応のため、十分な準備期間を確保してきた。
故障明け前の順位が適応されるスペシャルランキングを使用。早々とメーンドローからの参戦を決め、夢の舞台でのグランドスラム初勝利に照準を合わせてきた。
5月末からWTA125バーミンガム予選に、6月に入ってからはWTA500のHSBC選手権、同じくWTA500のベルリン・オープン、さらにはバート ホンブルク・オープン(すべて予選から)と、4大会に及ぶ前哨戦に出場した。

バーミンガムこそ1勝を挙げたが、以降はグレードの高いWTA500の大会とあって、すべて予選1回戦負け。3連敗を喫した。
激突した相手はタフな相手ばかり。
- 世界58位アントニア・ルジック(23歳=クロアチア)
- 世界50位ペトラ・マルチンコ(20歳=クロアチア)
- 世界60位ダイアン・パリー(23歳=フランス)
昨年のウィンブルドンを合わせて、通算の芝成績は1勝5敗。
数字だけ見れば苦手のように見える。
しかし、試合勘を磨き、コートサーフェスに慣れるという面で見れば、
本戦ストレートイン確実な50位前後の強豪と、3連戦できた経験は、大きかった。
ヤストレムスカ相手でも、怯むことなく戦えるはずだ。
実は昨年と同ペース
3月に腰痛から復帰後、伊藤の2026年通算成績は8勝14敗。
勝率.364と、決して良い数字ではない。
だが、明らかに実戦不足だった3月の当初3大会を除いて考えてみる。
4月からウィンブルドン開催までに区切ると6勝10敗、勝率.375。
実は2025年のウィンブルドン前16試合を見ると、6勝10敗、勝率.375。
まったく同じ勝率が並ぶ。
| 伊藤あおい 2025年と2026年比較 | ||
| 2026年 | 2025年 | |
| 8勝14敗 | 通算勝敗 | 27勝21敗 |
| .364 | 通算勝率 | .563 |
| 6勝10敗 | WB前16試合 | 6勝10敗 |
| .375 | 同勝率 | .375 |
| ※WB=ウィンブルドン | ||
2026年は8試合をWTA125以上のレベルで戦い2勝6敗。
2025年も9試合を同レベルで戦い3勝6敗と、こちらも大差ない。
勝ててない印象が強いが、それほど悲観する必要はない。
ここ一番に強い
特に昨年のウィンブルドンは自身ワーストの6連敗という状況で本番に臨んだ。
だが、初体験の芝で、勝利まであと一歩というところまでこぎつけた。
今年の全仏オープンでも、クレーは「大の苦手」と公言しながら、きっちり予選1回戦を勝利。
大会前は、とても良い状態ではなかったが、ここぞの試合で「急変」するのが伊藤らしい。
やはり大舞台に強い。
この集中力、メンタルタフネスぶりには期待していい。

格上相手にどこまで
しかし、昨年と唯一、大きく違うデータをあげるとすれば、自分より格上のランキング選手と対戦した際の戦績だ。
- 2025年=10勝7敗 .588
- 2026年=1勝7敗 .125
昨年は自分よりランキングの高い選手に何と勝ち越している。
「負けるわけがない」と高をくくった対戦相手のイライラを誘い、まんまと1セットを奪取。最後の最後で、相手にプレッシャーをかけ、うまく勝ち切るという「沼」戦法が効いていた。
だが、今年はランキング上位との戦いに苦戦。
自身232位で出場した全仏オープン予選1回戦で、179位のジェリーヌ・ヴァンドロム(18歳=ベルギー)に1度勝っただけだ。
伊藤の「ウザさ」が世界に知れ渡った今、相手の「自滅」はそう簡単に期待できない。
芝のフットワークがカギ
昨年、ウィンブルドンで初となる芝大会の印象を聞かれた伊藤は、こう話している。
「スライスとかは打ちやすかったです。(自分が打つ)ショットとの相性は良いと思いますが、思っていた以上に滑らず、つまずく印象です」
「動きづらいことがマイナスに傾く気がして、どれだけできるかな、という感じです」
伊藤本人が感じている通り、芝で曲がるフォアスライス、滑るスライスを使い分ける伊藤のスタイルは間違いなく効果的だ。
だが、一方で相手も無理をせず、2~3ショットで決めにかかってきたところ、4~5ショットを使って確実に追い込む戦い方に変わってきている。
あの美しい緑とのコントラスト
予選と本戦は別会場で行われているため、伊藤が立つのは、1年間にわたって厳しく管理されてきた、あの美しく真新しいグラスコート。
30度を超える猛暑は懸念材料だが、荒れたセカンドウィークに比べれば、間違いなく動きやすい。
4大会の前哨戦でつかんだ足運びの感覚が、どこまで研ぎ澄まされているか。
左右に振られる強打に、しっかりつまずくことなく対応できれば、
たとえ世界66位が相手とはいえ、勝機を見いだせるはずだ。
昨年より賞金23%増
今年のウィンブルドンの賞金総額は、史上最高額となる6,420万ポンド(約128億円)。
1回戦に出場するだけで伊藤は1600万円が確定。
為替の影響も加わって、昨年1300万円より23%も高い額になっている。
| ウィンブルドン 2026シングルス賞金 | ||
| 優勝 | 360万㍀ | 7億2000万円 |
| 準優勝 | 180万㍀ | 3億6000万円 |
| ベスト4 | 90万㍀ | 1億8000万円 |
| ベスト8 | 48万㍀ | 9600万円 |
| 4回戦 | 30万㍀ | 6000万円 |
| 3回戦 | 18万5000㍀ | 3700万円 |
| 2回戦 | 12万6000㍀ | 2520万円 |
| 1回戦 | 8万㍀ | 1600万円 |
| 予選3R | 5万㍀ | 1000万円 |
| 予選2R | 3万2000㍀ | 640万円 |
| 予選1R | 2万㍀ | 400万円 |
1勝すれば、それが約2520万円となる。
早々と隠居生活を送るため「今後に不自由のないお金を稼ぎたい」と笑う伊藤のモチベーションは、さぞ上がっていることだろう。
強敵が待つ2回戦
初勝利を上げれば、2回戦は第27シードの世界28位、アナスタシア・ポタポワ(25歳=オーストリア)か、世界48位ジェシカ・ボウザス・マネイロ(23歳=スペイン)の勝者と激突する。
マネイロと対戦となれば、昨年8月、WTA1000のナショナル・バンク・オープンで6-4,5-7,3-6の激戦の末、敗れた相手との再戦となる。
ここでも世界50位以内の選手が相手。再び100位以内に入れるレベルに戻れるか、大事な試金石になる。
ウィンブルドンで勢いをつけて得意のハードコートシーンズンへ。
伊藤にとって大きな挑戦が始まる。








